どうしてる?子どもの性教育。自分の体を大切にすることを教えるために【絵本作家・はまのゆか】
『13歳のハローワーク』(村上龍 著/幻冬舎)のさし絵などで知られる絵本作家、はまのゆかさん(44)は、9歳と3歳の子のママです。5年前に上の子の保育園で「いのちのおはなし会」があったことがきっかけで、子どもへの性教育や性犯罪被害について考えるようになり、2冊の絵本を作りました。ママとして子どもに普段どんなふうに性教育をしているか、はまのさんに聞きました。
4歳児にもわかりやすい言葉で性知識が伝えられると知った
――はまのさんが子どもへの性教育について考え始めたきっかけは、子どもの保育園で「いのちのおはなし会」というイベントに参加したことだそうですね。
はまのさん(以下敬称略) 今から5年ほど前、上の子が4歳のときに「いのちのおはなし会」に参加しました。杏林大学の佐々木裕子教授(看護学)が2002年から学生と続けるボランティア活動です。4〜5歳児の園児と保護者、保育士を対象に、パネルシアターやエプロンシアターで赤ちゃんが生まれるしくみやプライベートゾーンのことを紹介する内容でした。お話のほかにも、胎児の大きさと重さを妊娠月数ごとに再現した人形を子どもたちに抱っこさせ、「おなかの中で赤ちゃんはこんなふうに成長していくんだよ」と説明してくれました。子どもたちは、大切な命を預かった、という感じでそーっと大切に胎児の人形を抱っこしていました。
30分くらいの時間で性の話や、命の大切さについてわかりやすく話してくれ、子どもたちも集中してきちんとお話を聞いていたのが印象的でした。
――おはなし会に参加して、はまのさんはどんな感想を持ちましたか?
はまの それまで私は「プライベートゾーン(水着で隠れる場所と口)」のことを知りませんでした。子どもが生まれてから、いずれ大きくなったら第二次性徴のことなどをきちんと教えないとな、とぼんやり考えてはいましたが、どのタイミングでどんなふうに教えたらいいのかはわかりませんでした。
だから「いのちのおはなし会」に参加して、性教育についてこんなふうに小さい子どもたちにもわかりやすい言葉で教えることができるんだなと、本当に感動したんです。
年齢についても、4歳になる前では少しお話が難しく、5歳以降になると恥ずかしがってしまったり、間違った知識が入ってしまっていたりすることがあるから、4歳くらいの年齢で正しい性知識を学ぶのはちょうどいいようです。
――お話会のあと、上の子とはどんなやりとりがありましたか?
はまの プライベートゾーンは大事にするところだから、「人にむやみに見せない場所だよね」「おふろから出たらすぐ下着を着て守ろうね」と話すようになりました。また、夫にも「こんな話があったよ」とおはなし会の内容を共有しました。
――下の子には、いつごろからどんなふうにプライベートゾーンのことを教えていますか?
はまの 下の子は最近やっと会話ができるようになってきたんですが、すでに「プライベートゾーン」という単語を口にしています。生まれたときから、私と上の子がプライベートゾーンについて話すのを聞いていたからでしょう。
おふろのときに子どもとプライベートゾーンについて話したり、性器の洗い方を教えたりしています。下の子は、私と一緒におふろに入っているときに、私の胸をわざといたずらっぽく触ろうとするときがあるので「ここはプライベートゾーンだから触っちゃだめだよ」と伝えています。
また、すっぽんぽんで脱衣所から部屋に行こうとするときには、ひきとめて「大事な体だからパンツをはいてから行こうね」と言葉にして伝えるようにしています。
自分の体も人の体も大切だと知ってほしい
――はまのさんは性について伝える絵本『すくすくいのち』『さわってもいい?』の2冊を作られています。
はまの 「いのちのおはなし会」に参加したことをきっかけに、このような内容を絵本にできたらいいなと考えるようになりました。そう思っている間に2人目を妊娠し、妊娠中に『すくすくいのち』という絵本を描き始めました。『すくすくいのち』では、赤ちゃんの命の始まりから生まれるまでを描いていて、命の大切さが伝わったらいいなと考えています。
もう1冊の『さわってもいい?』は、自分の体を大切にすることについて描いています。初めは「プライベートゾーンは大事にするところだから人に見せたり触らせたりしない」というお話を考えていたんです。でも、人によって触られて嫌な気持ちになる場所って全然違いますよね。考えているうちに、プライベートゾーンのことだけ伝えていればいいのかな、と疑問を持つようになりました。
そこで「ほっぺ」を触られることを中心に物語を描き、プライベートゾーンはもちろん大事だけれど、人の体は全部大事なんだよと伝えたいと思いました。そして、人それぞれどこまで触っていいかだめかは違うから、ちゃんと「いい?」って聞こうね、というメッセージも込めて『さわってもいい?』というタイトルにしました。小さいころから正しい知識があると、自分の体を大切にし、守れるんじゃないかと思います。
――親子のスキンシップはどうしていますか?
