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「今を後悔しないように生きたい」小児がんの治療の影響で生活にさまざまな制約。修学旅行に行きたくて、学校に直談判したことも 【小児神経芽腫体験談】

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中学校の卒業式のときの一乃さん。病気とつき合いながらも、素敵な3年間を過ごせたそうです。

5才のとき小児がんのひとつである神経芽腫を発症し、一度は寛解したものの10才のときに再発した浦尻一乃さん(21才)。2度目の寛解後、学校生活では多くの制約に直面したと言います。でも、悔いのない日々を送るために、さまざまな行動を起こしました。その根本にはいつも「できることをやるのではなく、やりたいことをあきらめない」という気持ちがあったのだとか。3回シリーズの2回目は、中学生・高校生のころの病気とのつき合い方と学校生活について聞きました。

クラスメートと同じバスで帰れるはずだったのに、直前に「リスクがある」と…

17才のとき、短期留学のためにオーストラリアへ向かうところ。

神経芽腫の治療の影響で、腎臓や腸などに障害が残り、トイレの回数が多いという一乃さん。長距離移動が伴う校外学習に参加するときは、クラスメートが乗る大型バスなどに同乗できず、母親の車で送迎してもらっていました。

「小学校のころは、往復は別行動でも校外学習に参加できることだけでうれしかったんです。でも、学年が上がるにつれ、校外学習の内容より、バスの中でみんなと過ごす時間のほうが楽しいんじゃないかな、と思い始めたりして。そういう時間を共有できないことを、とても切なく感じたころがありました」(一乃さん)

なんとかみんなと一緒のバスに乗って行動することはできないかと、中学2年ときに行われた2泊3日のスキー教室では、事前に校長先生と話し合ったそうです。

「そのころの私は、午前中はとくに排せつのコントールが難しいことがわかっていました。なので、朝、学校を出発する行きのバスに乗るのは無理だと考え、行きは母の車で行動することに決めていました。でも、午後以降は飲食する量を減らせば、ある程度排せつをコントロールできていたんです。そのことを校長先生に直接説明し、理解してもらえ、スキー教室の帰りは、校長先生が同乗するバスで、みんなと一緒に帰ってこられることになったんです。やっとみんなと同じ時間を過ごすことができると、本当にうれしくて、スキー教室を楽しみにしていました」(一乃さん)

クラスメートと同じバスに乗って移動できる日を心待ちにしていた一乃さん。しかしスキー教室当日、思わぬ展開に…。

「校長先生に急な用事ができてしまい、代わりに副校長先生が参加されたのですが、私のことは引き継ぎをされていなかったらしく、『急にトイレに行きたくなったときに対応できない。リスクがあるので乗せられない』と言われてしまったんです。『持病がない子だって急におなかが痛くなってトイレに行きたくなることはあるはず。それと変わりません』と説得したのですが、持病があることと急に具合が悪くなることは話が違うと。結局、帰路も母の車で移動するしかありませんでした。クラスの子が乗るバスに並走し、バスの中の友だちたちに手を振りながら帰りました。

このときに限ったことではなく、学校には障害を持っていることを理解してほしいとお願いしてきました。『一人だけ特別扱いはできない』と言われてしまうこともあり、悔しい思いをしたことは多々ありました。行事ごと、部活動などのたびに理解と配慮を得るのは大変でしたが、あきらめず一つ一つを積み重ねていった結果、学校との信頼関係が築け、配慮もしてもらって、学校生活を送ることができました」(一乃さん)

中3の春休みにひざを手術。中学の卒業旅行は車椅子でディズニーランドへ

中学の最後の思い出作りにディズニーランドへ。お友だちにサポートしてもらいながらたっぷり楽しみました。

小学校のころから、骨の発育に異常がでる晩期合併症が現れていましたが、中学校時代は、ひざの痛みがピークに達したときでもあったそうです。

「小学生のときから右ひざに痛みを感じていたのですが、徐々に強くなってきて、歩くのも支障が出てきました。なので、高校に入学する前の中学3年生の春休みに、ひざにボルトを入れる手術をすることになりました。春休みは中学最後の思い出に、中学の卒業旅行として、仲よし4人で東京ディズニーランドに行く計画を立てていて、すごく楽しみだったけれど、学校が休みになるこの時期が、手術をするのにベストタイミングであることも理解していました。退院後はしばらく車椅子の生活になるので、私はディズニーランドには行けないな…とあきらめていました」(一乃さん)

