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「うちの子が遊べると思わなかった・・・」難病児と家族を“遊び”で支援。きっかけはコロナ禍に届いたSOS

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難病児とその家族が週2回、30分ほどオンラインで一緒に遊ぶ会「オンラインおもちゃの広場」というものがあります。新型コロナウイルス感染症の拡大の影響でステイホームとなった2020年5月、難病児の家族からのSOSの声をきっかけにスタートし、現在では登録者190名、開催は250回を超えました。十数年にわたって難病児支援の活動に携わる、認定NPO法人芸術と遊び創造協会の石井今日子さんと、おもちゃコンサルタントの齋藤暁子さん、髙橋朝子さんに、「オンラインおもちゃの広場」の活動について聞きました。

おもちゃと遊びを通じた難病児支援

NPO法人芸術と遊び創造協会が日本財団と共同開発し、2020年度全国90カ所の施設や病院へ配布した「あそびのむし」おもちゃセット。

身体障害や知的障害がある子どもや、人工呼吸器や経管栄養など医療的なケアを必要とする子どもなど、難病児の家族の生活は、昼夜問わずの医療機器の管理や、たんの吸引などのケアが必要です。ケアをしている親側の睡眠時間が十分に取れないことや、医療的ケアで忙しく、わが子と遊ぶことさえもハードルの高いことがあります。

そんな親子の遊びを支援するため、石井さんは十数年にわたってさまざまな活動を続けてきました。石井さんが副館長をつとめていた東京おもちゃ美術館を貸し切りにして、難病児や家族が安心しておもちゃ遊びができる「スマイルデー」の開催や、難病児も遊びやすい約50種類のおもちゃセット「あそびのむし」を全国の小児医療施設や病院へ配布する事業、ボランティアのおもちゃコンサルタントが、おもちゃをもって全国の小児病棟へ遊びを届けるキャラバン隊「ホスピタル・トイ・キャラバン」などの活動です。

「『スマイルデー』に参加した難病児の保護者からは、『うちの子がこんなふうに遊べるなんて知らなかった』『自分の子どもがおもちゃに興味を持って遊びたいという意欲があるとわかった』と感想をもらいました。難病児のご家族は、『医療ケアで忙しく、遊ぶ時間が取れない』『子どもとの遊び方もわからない』というようなケースが多かったようです。
難病児も遊べるおもちゃがあると、それをきっかけに家族とのコミュニケーションも広がります。子どもとの会話、家族同士の会話が増えることにもつながります。遊びはだれにでも開かれたものですから、おもちゃを通して、子どもとのコミュニケーションを楽しんでほしいと、この活動を続けてきました」(石井さん)

コロナ禍で難病児の家族から届いたSOSをきっかけに

しかし、2020年の新型コロナウイルス感染症の影響で、「スマイルデー」のリアル開催も、キャラバン隊の病院訪問も、リアルな活動はすべて休止になってしまいました。緊急事態宣言が発令され、ステイホームとなった期間、病児の家族から石井さんにSOSの声が届きました。

「支援学校も放課後デイサービスも休みになり、先生やお友だちに会えないし、感染が怖くて外にも出られないというお話や、生活のリズムが崩れ、24時間家族だけで過ごしてストレスがたまっている、といった声を耳にしました。

ずっと家族がケアをするには疲労やストレスもたまりますし、仕事に行くことができなくなり困っている保護者もいました。それで、ひとまずオンラインでお話をしてみることから始めてみました」(石井さん)

オンラインで保護者の人たちの話を聞いてみると、学校や医療施設に行くことができなくなり、子どもの生活リズムが乱れているとわかりました。そこで、石井さんはおもちゃコンサルタントたちに声をかけ、オンラインで病児と家族も一緒に集まる場所を作ろうと提案しました。

「2020年5月、オンラインミーティングツールを利用した『オンラインおもちゃの広場』の開催を開始しました。5月中は平日の毎日、10時と13時の1日2回開催。6月になり週2日の10時から1回の開催に。登録した参加者が決まった時間にオンライン上に集まって顔を見て話をし、工作や手遊びをする時間を設けました。

ステイホーム期間が終わった現在も、まだ新型コロナの感染状況が収束していない中、今も感染が心配で外出を控えている、そもそも外出が難しい、という難病児を対象に、週に2回30分程度の遊びのセッションとして継続しています。現在までで開催は250回を超え、登録者数は現在190名となりました」(石井さん)

難病児との遊びをもっと身近に感じてほしい

Tシャツで忍者に変身しているおもちゃコンサルタントたち。

おもちゃコンサルタントが司会進行をする「オンラインおもちゃの広場」では、ティッシュや紙コップなど身近な素材を使ったおもちゃの工作や、画面の前で簡単な運動を行いながらの運動会、ブレイクアウトルームを利用して、参加者が双方向性のコミュニケーションを取れる時間を作るなど、だれもが楽しめるようにプログラムが工夫されています。

「登録者にキットを配布し、オンラインで一緒にパペットを工作することもあります。また、以前おもちゃ美術館を貸し切って行っていた『スマイルデー』は、現在はオンライン開催に。おもちゃコンサルタントが野山へ遠足に出かける様子を中継でつなぎ、自宅にいながら自然観察や星空観察を行うプログラムは、とても好評です」(石井さん)

