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後頭部が長い状態で生まれた二男。手術後に障害を発症し、母を見てもだれだかわからない・・・【体験談・医師監修】

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6歳になり手術を受けたあとの希くん。

山角彩さん(45歳・看護師)は、16歳、12歳、6歳の男の子3人きょうだいの母親です。北海道浦河町に夫と子どもとの5人家族で暮らしています。二男の希(のぞむ)くんは頭部が前後に長い状態で生まれ、年長のときに「舟状頭蓋(しゅうじょうとうがい)」と診断され手術を受けました。その際、脳の腫れが事前の予測以上となった影響で「高次脳機能障害」と 「てんかん」を発症しました。希くんが生まれたときのことや、手術を受けたときのことについて、彩さんに話を聞きました。全2回のインタビューの1回目です。

生まれたときから頭の後ろが長い状態だった

希くん2歳のころ。横から見ると、頭が後ろに長くなっているのがわかります。

二男の希くんが生まれたのは2010年の11月。彩さんは看護師としてフルタイム勤務をしていたためにおなかが張り気味ではありましたが、張り止めを服用したりしながら出産予定日を過ぎた41週での出産となりました。

「生まれた赤ちゃんを抱っこしたときに、後頭部が長くのびたような形になっていることに気がつきました。その病院は長男の出産でもお世話になって、助産師さんも顔見知りだったので、『あら、ちょっとうしろ頭が長いね〜』と言ったりしてみんなで笑い合う感じで、とくに問題にはなりませんでした。

でも、希は後頭部が長いためにねんねの時は横向きになることが多く、あお向けに寝かせるとあごをぐっと引くような状態。自分も看護師をしているので、希の頭の形が気になり、何か異常があるんじゃないかと心配でした。そこで生後2カ月のころに札幌にある脳外科の専門病院でCTを撮ってもらうことに。検査の結果は何も問題がなく、脳外科的には経過観察の必要もないとのことでした。成長発達の上での問題もとくになく、乳幼児健康診査でも『ちょっと頭が大きいね』『後頭部がちょっと長いね』と言われる程度で、検査が必要と言われたこともありませんでした」(彩さん)

頭の形が気になりながらも「問題がない」と言われたため様子を見ていた彩さんですが、希くんが5歳を迎えるころ、親戚から、「知人の子どもが希くんと同じような頭の形を手術で直した」という話を聞きました。

「そのお子さんは希と同じように後ろに長い頭をしていたけれど、小学校に入る前に手術を受けてまるい頭になったから希くんも見てもらったほうがいいんじゃない、と言われました。
ちょうどそのころ、希本人が自分の頭の形を気にし始めた時期でした。保育園のお友だちにも頭の形を指摘されて傷ついていることもありました。私もどうにかしてあげられたら、と思い、地元の総合病院を受診することに。

そこで紹介状を書いてもらい、札幌にある北海道立子ども総合医療・療育センター(以下愛称コドモックル)を紹介され、受診することになりました。コドモックルで見てもらったところ、希は『舟状頭蓋(しゅうじょうとうがい)』と診断されました」(彩さん)

舟状頭蓋とは、頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)という生まれつきの病気の一種です。
赤ちゃんの頭の骨は大人と違って何枚かの骨に分かれています。乳幼児期に脳が急速に成長し大きくなると、骨も脳の成長に合わせて拡大し、成人に向かうにつれて、骨と骨のつなぎ目がくっついてふさがり、固い頭蓋骨が作られます。
しかし、希くんが診断された舟状頭蓋は、頭蓋骨のつなぎ目が通常より早い時期にふさがってしまったため、頭の骨が横に成長できずに縦長に変形した状態になります。一般に舟状頭蓋以外の頭蓋骨縫合早期癒合症の中には、放置すると頭の変形が残るだけでなく、脳組織の正常な発達が抑制される可能性があるものもあり、一般的には適切な時期に手術が必要と考えられています。

「医師の話では、『5歳の段階で発達に問題がないから、今後も脳に問題が出ることはないかもしれない。ただ成長に伴って頭の形を気にして心の問題が出るかもしれない。それを考えると手術適応なくらい変形している』と言われました。

手術を受けるかどうか、とても悩みました。今現在、発達に問題がないとしても、この後何があるかわからないくらいに変形しているということや、希が『自分の頭の形が嫌だ』と言っていることから、治せるものなら治してあげたい、と思いました。私がちゃんと産んであげられなかった、と自分を責める気持ちもありました。
でも、頭の手術を受けて本当に大丈夫なのか・・・。私のきょうだいの医療関連従事者や、両親にも相談してよく考え、最終的には手術を受けさせることに決めました」(彩さん)

