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「子どものケアに費やす時間は21~24時間がトップ」。付き添い入院の過酷な実態が浮き彫りに。初の大規模調査の結果を公表【調査報告】 

更新

アジアの下痢病の子供の患者、病院のベッドに横たわっている子供の入院患者。医療疾患のヘルスケアの概念。
●写真はイメージです
Pornpak Khunatorn/gettyimages

NPO法人キープ・ママ・スマイリングは、入院中の子どもを育てるママ・パパが笑顔で子どもと向き合えるように、家族を支援する活動をしています。その考え方と活動の内容は「たまひよONLINE」でも紹介しました。
そのキープ・ママ・スマイリングが、子どもの入院に付き添う家族(とくにママ)の状況についてまとめた「入院中の子どもに付き添う家族の生活実態調査 2022<概要>」を発表しました。調査の内容を紹介します。

子どもが入院すると、泊まり込んで付き添う人は約90%。付き添い者の約97%がママ

上は病院側から受けた、付き添いが必要な理由の結果。「子どもが自分で身の回りのことができないから」が60.3%、「親が一緒にいたほうが子どもが安心するから」が59.9%と多く、ほかには「マンパワー不足で看護師がすべての世話をできない」と説明された人が15.6%、「特殊な機器を装置し継続的な見守りが必要」と言われた人は12.2%いた(n=1694/複数回答)。

調査は、2022年11月25日~12月16日に、インターネットによるWEBアンケートで回答を得ました。対象者は2018年1月~2022年12月に、0~17歳の子どもの入院に付き添っていた人です。
有効回答数は、3643件で、回答者はママが96.6%と圧倒的に多かったとのことです。
全国から回答があり、回答者の子どもが入院していた病院は、583カ所。大学病院(分院を含む)が42.6%、子ども病院が17.2%、それ以外の病院が39.5%でした。
また付き添いの形態は、「付き添い入院(病院に泊まり込んで付き添う)」が71.8%、「付き添い入院と面会(自宅、ホテル、ファミリーハウスなどから病院に通って付き添う)の両方」が18.3%、「面会のみ」が9.9%で、泊まり込んで付き添ったことのある人が約90%を占めました。

付き添い入院は、制度上は「任意」です。しかし同調査では、「付き添い入院を病院から要請された」と答えた人は約80%(n=3282)でした。

自身も2人の子どもの付き添い入院の経験があるNPO法人キープ・ママ・スマイリング理事長の光原ゆきさんは、この結果について次のように解説します。

「制度上は任意ですが、『付き添うことは病院の決まり、原則』と要請されていた人も多くいました。子どもの心の安定のためにも親の付き添いは必要ですが、子どもが自分で身の回りのことができないから、あるいはマンパワー不足で看護師がすべての世話をできないからと説明されることも多く、親がケアの担い手として期待されていることが推測されます」(光原さん)

世話やケアに費やした1日あたりの時間は21~24時間がトップ。医療的ケアを担うママも多数

上は付き添い中に親が行った世話やケアの内容。見守り、排泄ケア、食事介助など多岐にわたるが、本来は看護要員が行うべきケアも含まれている(n=3643/複数回答)。

同調査の子どもの年齢は、1歳未満が34.2%、1~2歳未満は17.8%と、0~2歳未満が約半数を占めています(n=3646)。
ママ自身も「そばにいてあげたい」「授乳が必要だから離れられない」などの思いもあることでしょう。

しかし、付き添いの状況は過酷です。
親が世話やケアに費やした1日あたりの時間を聞くと、「21~24時間」が25.5%でトップ。次いで「15~18時間未満」12.7%、「12~15時間未満」が11.7%の順。1日9時間以上子どもの世話やケアをする人が70%、12時間以上は61%にのぼりました。

「ママたちが付き添い中に行った世話やケアの中には、本来は看護師や准看護師、看護補助者などの看護要員が対応することだと決められている清潔、排泄、入浴、移動の介助などが含まれています。
また、気管切開後のケアや胃ろうのケア、体位交換、浣腸、点眼、服薬介助などの医療的ケアをママたちが担っている例も見られました。
入院中の看護に係る規定では『看護要員による看護を代替または看護要員の看護力を補充するようなことがあってはならない』とされているにもかかわらず、『労力提供型の付き添い』になっている現状がこの調査で明らかになりました」(光原さん)

