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小中学生の8.8%が発達障害!? 発達障害を疑う前に知っておきたいこと【小児脳科学者】

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居間で疲れた母親と泣いている赤ちゃん
●写真はイメージです
takasuu/gettyimages

近年、発達障害といわれる子どもたちが急増しています。2022年の文部科学省の調査で発達障害の可能性があり、特別な支援が必要な小中学生は通常の学級に8.8%いることがわかりました。11人に1人程度在籍している推計となります。10年前に行われた前回の調査では、6.5%でした。
新刊『「発達障害」と間違われる子どもたち』が話題の、小児脳科学者 成田奈緒子先生に、発達障害といわれる子どもたちが増えた背景や、「うちの子、もしかして発達障害?」と疑ったときにしたほうがいいことを聞きました。

2006年から15年で、発達障害といわれる子は約13.7倍に

文部科学省の「令和2年度 通級による指導実施状況調査」によると、通常学級に在籍したまま必要に応じて別教室などで授業を受ける「通級指導」を利用している発達障害の小中高生は2006年の時点では約7000人でしたが、2019年には7万2000人を超え、2020年には9万6000人を超えています。2006年から15年で約13.7倍に増えています。

――発達障害といわれる子どもたちが、ここまで急激に増えた理由を教えてください。

成田先生(以下敬称略) 理由の一つ は、2005年に発達障害者支援法が施行されたことです。発達障害者支援法は、児童を含む発達障害のある人への適切な支援を推進するための法律です。

この法律ができて「発達障害」という言葉が教育現場に急速に広まり、子どもやママ・パパたちにも浸透しました。

――発達障害という言葉が広まったことで、なぜ発達障害といわれる子どもたちが急激に増えたのでしょうか。

成田 先生や保護者が、ちょっとまわりと違う子がいると「あの子、発達障害では?」という目で見るようになったことが大きいと思います。

――発達障害と確定するには、医師による診断が必要ですよね。

成田 もちろん医師による診断が必要です。診断は、ママ・パパに子どもが生まれたときからの成育歴をていねいに聞き取り、米国精神医学会作成の「DSM-5」という診断の手引書に照らし合わせたりして行われます。
しかし園や学校の先生から、たびたび子どもの問題行動や苦手なこと、できないことなどの指摘を受けたりしているうちに、「うちの子、発達障害なのでは?」と思い悩んだり、自己判断でグレーゾーンと決めてしまうママ・パパもいます。医師の診断を受けていないケースでも「発達障害」という言葉を使ったりすることが増えている印象があります。

「発達障害もどき」の3つのタイプとは?

成田先生は、発達障害といわれる子どもたちのすべてが発達障害とは思えないと言います。

――成田先生が代表を務める、子育て支援事業「子育て科学アクシス」にも、発達障害のことで相談に来る親子が増えているのでしょうか。

成田 発達障害のことで相談に来る親子は増えています。しかし発達障害だといわれたという子どもを見ていて、すべての子が発達障害とは思えません。
でも相談に来るママ(パパ)たちは、連日、学校の先生たちからさまざまな問題行動や、できないこと、苦手なことなどを指摘されて、落ち込んでいます。かなり疲弊しているママ(パパ)もいます。

――発達障害と言われる子どもたちが、すべて発達障害とは思えないとは、どういうことでしょうか。

成田 正式な医学用語ではないのですが「発達障害もどき(※)」の子が、かなりいるのではないかと私は考えています。
私が考えている「発達障害もどき」というものは、3つに分けられると思っています。

一つ目は、「診断はつけられないが、発達障害の症候を見せている」ものです。
発達障害を診断するには、生まれたときからの成育歴をていねいに聞き、それを診断基準に照らし合わせる必要がありますが、成育歴にはまったく問題がないのに、発達障害のような行動が見られるのが特徴です。比較的、幼児に多いです。

二つ目は「医師以外からプレ診断をされている」ものです。
本来、発達障害と診断できるのは、先にお伝えしたように医師だけですが、園や学校の先生などから「発達障害では?」とプレ診断を受けているケースです。比較的、年長児や小学校低学年の子に多いと思います。