手術後に、事前の予測以上に脳が腫れてしまい・・・

希くん4歳のころ。野球をしているお兄ちゃんの影響で、希くんも野球が大好きに。

5歳の夏に舟状頭蓋の診断を受けた希くん。11月の6歳の誕生日を過ぎ、保育園の年長組としての秋の発表会が終わった後に入院・手術を受けることになりました。
手術前には、入院は10日から2週間くらいの予定だっために、11月末に手術をしてしばらく様子を見て、冬休みが明けたらまた保育園へ通園するはずでした。しかし、手術が無事に済んだあと、希くんは不測の事態に見舞われてしまいます。

「2016年の11月末のある日、日中に手術を受け、手術室から戻った希に会えたのは夕方の17時ごろのこと。『手術は成功し、頭も丸くなりました』と言われ、包帯が巻かれた希の後頭部を見せてもらいました。無事に終わってひと安心、と帰宅しました。しかし、22時ごろに病院からの電話が・・・。『希くんが目が見えないと言っている』とのこと。急きょ病院へ向かいました。

緊急でMRI検査をしたところ、脳が事前の予測よりも大きく腫れてしまったために、後ろの頭蓋骨に接触していて目が見えなくなっているかもしれない、とのことでした。脳圧を下げる点滴をしてもうまくいかなかったため、再手術をすることに。再手術では、後頭部の頭蓋骨を外して頭皮だけを閉じて、脳の腫れが引くまでしばらく骨をはずしたままにする処置がされました」(彩さん)

11月末の手術のあと、希くんの脳の腫れがひくまでには1カ月以上の時間がかかりました。希くんはずっとICU(集中治療室)のベッドで麻酔で眠った状態となり、彩さんは病院に隣接したドナルド・マクドナルド さっぽろハウスを利用して希くんに付き添いました。
そして年が明けて2017年を迎えた1月、脳の腫れがひいた希くんは、再び後頭部の頭蓋骨を戻す手術を受けました。

目が覚めたら母がだれかもわからなかった

ICUにいたときにいつも一緒にいたぬいぐるみをみて笑顔の希くん。

2017年の1月、希くんはやっと目を覚ましますが、その視線や言動には異変が見られました。

「麻酔から覚めた希に『だれかわかる?』と聞いたら『ううん、わかんない』と私がだれかがわかりません。目は斜視になっていて、私が話しかける言葉もよくわからない状況でした。数日して少しずつ話せるようになってきて、『テレビ見える?』と聞いたら『見えない』と答えていましたが、たまたまテレビに牛乳が出てきたときに『あ、牛乳飲んでる』とぼそっと言ったんです。それで目は見えるようになったんだな、とわかりました。

『ごはんを食べるよ〜』とスプーンを持たせても、自分で口元まで運ぶことはできませんでした。そのほかにも短期記憶がかなり難しく、直前の話の内容やできごとも覚えているのが難しいんです。また感情のコントロールができず、隣にいる人が泣いていたら、自分も泣いてしまうような状況でした」(彩さん)

希くんのこのような症状は、手術の後に予測よりも脳が大きく腫れてしまった影響で脳の一部がダメージを受け、思考・記憶・行為・言語・注意などの脳機能の一部に障害が起きた状態である「高次脳機能障害」と診断されました。

「言うことも、することも支離滅裂でした。ICUに入院している間は看護師さんがほとんどお世話をしてくれていたので目立たなかったんですが、2月から一般病棟に移って付き添い入院をしている間は、希の行動の予測がつかないために目が離せなくなりました。たとえば、ズボンを頭から被ってみたり、服は後ろ前を逆に着てもまったく気にしない感じです。
3月からは生活病棟に移り、希は4月からコドモックルに隣接する手稲養護学校の1年生になりましたが、1年生の3月ごろまで希の言動は支離滅裂な状態が続きました。

手術を受ける選択をしなければ、希に障害が残ることはなかったかもしれない、と考えることもあります。希の病気や障害は私のせいだと自分を責める気持ちも。これからの希の将来には心配なことが多いのですが、一つずつ解消していかなくてはと考えています」(彩さん)

お話・写真提供/山角彩さん 取材協力/公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン 監修/吉藤和久先生(北海道立子ども総合医療・療育センター 外科部長:脳神経外科医) 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

退院後はリハビリを続けながら、ゆっくりのペースですが少しずつできることが増えてきた希くん。障害により知能検査では6〜7歳くらいで短期記憶が難しいですが、体を動かすのが大好きです。現在は中学1年生。スピードスケート、バドミントンなどにも取り組んでいるそうです。インタビュー2回目の内容は、希くんの成長の様子や現在の症状についてです。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年9月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

ドナルド・マクドナルド・ハウス さっぽろ

病気と闘う子どもとその家族を支える滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」は、全国に12施設あり、いずれも小児病院のすぐ近くにあり1日1人1000円で利用することができます。
さっぽろハウスは仙台以北で唯一の小児専門病院である、北海道立子ども総合医療・療育センターに隣接し、運営はすべて寄付・募金とボランティアの活動によって支えられています。詳細は財団ホームページから確認できます。

公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン

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