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「人前で弱音や涙を見せず、一見は元気な母親に見えたと思う」進行性疾患・ムコ多糖症の子を育てる母の本音と新たな挑戦

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非常勤で訪問看護の言語聴覚士として働く傍ら、小児専門のオンライン相談サービス「ことばの相談室 Hopal(ホパール)」を運営する佐々木美都樹さん。3歳半の息子・しょうくんは妊娠中に異常が見つかり、生後5カ月で超希少進行性遺伝子疾患「ムコ多糖症7型」と確定診断されました。現在のしょうくんの様子と、「ことばの相談室 Hopal」開業に至った経緯、その思いを聞きしました。

特集「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

※ムコ多糖症7型の「7」は、正式にはローマ数字での表記になります。

成長を喜ぶ気持ちと同時に生じる、進行性疾患の不安

しょうくんが歩くことができるようになって、本当にうれしかったという美都樹さん。

現在、平日は朝10時頃から15時まで、看護師が在籍する児童発達支援に通うしょうくん。まだ発語はありませんが、絵カードを用いて自分の欲求を伝えたり、歩けるようになったといいます。

「今は、他の子と同じように成長段階でできることが増える時期なので、歩けたときはものすごくうれしかったです。反面、進行性疾患なので、病状が進んでしまえばまた歩けなくなる日がくるんだな……と、純粋に喜べない自分も心の中にはいます。そんな感じで、 1日に何回もネガティブな気持ちになることがあります。けれど、負の感情を表に出せば周囲に気を遣わせてしまうので、努めて前向きに、明るく振る舞うように努めてきました。その結果、反射的に前向きな言葉を言っているので、一見は元気な母親に見えていると思います」(美都樹さん)

妊娠18週で異変を伝えられてから、しょうくんの将来を考えると不安で押しつぶされそうになり、悩みすぎて心身が壊れてしまうのではないかと思うことは何度もあると話す美都樹さん。人前では弱音や涙は見せず、客観的に努めバランスを保とうとすることによって、時折、自分の感情も騙せるようになっていると感じることがあるそうです。

すぐそばで温かい手を握れる奇跡に感謝する日々

美都樹さんにとって、しょうくんとスキンシップは最高に幸せなひととき。

そうした不安を抱える一方で、「落ち込んでいる暇はない」という現実にも真正面から向き合う美都樹さんにとって、しょうくんとのスキンシップは至福の時間です。

「どんな人にも言えることですが、時間は有限であり、誰かと共有できる時間にも限りがあります。ここから先、息子と何年、自宅で一緒に過ごせるのか……そう考えると、息子の温かな手にすぐ触れられる距離にいること、今ここで生きていることがいかに幸せなことか、感謝で胸がいっぱいになります」(美都樹さん)

妊娠中から予後不良や生存率が低いといった現実を突きつけられてきた美都樹さんにとって、しょうくんと過ごす今は奇跡に近いこと。異変を告げられたときから妊娠、出産、治療に至るまで、信頼できる病院や医師にかかり、手を尽くしてもらっていることも恵まれていると感謝します。

些細なことも気軽に相談できる「ことばの相談室 Hopal」を開設

絵本の読み聞かせ講座にも参加する美都樹さん。

しょうくんの病気と向き合う中、SNSで情報収集をするようになった美都樹さんは、有益な情報をたくさん得る一方で、病気や障害をもつ家族の本音に触れる機会も増えたそうです。

「SNSを利用する中で、病気や障害を持つお子さんの治療やリハビリをする悩みを抱えている親御さんが多く、満足されていない投稿を目にすることも。これまで私も言語聴覚士(Speech Therapist:ST)として多くの患者さんと接してきましたが、感謝の言葉は伝えられても、質問や不平不満といったことを直に投げかけられることはそうありませんでした。そう考えたとき、息子の介護に携わる当事者の一人として、些細なことでも気軽に相談できる、すぐに対応してもらえるような専門家がいてくれたら助かるなと考えたのが『ことばの相談室 Hopal』開設のきっかけでした」(美都樹さん)

STの人員不足は深刻化しており、実際に訓練を受けられるまで半年や1年を要したり、訓練を受けたくても月に1回など限りがあるのが現状だそう。また、SNSや周囲からの声を集めると、STに対し、ハードルの高い印象を抱いている方が多かったと言います。

「本来、障害の有無を問わず、言葉に関する悩みや相談を受けるのはSTの仕事の一つです。実際、そういったことはあまり知られていませんし、患者さんと1対1でリハビリをする時間は取れても、患者さんをケアする親御さんやご家族とじっくり話す機会はなかなかありません。私も親の立場を経験してみて、専門家にお任せするだけでなく、親も知識を深め、訓練の内容を理解すれば、自宅でもそれらの要素を取り入れた関わりが子どもと持てるのではないかと考えるようになりました」(美都樹さん)

「言葉」に関する育児の相談者=STといわれる世界を目指して

美都樹さんはご自宅の仕事場で、言葉の相談に応じています。

約1年の準備期間を経て、2023年1月にオンラインでの相談事業「ことばの相談室 Hopal」を開設。0歳~18歳を対象に、言葉やコミュニケーションに関する悩み、発達障害全般に関する悩み、育児や現在通っている療育に関する悩みに特化し、オンラインによる相談を受け付けています。

「どの親御さんにも育児や子どもの成長に関する悩みはあります。その中で、『言葉に関する育児の相談相手にはSTだよね』と言われるような世界になることを願い、活動をはじめました」(美都樹さん)

開設から半年経った現在は、オンラインでの申し込みのほか、もっと多くの人にSTの存在を知ってもらおうと、美都樹さんは子どもが集まる場所での読み聞かせや、イベントなどで講座を開く活動も行っているそうです。

「私も息子のことを専門家に相談するときは、間違いを指摘されたらどうしようと構えてしまうこともありました。けれど、実際は専門家の話を聞くことで気持ちが楽になったり、息子のためになったりすることの方が多かったと感じます。言葉の発達に関しては私が貢献できる分野なので、ご家族と一緒にサポートしながら、1つでも2つでも悩みを解決していけるような場所にしていきたいです」(美都樹さん)

しょうくんの育児を通して見つけた美都樹さんの新たな夢と挑戦は、はじまったばかり。子どもの成長する力を最大限発揮できるよう、親御さんと一緒にサポートできる環境作りを目指していると教えてくれました。

写真提供/佐々木美都樹さん、取材・文/佐藤文子、たまひよONLINE編集部

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年7月の情報で、現在と異なる場合があります。

佐々木美都樹さん

北里大学言語聴覚療法学専攻を首席卒業。言語聴覚士免許(国家資格)及びパーキンソン病治療「LSVT®LOUD」ライセンス所持。マカトン法ワークショップ基礎1、PECS®レベル1ワークショップ修了。成人を対象とした外来リハビリテーション施設・訪問リハビリテーション施設・介護老人保健施設、小児を対象とした児童発達支援事業所に勤務。息子の病気をきっかけに、小児専門のオンライン相談サービス「ことばの相談室 Hopal」を開業する。

「ことばの相談室Hopal」

佐々木さんのInstagramアカウント

しょうくんの成長記録を投稿しているInstagramアカウント

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