8月後半になっても続く猛暑。小児の感染症もまだ続く!?ママ・パパ、子どもたちもつらくならないように予防対策を【小児科医】
8月後半になっても猛暑が続き、体力を消耗して体調を崩す人も出ています。「例年、夏にはあまり感染症がはやらず、小児科の外来はひまな時期なのですが、今年は大違い。外来はてんてこ舞いです。この忙しさはいつまで続くのでしょう?」と小児科医の太田文夫先生は言います。
「小児科医・太田先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」連載の#36です。
まだまだ続く、今夏の感染症
盛夏時期から続いていたヘルパンギーナは収まってきたようですが、新型コロナ感染症は増加傾向に。インフルエンザ、RSウイルス感染症、ヒトメタニューモウイルス感染症の陽性者も毎日見つかっています。
発熱疾患が多く、院内感染を起こさないためのトリアージ、異なる疾患の患者さんとの接触を避けるための配慮(隔離室で待つ、車で待つなど)、診察後の迅速検査の結果が出るまでの待機などにひと手間もふた手間もかかっていて、現在院内滞在時間も長くなっている状況です。
診察の流れをよくするために協力を。 発熱がある場合には受診前に連絡を
発熱の原因は診察をしないとわかりません。新型コロナ感染症の発熱が半日だけという場合もあります。
発熱したことは受診前にクリニックに連絡をしましょう。自宅での検査が新型コロナ陰性でも安心してはいけません(実はこのパターンがいちばんあやしいと感じています)。来院後に検査が必要かどうかはプロに任せてほしいとも思っています。同居家族の発熱状況は大事な情報なので、その後の経過(すでに解熱しているのか、いつごろなのか)も教えてください。
受診をした際、院内では必ずマスク着用を(2歳以下は除きます)心がけましょう。マスクは新型コロナ以外のウイルス性疾患の予防にも役立ちます。
うつさない、うつらないための大切なエチケットです。
いつまで続く?今夏の感染症
現在はやっている病気の特徴を解説します。
【新型コロナ感染症】
新型コロナの感染力は弱くなっていません。また新たに感染力の強い変異株も出できたと報告されています。
5類変更後は、発熱したと申告しないままの受診者が増えています。
家族のだれかが先行して半日だけ発熱。こういった軽症コロナ陽性者も多く、数日後に子どもが発熱して受診。トリアージで検査が必要と判断した結果、新型コロナ陽性判明という家族が後を絶ちません。家庭内のマスク着用も臨機応変に対応をしましょう。
夏休みに入ってからは、家族や塾などでの小規模発生が増加。旅行や里帰りなど、そして中には冠婚葬祭での感染も。鉄道利用の里帰り後に家族全員陽性になった例もありました。
主に保護者が先に感染して子どももかかっている印象ですが、症状だけでは診断できないので検査をすることになります。
決してみなさん軽症なわけではありません。せきが長い人、嗅覚・味覚障害になる人も。子どもでもだるさがなかなか取れないことも。もっと運が悪いと心筋炎や脳症も。かかりたくなければ、外出時にはもう少し危機感をもって予防対策をしましょう。
【インフルエンザ】
真夏になってもおさまりません。仲よくカラオケに行った仲間全員で発症した中学生の例がありました。病気がどうして広まるか、もう少し感染対策に関心を持ってほしいです。
夏休みに入ってからは、部活、塾、なかには帰省などの旅行中の感染も。東南アジアへの旅行で発症した幼児もいました。こういった経緯の陽性者が毎日出ています。
ひょっとすると例年の流行時期まで「今と同じペース?」なんじゃないかと感じています。
【RSウイルス感染症】
7月から発症者が出ていますが、いまだに新たな患者の発生もあります。
感染力が強く、飛沫感染と接触感染(同じおもちゃで遊ぶなど)でもうつるので、保育園では集団発生も。低年齢児は重症になりやすく、呼吸状態が悪くなると酸素投与も必要になり入院する子も。乳児は、兄・姉からの感染が目立つので、家庭内感染予防対策を。
【ヘルパンギーナ】
少し減ってきましたが、発症時は39度を超える高熱になることが多いので、熱性けいれんにも注意です。
【ヒトメタニューモウイルス感染症】
爆発的流行は見られませんが、家族内感染例がチラホラと出ています。RSウイルスとヒトメタニューモウイルスの両方の患者が出ている保育園も。症状からは区別がつきにくいです。この疾患も重症で入院が必要になることもあります。迅速診断検査もできますが、だれにでもやるわけではありません。RSウイルスが否定されたが呼吸苦が強い子に検査して陽性とわかることも。RSウイルスより経過が長め。年長児やママ・パパもぜんそくかと思うほどの呼吸苦を起こすことあります。大人でも体調回復までに一週間以上かかることも。なかなか厄介な病気です。
今年の夏は猛暑で体力消耗。それに加えてコロナだけでなくいろんな病気も流行。子どもたちも大変ですが、実は小児科医もへばり気味になっています。例年には見られない夏のインフルエンザ、3年連続の夏のRSウイルス感染症の流行、数年ぶりのヘルパンギーナなど、経験豊富な小児科医たちも、かつて経験したことのない状況・・・。もう少しで猛暑も終わるはず。きっと感染症状況も落ち着くと信じて、今のうちに早起き・早寝をして生活リズムを整え体力回復に努めましょう。
構成/たまひよONLINE編集部
「病気流行の影響で定期予防接種に遅れが出ている場合は、これからがチャンス」だと太田先生は言います。季節性インフルエンザがはやり始める前に接種を済ませておきましょう。
●記事の内容は2023年8月22日の情報であり、現在と異なる場合があります。