石井さんは活動を通して、「難病児とその家族に、遊びをもっと身近なものに感じてほしい」と言います。

「画面の向こうの難病児がオンラインで私たちと一緒に遊ぶ時間を過ごすことで、そのそばにいるきょうだい児や、ご両親、おじいちゃんおばあちゃんなどの家族にも、病児と一緒に遊べる方法があると知ってほしいです。遊びは、子どもの成長にどんなメリットがあるか、などといった理屈を抜きにして、単純に楽しいことですよね。私たちは病児と家族と楽しい時間を共有したいし、どの子も一緒に楽しめることがあると伝えていきたいです。
また、参加できるときに参加して、都合が悪くなったら退出してもいいよ、という気軽さも大事にしています。『今日は都合がいいから参加してみよう』と負担にならないよう、ふらりと公園に遊びに行くような、日常の一部であってほしいと思っています」(石井さん)

支援するおもちゃコンサルタントたち「自分たちが楽しみをもらっている」

紙コップなどの身近な素材を使って工作を楽しみます。

「オンラインおもちゃの広場」を企画・進行するのは、ほとんどがボランティアのおもちゃコンサルタントたち。15名ほどのメンバーが、各回数名ずつのローテーションを組んでいます。オンライン開催を重ねながら、毎回の振り返りの時間を大切にしているそうです。活動で大事にしているのは「双方向のコミュニケーション」です。

「リアルで会えないからこそ、子どもたちの反応や表情の変化をキャッチするようにしています。意思表示は言葉だけではありません。言葉を発しないから理解していないわけでもありません。子どもたちの『なんだろう?』や『伝えたい!』という気持ちをキャッチして、どういうコミュニケーションを取れば一緒にワクワクする気持ちを共有できるか、常に振り返りを重ねてブラッシュアップしています」(おもちゃコンサルタント・髙橋さん)

開始当初はコンサルタントたちが企画したプログラムを楽しむ内容が多かったですが、最近では、参加者から近況やおすすめの絵本などを紹介してもらい、参加者が発信する企画のほうが満足度が高いということに気がついたそうです。

「最近のできごとを質問すると『七五三の写真を見てください』『運動会でこんな景品をもらったんです』と、ママたちが話をしてくれます。今度、広場でこんな話をしようかな、と楽しみに考えてくれているのがうれしいです。また、病児と一緒に参加しているきょうだい児が発言してくれることも。参加するママ・パパや子どもたちといろんな話をすることが、私にとっても幸せな時間です。“支援”というよりは、子どもたちと楽しい時間を過ごすために集まっています」(おもちゃコンサルタント・齋藤さん)

オンラインでのつながりが、子どもとのかかわりのヒントにも

ドレミの歌を参加者みんなでアレンジして遊ぶプログラムも。

オンラインでさまざまな難病児が集まることで、スタッフや参加者同士の学びになることも多いと石井さんは言います。

「聴覚障害のお子さんに通訳をつけてほしいとリクエストをもらい、手話でのコミュニケーションも始めました。『オンラインおもちゃの広場』には、さまざまな配慮が必要な子どもたちも集まっていますが、みんな取り残さず、みんなで楽しむ方法を、参加者も交えながらみんなで考えていく場でもあります。『視力が弱いので、もっとはっきりとした色を使ってください』『うれしいときには手でこんなサインをしています』と話し合うことがお互いの学びにもなります」(齋藤さん)

意思表示が難しい難病児の場合、オンラインでコミュニケーションを取るために、ひらがなが表になったコミュニケーションボードを指して伝えることもあるそうです。

「ある参加者がコミュニケーションボードを使っているのを見て、ほかの参加者が自分の子どもとのコミュニケーションにも使ってみよう、と新たな子どもとのやりとりの手段を発見することもあります。楽しく遊ぶ時間であるとともに、参加者さん同士の交流の場となっています」(髙橋さん)

お話/石井今日子さん、齋藤暁子さん、髙橋朝子さん 監修/石井今日子さん  写真提供/特定非営利法人芸術と遊び創造協会 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

「コロナ禍で子どもたちの遊びが制限されていますが、健康な子どもたちはこれから成長する中でこの2年間を取り戻すチャンスがあります。けれど病気の子どもたちにとって、この2年間の実体験がなくなり、成長の貴重な機会を失ってしまったことは本当に残念なこと。オンラインでも私たちにできることを模索し続けたいです」と石井さんは言います。

オンラインおもちゃの広場

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

石井今日子さん(いしい きょうこ)

PROFILE
NPO法人芸術と遊び創造協会運営 福岡おもちゃ美術館(2022年オープン)館長。保育士・幼稚園教諭の経験を生かし、2008年東京おもちゃ美術館立ち上げ、赤ちゃん木育ひろば運営に携わる。おもちゃを活用した子育て支援事業「おもちゃの広場」「赤ちゃん木育寺子屋」開催。企業のコラボにより無印良品「木育広場」。日本財団との共同事業 難病児向けおもちゃセット「あそびのむし」など。Eテレ「まいにちスクスク」出演。

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