はまの 子どもに「ほっぺつんつんしてもいい?」「ハグしていいかな?」って聞いたりして「いいよ」と言われたらつんつんしたり、ぎゅっとしたりしています。
夫がもともと子どもの気持ちをとっても大切に考える人で、上の子がまだ生後1カ月くらいのころに「ミルクがいい?白湯(さゆ)がいい?」って、真面目な顔で聞いていたんです。言葉もまだ発しない赤ちゃんに聞いてもわかんないよ、と側から見ていましたが、小さいことでも子どもの意見をちゃんと聞く姿勢がすごいな、と思いました。子どもの落書きのメモも、勝手に捨てずにちゃんと「いる、いらない?」って聞いてから保存したり捨てたりしています。
そうやって子どもの気持ちを一つずつ聞くことで、子どもも自分の意見は尊重されるべきものだということがわかるし、大切にされていると伝わると思います。親子の間のスキンシップ一つにしても、「いい?」と聞いて子どもの同意を得るやりとりをすることが、人権教育や性教育につながるんじゃないかなと思っています。
人に「イヤ」と伝えること、人に「イヤ」なことをしないこと
――体を大事にするためには、相手に「イヤ」と伝えることも必要ですが、子どもにどう教えていますか?
はまの 「人がイヤって思うことはやめようね」と教えています。上の子は私の二の腕をモミモミ触るのが大好きなんです。でも私はここを触られるのが嫌なので「やめて」と伝えて「自分が楽しくても人がイヤだって思うことはしちゃいけないよ」と教えています。
4歳くらいからそういうやりとりをしていたからか、上の子は自分の気持ちを相手に伝えられるタイプです。小児科に行ったときなどにも、「私は粉薬が苦手なので錠剤でお願いします」とはっきり言えるようになりました。
――きょうだいで相手が嫌がることをしてけんかになったときにはどうしていますか?
はまの 下の子は上の子にちょっかいを出すことがよくあります。上の子の足の上に自分の足をわざと乗せたりして、上の子が「やめて」と言っても、なかなかやめずにどんどんヒートアップしてけんかするようなことがよくあります。そういうときには、下の子には「『やめて』って言われたらやめようね」と伝え、上の子には「相手がやめてくれなかったらその場から逃げてみたらどうかな」と提案したりします。
「やめて」と相手に伝えるとき、大人でもどうしたらいいか難しいときがありますよね。「やめて」と伝えた相手が急に怒ったらどうしよう、と不安になることもあると思います。でも、自分の気持ちを相手に言葉で伝えることはすごく大切なこと。親子で話し合いながら、これからも考えたいと思います。
お話・イラスト/はまのゆかさん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
「小さいときから正しい性知識があれば子どもが自分の体を大切にでき、性犯罪を犯すような人になることも防げるのではないかと思う」とはまのさん。性教育の内容でも、わかりやすい言葉と絵で描かれた絵本の読み聞せをすれば、正しい知識を親子で楽しく身につけられるのではないでしょうか。
●記事の内容は2023年4月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
はまのゆかさん
PROFILE
絵本作家・イラストレーター。1979年生まれ。大阪府出身・東京在住 京都精華大学卒業。二児の母。大学在学中より村上龍の著書イラストを多数担当し、「13歳のハローワーク」(村上龍 著/幻冬舎)は、ミリオンセラーとなる。イラストを担当した作品「ママが10にん!?」(天野慶・文・はまのゆか・絵・ほるぷ出版)は、第10回ようちえん絵本大賞を受賞。最新作の絵本は「さわってもいい?」(はまのゆか さく/めくるむ)
『すくすくいのち』
小さなたまごから赤ちゃんになって生まれるまでの280日。おなかの中の赤ちゃんの成長の様子と、ママの体の変化を4歳くらいからの子どもにもわかるように描かれています。絵本の赤ちゃんは、ほぼ原寸で描かれています。杏林大学保健学部教授 佐々木裕子監修。はまのゆか 作/1760 円(めくるむ)