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関東大震災から100年。子育てファミリーが今すぐ始めたい防災は?子どもにSOSカードを持たせて【防災アナウンサー】

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大地震!でも家族はみんなバラバラ・・・家族にいつどこで会える?三菱地所レジデンス株式会社が開発した「そなえるドリル」のイラスト。「そなえるドリル」は家族で一緒に書き込むことで防災計画書になるツール。

1923年(大正12年)9月1日11時58分、神奈川県西部を震源としてマグニチュード7.9の地震が発生した関東大震災から今年で100年。今後30年以内に70%の確率でマグニチュード7クラスの首都直下地震が起きると予測され、最悪の場合死者はおよそ2万3000人とも予想されています。もし今、大地震が起こったら、私たちは大切な家族をどう守ったらいいのでしょうか。2023年9月初旬に、TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHIで行われた「ひと×まち防災トークセッション」の内容の一部をリポートします。

帰宅困難となったとき、離れている家族を守るには?

イベントの様子。スライドでは震災直後(左)と1カ月後(右)の石巻市の様子が映されている。

イベントでは、東日本大震災を経験した防災アナウンサー・奥村奈津美さんがゲストスピーカーとなり、企画運営の三菱地所グループ有志による「防災倶楽部」メンバーとともに、震災経験者の体験談も交えながらトークセッションが行われました。
参加者は、トークテーマごとに、配布された冊子「そなえるドリル」に書き込みをし、自分や家族の防災状況について再確認する形で進められました。

今、家族はどこにいる? どうやって連絡する?

イベントの様子。居場所や連絡先を書き出してみると、意外と把握していないとわかる発見も。

イベント冒頭では、都市部で自身が勤務している日中に大地震が起きたと想定し、「そなえるドリル」に今現在の家族の居場所、電話番号、想定する避難先などを書き込んでチェックしました。子どもがどこにいるか、どこに避難する予定か、スマホの住所録を見ずに連絡先がわかるか・・・、参加者のなかには、意外と家族の居場所を把握していないことに驚く様子もみられました。

防災倶楽部のメンバーで宮城県石巻市に実家がある三輪さんは、「東日本大震災の直後に一度石巻の家族と電話がつながったあとは、4日間家族の消息がわからなくなってしまった」と言います。

「家族と連絡がつかないなか、実家の隣に建設中の工事現場があったことを思い出し、施工会社の連絡先を調べて現場の状況を教えてもらいました。現地は津波の影響で1メートル以上浸水している状況。施工会社の人が建設現場の屋上から実家を見て、衛星電話で教えてくれた様子では『家の2階に10人以上の人影が見える、妊婦さんもいる』とのことでした。義理の姉が臨月を迎えた妊婦だったので、そこに近所の方と一緒にみんなでいるとわかり、生きている、と知ることができ心から安心しました。反面、いつ救助されるのか、気が気ではない思いも。家族と電話で話すことができたのは1週間後でした」(三輪さん)

防災アナウンサーの奥村さんは、大災害発生時には家族の安否確認が難しくなるために「事前に家族で話し合い、連絡方法を確認しておくことが大切」と言います。

「今はスマートフォンに家族の連絡先を入れている人も多いと思いますが、充電が切れたら家族の連絡先すらわからなくなってしまうことも。緊急時の家族の連絡先はカードなどに記入して持ち歩くといいでしょう。また、大災害発生時には、電話回線がパンクしてつながらなくなることがあります。その場合は災害用伝言ダイヤル『171』で安否確認ができますが、録音や再生の利用をするときも、家族でどの電話番号を入力するかを確認しておく必要があります」(奧村さん)

平日の日中に、親は勤務先、子どもは小学校や保育園、など家族がバラバラの場所で過ごしているなら、子どもを迎えに行くまでにどれくらいの時間がかかりそうかも、子どもに伝えておきましょう。子どもの幼稚園や保育園側とも、親が帰宅困難になり迎えに行くことができない場合にどんな対応になるのか、どんな対応をするのかについての確認をしておくことも必要です。

子どものアレルギーや障害の情報は、写真つきのSOSカードで備える

家族全員が写っている写真の裏に家族の連絡先やアレルギーなどの情報を書き込んで携帯しておけば、いざというときにサポートを受けやすくなります。

子どもが親と離れていて被災したときのために「『SOSカード』を準備しておいてほしい」と奧村さんは言います。

「東日本大震災のとき、行方不明の家族を探すのに写真があればよかった、という声を聞きました。そこで私は家族みんなで『SOSカード』を携帯しています。家族写真や家族が写っている年賀状の裏に、名前・住所・血液型・連絡先などの情報を記入したものです。子どもに持たせる場合には、持病・アレルギー・障害があることやどんなサポートが必要かを記入しておきます。親が帰宅困難になった場合にも、子どもが避難先で大人にそのカードを見せれば、適切な支援を受ける一助になるでしょう。ただ個人情報なので、子どもに持たせる場合はランドセルの落としにくい場所に入れておく、防災ポーチに入れておく、など見えにくくしておくといいと思います」(奧村さん)

もし子どもに食物アレルギーや障害があるならさらに注意が必要です。防災倶楽部メンバーの岡崎さんの長男には、乳製品と卵の食物アレルギーがあるためとくに気をつけていたそうです。

「息子が低学年のときには、腕に少しアレルゲンが触れただけで全身にじんましんが広がるほどの食物アレルギーがあったんです。そこで、防災用のネームカードに名前よりも大きく『アレルギーがあります』と記入し『地震があったときにはこれを首から下げなさい』と伝えていました」(岡崎さん)