ところが、友だちが「車椅子で行けばいいことだよ。押すから大丈夫!」と言ってくれたのだとか。

「友だちに助けてもらいながら松葉杖を使って電車に乗り、現地で車椅子をレンタルしました。私はディズニーランドのコースター系が大好きなので、着いた途端、ワクワクしっぱなしでした。車椅子だと通常とは違うルートから通してもらえるんですよね。普段は見られないバックヤードを見ることができ、友だちと一緒に大はしゃぎ。もちろん親がいない、友だち同士だけというのも楽しさが増します。中学最後にとても素敵な思い出を作ることができました」(一乃さん)

高校の修学旅行はどうしてもみんなとバスに乗りたくて、トイレ付きバスを探す

高校の修学旅行のワンシーン。クラスメートと一緒に過ごす時間を、思い切り堪能しました。

高校に進学した一乃さんに、高校の一大イベント、沖縄への修学旅行がやってきます。このときも現地沖縄での移動のバスが大きなネックとなりました。一乃さんにはトイレが頻回という問題があるため、移動は1人だけタクシーを利用する ようにと、学校から言われてしまったのです。

「バスにトイレが付いていれば、みんなと一緒に行動できるんです。トイレ付きのバスにしてくれないか、と学校に相談をしてみたのですが、『探したけれど見つからなかった』とのこと。でも私はあれほど観光客が多い県に、トイレ付きのバスがないわけないと思いました。
高校最後の一大イベントはどうしてもみんなと一緒に行動したくて、当時始めていたがんサバイバーとしてのツイッターで、そのことを発信しました。すると、たくさんの人が情報を寄せてくれて、トイレ付きのバスを持っている沖縄のバス会社を、いくつか知ることができました。それらのバス会社に片っ端から連絡していったら、1社だけ私たちの修学旅行のスケジュールで、トイレ付きバスがあいている会社があったんです。学校に報告し、学校、旅行会社、バス会社で相談してもらうことになりました。

学校の対応が決まるまで、期待と不安がないまぜになった複雑な気持ちを抱えて過ごしましたが、私のクラスだけトイレ付きのバスを使えることが決定。念願だったみんなとのバス移動ができる!と、テンションが上がりました」(一乃さん)

こうして、沖縄の観光名所や歴史を学ぶ施設を回るだけでなく、移動も友だちと一緒という一乃さんの「やりたいこと」がかないます。

「修学旅行中は班行動をするので、クラスの全員がそろうのはバスの中だけなんです。みんなでお菓子を食べたり、たわいもない話で大笑いしたり。もちろん学びも大切だけれど、これこそ修学旅行の、私たち高校生の醍醐味だなとつくづく感じました。
気軽にトイレに行けない状況のときは、飲食の量を少なくしてトイレの回数を減らすように努力するのですが、この修学旅行中はその心配は無用!昼食のソーキそばの店では、トイレの心配をすることなく、おなかがパンパンになるまで食べちゃいました」(一乃さん)

「やりたいことをあきらめない」ために行動を続けてきた一乃さん。その考えの根本にあるのは、どのようなことなのでしょうか。

「再発したころから、もしものことがあっても後悔しないようにしたいと思いながら生きてきました。小学生のときは中学生になれないかもしれないと思っていたし、中学生のときは高校生になれないかもしれないと思っていたんです。亡くなった知り合いもいますから、死を身近に感じています。
だから常に、『今やりたいと望むことを実現するにはどうしたらいいか』を考えながら生きています。そのために必要なら社会にも発言するし、自ら行動もしてきました。これからもそうやって生きていくと思います」(一乃さん)

監修/富澤大輔先生

お話・写真提供/浦尻一乃さん 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

「今このとき、やりたいことをあきらめたくない」と考え、中学校・高校時代を過ごしてきた一乃さん。高校時代には持病があっても受け入れてくれるホームステイ先を探し当て、1人でオーストラリアへの短期語学留学も経験したそうです。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

神経芽腫の会 公式HP

※2月15日は「国際小児がんデー」です。小児がん治療支援チャリティーライブ「LIVE EMPOWER CHILDREN」が行われます。

LIVE EMPOWER CHILDREN  公式HP

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