また、付き添っているママたちからは、次のような声も聞かれました。

●寝不足の状態や消灯後の暗い中で服薬をセットしなければならず、間違えて薬を飲ませてしまった。
●薬の管理から服薬まで親が担い、看護師がチェックする。過去数回、飲ませた薬の種類にもれがあったが責任の所在があいまいで、親が自責の念にかられた。
●カテーテルや点滴をしている状態でシャワーなどの介助は、家族にはハードルが高いと思う。

「薬の誤飲は、治療効果に影響するだけでなく、事故原因になり得る重大な問題です。この背景には医療が高度化する中、慢性的な看護師不足の問題があり、医療者や病院の努力だけでは解決しがたい状況があります」(光原さん)

子どもの長期入院で仕事を辞めた人は約9%。二重生活による経済的負担も

上は、付き添い生活の中で節約したこと。約70%の人が飲食費を削り、ケアに追われ食べる時間がとれないこともあるものの、1日1~2食で済ますという人も。面会の回数自体を減らした人もいた(n=2605/複数回答)。

子どもの入院は長期におよぶことがあります。慢性的な寝不足などの過酷な付き添い入院によって、親自身が体調を崩した人は約半数でした。
また経済的な問題も重くのしかかってきていると言います。

付き添い者の出費の目安としては、食費などの生活費が1週間で3500円~2万1000円。
ホテルやファミリーハウスに泊まって付き添っている場合は、1週間の宿泊費と生活費が3万5000円~7万円ほどかかるようです。

「子どもの入院に付き添うと、その家庭は二重生活を強いられます。付き添いには食費、入浴料、簡易ベッドレンタル料、コインランドリー代などの生活費がかかります。またホテルやファミリーハウスに泊まって付き添っている場合は、宿泊費もかかります。こうした出費が退院するまで続きます。そのため付き添い中に経済的な不安を感じた人は約70%もいました」(光原さん)

また働いている人は、有給休暇をとったりして付き添いをしていますが、一方で「入院してから仕事を辞めた」という人が8.7%いました(n=3643)。

「『入院したときは介護休暇をとったけれど、たりずに仕事を辞めた』という人もいます。また『パートのため休んだ分の給料がなく大変だった』『有給休暇を消化して、欠勤扱い(無給)になった』という人もいました」(光原さん)


「付き添い入院の現状を初めて知った」というママ・パパもいるかもしれませんが、子どもの入院は、緊急入院が約60%(n=3643)。ある日突然、付き添いが始まるケースが半数以上です。今回の結果は、ひとごとではありません。

NPO法人キープ・ママ・スマイリングは、2023年6月1日、こども家庭庁・厚生労働省の連名宛てに、この調査結果を添えて要望書「入院時の付き添い環境の改善に向けた小児患者・家族からの要望」を提出しました。
その翌日には小倉こども政策担当大臣から『病気の子どもや家族が安心して入院生活を送ることのできる環境整備は重要な課題だ』という考えが示され、ようやく付き添い環境改善に向けての一歩を踏み出されました。
光原さんは「この課題は親の大変さの視点から語られがちですが、『親に付き添ってもらうことは子どもの権利』だということを忘れてはならないと思います。「こどもをまんなか」に医療者・病院、私たちのような支援団体、そして企業や行政も力を合わせて社会全体で取り組んで行く必要があると考えています」と話します。

協力/NPO法人キープ・ママ・スマイリング 取材・文/麻生珠恵 たまひよONLINE編集部

私たち「たまひよ世代」にも大きくかかわってくる課題だけに、これからの動きにも注目していきたいと思います。

●記事の内容は2023年6月の情報であり、現在と異なる場合があります。

NPO法人キープ・ママ・スマイリング (momsmile.jp)

入院中の子どもに付き添う家族の生活実態調査 2022<概要>

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