「アレルギーは命にかかわること。ある被災地で知り合った人のお子さんは、食物アレルギーがあるために避難所で4日間何も食べることができず、劣悪な環境下で発熱・熱性けいれんになり、救急搬送されてしまったこともあったそうです」(奧村さん)

乳幼児がいる家庭は、2週間分の食料備蓄を

東日本大震災・石巻、物資を求める行列。写真提供/NPO法人国際ボランティア学生協会

大規模災害によって電気・水道などのインフラがダウンしたとき備蓄の優先順位は、まずはトイレ、次に飲料水の備えが大事なのだそうです。

「被災生活をした人の体験を聞くと『トイレが大変だった』という人がとても多いです。避難所では「トイレに行きたくなるから水を極力飲まない」という人も。東日本大震災では、避難所に仮設トイレが届くまで1週間かかった自治体が半数ほどでした。排せつを我慢すると体調の悪化にもつながるため、トイレの備えは非常に大事。大人の場合、少なくとも1週間分は水を使わない災害用トイレを用意する必要があります。乳幼児の紙おむつも支援物資で届きにくいため、子どもの肌に合うものを備えておきましょう。

また災害時に断水すると復旧まで時間がかかります。阪神淡路大震災では、水道の全面復旧までに90日間かかりました。水は重いので給水所から運ぶのも大変です。高層マンションに住む場合などは、重い水を背負って階段をのぼるのは、予想以上に重労働。水は日ごろから最低でも1週間分は備えておいて、使ったら買いたす形にするといいと思います」(奧村さん)

とくに、乳幼児がいる家庭の備蓄は最低2週間分といわれています。離乳食や紙おむつなどは支援物資として届きにくいためです。乳幼児を連れて避難所が利用しにくい場合のことも考えると、在宅避難ができる場合には、子ども用の離乳食やお菓子、ミルク育児の場合はミルク、水、カセットコンロなどを在宅避難用に備えておくと安心です。

「東日本大震災の直後はとても寒く、雪が舞う中スーパーの前に子どもを連れて並んでいる家族の姿も見られました。災害時の食料の買い出しでは、何時間も並んでも購入できる品物は1家族1個ということも。買い出しに行くのは最小限にできるよう、在宅避難できる備えをしておきたいものです」(奧村さん)

命を守る情報を得るネットワークの大切さ

イベントで配布された「そなえるドリル」の一部。左ページには家族の連絡先、右ページにはいざというときに頼れる人を記入して、災害時をイメージ。

大災害で電気が止まってしまうと、インターネットはつながらず、携帯電話もつながらない状況に。自分たちの街の被災の状況や、どこで支援物資を得られるかの情報も得られなくなってしまいます。そんなときに命綱となるのは、近隣住民とのネットワークです。

「ある被災者の中には、情報が届かなかったために被災から2カ月経って初めて避難所で支援物資が受け取れると知った、という人もいました。近所に知り合いが多いかどうかは、家族が生きるための情報が得られるかどうかにもかかわります。いつどこでどんな支援物資が支給されるのか、といった地域の情報を積極的に取れるように、普段から地域の人たちとのコミュニケーションを取っておくことはとても大事です」(奧村さん)

「千葉県習志野市の津田沼奏の杜エリアには大規模なマンションが並んでいますが、そのエリアの住民が主体となり、合同で防災訓練を実施しています。防災訓練だけでなく、地域のお祭りを開催して子育て世代のファミリー層が中心に参加する催しも。そういったイベントを通して、地域の人と顔見知りになっておくことこそ、いざという時に助け合う防災につながります」(岡崎さん)

イベント終了後、参加した男性に感想を聞きました。

「今、子どもが1歳11カ月なんですが、乳幼児がいる家庭は2週間分の水の備えが必要と聞いて驚きました。3日分の備えしかしていませんでした。トイレのことも知らなかったので、トイレと水は早速準備しようと思います。また、今日は妻と子どもが2人で東京ディズニーランドに遊びに行っているんですが、もし今この瞬間に大地震が起きたら3〜4日は連絡が取れなくなるかもしれないなあと予想しました。家族がどこで過ごしているかを考えることが防災につながると知り、イメージができてよかったです」(都内在住Aさん・32歳・会社員)

取材協力/ひと×まち防災トークセッション事務局 イラスト・画像提供/三菱地所レジデンス株式会社 監修/奥村奈津美さん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

イベントの最後には奧村さんが「今日気づいたことは、家族に話してぜひアウトプットしてください」とコメント。「家族で防災について話し合った経験が少しでもあると、実際に被災したときに命を守る行動につながります」と奧村さん。大切な人を守るために、まず家族の居場所を確認しあうところから初めてみてはいかがでしょうか。

そなえるドリルのダウンロードはこちら

●記事の内容は2023年9月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

奥村奈津美さん(おくむらなつみ)

PROFILE
1982年東京生まれ。広島、仙台で地方局アナウンサーとして活動したあと、東京に戻りフリーアナウンサーに。TBS『はなまるマーケット』リポーターを務めるほか、NHK『ニュースウオッチ9』など報道番組を長年担当。東日本大震災を仙台のアナウンサーとして経験。以来10年以上、全国の被災地を訪れ、取材や支援ボランティアに力を入れる。防災士、福祉防災認定コーチ、防災教育推進協会講師、防災住宅研究所 理事、東京都防災コーディネーター、中野区防災リーダー。

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