「育休」は休みではない!実際にやってみて、初めて妻の言葉が心に入ってくる感じがした【つるの剛士】
2022年に幼稚園教諭と保育士資格を取得したことをSNSで報告し、話題となったつるの剛士さん(47)。芸能生活が30年に近くなり、二男三女のパパでもあるつるのさんに、子どもたちやママとのかかわり方や、長男が生まれたころと今との時代の変化などについて、話を聞きました。
勉強するパパのまわりで子どもたちも・・・
――短大に入学して勉強を頑張るパパの姿を見て、家族の反応はどうでしたか?
つるのさん(以下敬称略) 短大の試験前や講義の課題などをリビングで勉強していると、子どもたちが集まってきて自然と宿題をやったりしていることがありました。パパも頑張ってるから自分も頑張ろう、と思ってくれたようで、それはいい影響になったのかもしれません。親が1人の人間として人生を楽しんで生きると、子どもはその姿を見て育つんだな、と50才目前にして気づきました。
――二男三女を育てるつるのさん、子育ての方針はありますか?
つるの 方針というよりは、それぞれの子に人と人として向き合いたいと思っています。子どもたちが輝いていることや、熱中していることはしっかり見てあげて、いずれその芽を伸ばして社会に送り出したいな、と。
やっぱり、子どもは親の想像通りには育たないと思うんです。僕の父は忙しい銀行マンだったんですが、息子が芸能人になるなんて想像もしなかったと思います。でも僕が自分で芸能の道に進む夢を見つけたときには、自分で責任を持ってやれ、と言ってくれました。だから僕も、自分の子どもたちにはやりたいことを見つけてもらって、自分で引いたレールで汽車を走らせようとしているときにはちょっと後ろから背中を押してあげられるくらいの立ち位置でいたいと思っています。
5人は個性がバラバラ。それぞれに人として向き合いたい
――5人の子どもたちそれぞれの個性を教えてください。長男と二女はカナダに留学中だとか・・・
つるの 5人の子どもたちはそれぞれ全然個性が違いますね。長男は僕と同じで勉強が苦手で、受験して中学に入学したもののなかなかなじめなかったんです。そこで、彼は自然の中で過ごすことが好きだったので、「海外で自然が多いところに留学するのもいいんじゃない?」と提案したら「行きたい」と。オーストラリアやニュージーランド、マレーシアなどの学校を調べた結果、カナダの公立高校に1年生から通うことに。長男は留学当初は全然英語が話せなかったんですが、今はカナダで大学生をしています。
二女は幼稚園から英語教育を受けていて英語が話せたこともあり、長男の姿を見て「私も行く」と言って中学からカナダで勉強しています。長男も二女も海外志向が強かったかもしれません。長女は日本が好きで、楽しく学校生活を送っているようです。三女は勉強が好きで中学受験をしたら特待生で入学しました。僕は三女に勉強しろ、って1度も言ったことがないんですけど、なんだかずっと勉強していましたね。そんな感じでみんな個性が全然違います。
6歳の二男はもう孫みたいな感じで、かわいくてかわいくてしょうがない。成長を止めたいな、って思っちゃうくらいかわいいです(笑)。
兄・姉たち4人が小さいころは仕事も忙しくて思うようにかかわれなかった反省があったぶん、二男が生まれたときにはていねいにかかわるようにしました。6年ぶりの子育てだけど、親としての経験値もあるし心の余裕もあるし、ただただかわいいです。
ちなみに5人の子どもたちの名前の頭の文字は「あ・い・う・え・お」です。結婚当初から子どもは5人ほしいと思っていて、名前は「あいうえお」からにしようと考えていました。
育休をとってよかったのは、妻の気持ちが理解できたこと
――つるのさんは4番目の三女と5番目の二男が誕生した際に、育休を取得したそうです。育休中に家事や育児に携わって感じたことや、家族との関係の変化はありましたか?