三つ目は「発達障害の診断を受けたものの、時間の経過とともに症候が薄くなる」ものです。医師から発達障害の診断を受けたものの、しだいに症候が目立たなくなっていくケースです 。

――これらの三つのタイプに該当する子は、発達障害ではないのでしょうか。

成田 私が「発達障害もどき」と呼んでいるこの三つのタイプに該当する子は、生活改善を行うと発達障害のような行動が軽減していくことが多々あるのです。

先日も子育て支援事業「子育て科学アクシス」に、5歳の男の子をもつママが相談に来ました。「園での集団生活が苦手で、ちょっとしたことでかんしゃくを起こして、友だちをたたいたりして困っているんです。かんしゃくを起こすと、下の子もたたいたりもします。夜もなかなか寝ないし、夜中にかんしゃくを起こすと泣き叫んだりもします。うちの子、発達障害でしょうか?」と言うのです。

そのためママに「まずは早起きの習慣をつけてください。早起きを実践してみましょう」とアドバイスをしました。早く起きれば、夜、早く眠るようになり、子どもの様子が変わるのではないかと思ったためです。
すると数日で効果が出てきました。ママが「早起きさせたら、夜、早く眠るようになりました。しっかり眠るようになったら、気持ちも落ち着いて、かんしゃくが減りました。下の子やお友だちにイライラして当たる回数も減りました」と言うのです。
またママ自身も、子どもの問題行動が減ったので、明るく穏やかになっていました。

――ママ・パパ自身がイライラしていると、子どもの気になる言動がさらに増えることもあるのでしょうか。

成田 子どもに衝動性があって目が離せない、順番を守ったりできずにお友だちとのトラブルが多い、ちょっとしたことでかんしゃくを起こすなど、子どもに気になる様子があると、ママ・パパは過干渉になり、「みんなと仲よく遊びなさい!」「危ないから、〇〇しちゃダメよ!」など、つい手や口を出すことが多くなります。また、わが子から目が離せないので、次から次へと子どもの気になる部分が目についてしまいます。そうすると悪循環を招いて「うちの子、やっぱり発達障害なのかも・・・」と深刻に考えてしまいがちです。

またママ・パパが過干渉だったり、イライラしていると、子どもも過敏に反応しやすくなります。親子ともに、いい結果に結びつきません。

※「発達障害もどき」は、診療を通して出会った子どもたちの症候を診る中で、成田先生が作った言葉です。そうした診断名がある訳ではありません。

睡眠時間がたりず、3食しっかり食べられていないために、発達障害のような行動をする子も

「うちの子、もしかして発達障害?」と思ったときは、専門医に診てもらう前に生活改善をしてみることがおすすめだそう。

――先ほど紹介された例では、早起き・早寝をすることで、発達障害のような行動が減ったようですが、睡眠改善のポイントを教えてください。

成田 まずは早起きの習慣をつけてください。早起きをすれば、早く眠るようになります。乳幼児期は、十分な睡眠が脳の土台を作ります。
1日の睡眠時間の目安は、次のとおりです。

1歳6カ月 13時間30分
3歳 12時間
5歳 11時間

また3食しっかり食べる習慣をつけることも大切です。「こんなシンプルなことで、子どもの気になる行動っておさまるの?」と思ったママ・パパもいるかもしれませんが、十分な睡眠時間の確保と食事をしっかりと食べられていないために、発達障害のような症候が見られる子は多いのです。

お話・監修/成田奈緒子

取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

成田先生は「わが子の発達障害を疑ったときは、専門医に相談する前に、まずは早起き・早寝、3食しっかり食べるといった生活改善をして、少し様子を見てください」と言います。生活改善をするだけで、ガラリと様子が変わる子もいるそうです。

●記事の内容は2023年4月の情報であり、現在と異なる場合があります。

■『「発達障害」と間違われる子どもたち』

子どもたちの間で増えている診断はつかないのに、発達障害のような症候を見せる「発達障害もどき」から抜け出す方法を紹介。成田奈緒子著/1155円(青春出版社)

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