つるの 初めの1〜2週間は弁当を作ったり、幼稚園の送迎だったり、すごい楽しかったんですよ。でもしばらくして、毎日同じ時間に同じことを繰り返してだれにも評価されずに1日が過ぎていく、そのことがすごいストレスに感じたんです。仕事を持っていると、目標を持って達成したら、評価もあって、対価もいただけて満足感があるけど、専業ママたちにはそれがない。初めて専業ママたちの大変さに気づきました。
インスタにお弁当の写真をアップして「いいね!」をもらって評価されるとうれしいんだな、とか、子どもとだけじゃなくて大人と話したいし、人が作った料理が食べたいからランチに行っておしゃべりするんだな、とか。全然知らないことばかりでした。そんな経験をして妻の気持ちが理解できるようになったんです。家族の中に1人理解者ができたことで、妻が相談してくれるようになり、すごく家庭が円満になりました。
――育休を取って、いろんな気づきがあったんですね。
つるの 育休って決して休みじゃないです。これから育休を取る人には、赤ちゃんのお世話だけじゃなく、家事もすべて経験してほしいと思います。食器棚にしまう皿の位置が1枚ずれただけで引き出しが閉まらなくなるとか、上の子が学校だよりを出し忘れたから弁当不要の日なのに弁当作っちゃったとか、卵を買い忘れたときのショックとか・・・そういうこまかい家事・育児の状況がわかってくると、妻にかける「おつかれさま」「ありがとう」の質が変わると思うんです。
以前なら、妻の話を聞いているつもりで右から左の耳に抜けていたような感じだったのですが、今は右耳から入ってきた言葉は心に入ってくる感じです。家庭がうまくいくにはやっぱり夫婦が理解し合うことが必要だと思います。僕は家庭の基本は夫婦だと思っていて妻がいちばん大切なので、育休をとって妻の気持ちが理解できるようになったことはとってもよかったです。
少し前に東京都が「育休」の愛称を募集して話題になり、「育業」と発表されましたが、僕も応募したんです。僕は「家庭訓練」を提案しました。育児休業は決して休みじゃないし、上司にも「家庭訓練に行かせてください!」なら申請しやすいかな、と思ったんです。残念ながら採用されませんでしたが(笑)。
20年前と比べて、育児環境をとりまく社会の変化は?
――つるのさんはもうすぐ芸能生活30年を迎えるそうですが、『たまひよ』も今年で創刊30年となります。昔と今を比べて、育児環境の変化をどう感じますか?
つるの 長男が生まれたときに、僕はよく長男を連れて出かけていましたが、当時はデパートなどの男性トイレにベビーチェアがありませんでした。僕が知っている中では、新宿の老舗デパート1カ所にだけ、男性も利用できる授乳室とおむつ替えスペースがありました。でも利用してるパパは1人もいないし、男性が入れるような雰囲気でもなかった気がします。
2018年に二男の育休をとったときには、抱っこひも姿のパパや保育園の送り迎えをしているパパも多いし、男性トイレにおむつ交換台もあったり、ベビー休憩室ではパパも見られるようになって、20年弱で社会が変わったなー!と感じました。長男の育休をとった当時「イクメン」と呼ばれた僕ですが、正直「イクメン」という言葉は好きじゃなかったんです。でも社会の変化を見ると、「イクメン」も少しは貢献できたのかな、と感じますね。
――これからさらに男性の育児参加が進むためにどんなことが必要だと思いますか?
つるの 「育児」というと、赤ちゃんのお世話や家事などノウハウ的なところに目が行きがちなんですけど、それよりもまずは夫婦がお互いに理解し合うことが大切だと思います。夫婦が人と人として尊重し合って、協力し合っていれば、その姿を見て子どもは育ってくれるはずです。人と人としてのかかわりは、子どもに対しても同じこと。子どもから学ぶことはすごく多いし、僕は子どもたちに親にさせてもらっていると感じます。「教育」は大人が子どもに教えるのではなく、ともに育つ「共育」であり、響き合いながら育む「響育」、そんな気持ちでいたいと思っています。
お話/つるの剛士さん 撮影/なべ 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
パートナーとの関係を第一に、子どもそれぞれの個性を大切に育てているつるのさん。「今後も幼児教育の学びを深め、子どもが育つ社会に何か貢献できるような活動をしていきたい」と話してくれました。
※『たまひよ』は、2023年10月に創刊30周年を迎えます。その第1弾企画として〈30年前に『たまひよ』に登場した赤ちゃん・ママ&パパを探しています〉キャンペーンがスタート! 1992年・1993年・1994年ごろ生まれで、『たまごクラブ』『ひよこクラブ』に登場してくれた赤ちゃんとその家族を募集しています。
つるの剛士さん(つるのたけし)
PROFILE
1975年福岡県出身。藤沢市在住。「ウルトラマンダイナ」(TBS系)でアスカ隊員役を演じ、2008年に「クイズ!ヘキサゴンII」(フジテレビ系)で「羞恥心」を結成、リーダーとして活躍。2022年春、短大を卒業し幼稚園教諭免許を取得。同年12月保育士免許取得。二男三女のパパ。
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