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「息子はずっとかわいい!」治療法のない筋ジストロフィーの我が子、予後は10~20歳とも…。妹が生まれ“お兄ちゃん”になった日

更新

鈴木さんご夫婦と、長男のあちょくん(0歳のころ)。

鈴木碩子さんの長男・あちょくんが、指定難病の「福山型先天性筋ジストロフィー」だとわかったのは生後10か月のこと。その後、鈴木さんは「ふくやまっこ(福山型先天性筋ジストロフィーの子どもたち)」の家族との繋がりを経て、現在は“疾患児や障がい児家族の毎日を楽しくする”をコンセプトにしたサービスを立ち上げ、日々活動しています。鈴木さんのこれまでの歩みや、息子さんへの思いを伺いました。

※先天性筋ジストロフィー…体の筋肉の組織が壊れやすく、再生されにくい症状を持つ疾患の総称で、国が指定する難病の一つ。筋力が低下して運動障害や機能障害を引き起こす。福山型は、日本の先天性筋ジストロフィーの中で最も多い。(公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センターのHPを参照してまとめたもの)

生後10か月で難病の診断が下りても、変わらなかったこと

あちょくんが2か月のころ。

――長男あちょくんの病気がわかるまでの経緯を教えてください。

鈴木 妊娠中は母子ともにすごく元気で、出産前ギリギリまで仕事をしていました。産婦人科の先生から妊娠経過に関して指摘もなく、41週で自然分娩での出産でした。その後、育てていく中で生後4か月を過ぎても首すわりがなく、乳幼児健診から病院で様子を調べていく流れになったんです。
首すわりがなく、乳幼児健診の項目にもあてはまらないものが多くなってきた頃は、「あれ?」と不思議に思うこともありました。ただ、周囲も「ゆっくりの子もいるからね」というくらいだったので、「ゆっくりさんなのかな」くらいにしか思っていなかったんです。はじめての育児で、実際に育児の本に書かれている状態とどのくらい差があるのかわからないということもあり、大きな違和感ではありませんでした。

生後半年の乳幼児健診は、コロナ禍のためクリニックで見てもらう流れでした。その時に「首がすわらない」など運動発達のチェック項目に当てはまらず、先生が「1回大きい病院に診てもらったほうがいいかもね」と言ってくださったんです。それほど深刻だという話はクリニックの時点ではまだなかったのですが、紹介していただいた総合病院でも診断がつかず、「遺伝子検査をしますか?」といわれて大学病院で検査してもらって、そこで初めて「福山型先天性筋ジストロフィー」だとわかりました。

――検査結果が確定するまで、どのくらい時間がかかったのでしょうか?

鈴木 だいたい3か月くらいですね。遺伝子検査はけっこう時間がかかるので、確定診断になったのはあちょが10か月の時です。ただ、血液検査では筋肉に含まれるCK(クレアチンキナーゼ)という酵素の数値が高かったことから、確定する前から「もしかしたら先天性筋ジストロフィーの可能性が…」という話は言われていました。

――検査結果を待っている間、どんな心境でしたか。

鈴木 「もしかしたらそう(先天性筋ジストロフィー)なのかも」とは考えながらも、それでもあちょと一緒にお出かけや外食をすると楽しく、仕事も続けていて大きく困っていることもなかったので、意外だと思われるかもしれないんですけど、検査後は以前と変わらずに普通にして忙しく暮らしてきたという感覚です。

もちろんたくさん情報を調べて、同じ病気のお子さんに関する親御さんのブログを読んだりして、夫とそれぞれに気持ちの折り合いをつけた部分はありました。ただ、診断がついたからといっても、目の前の子どもは今日も明日も、ずっと変わらずかわいいんですよね。めっちゃかわいいんですよ、うちの子(笑)。

現時点では治療法がないけれど、前向きになれる理由

3歳になった現在のあちょくん。

――あちょくんの病名がわかっても、ご夫婦の中で大きく生活や心境が変わることはなかったのですね。

鈴木 そうですね。病気がわかってもあちょが大好き、ということは私たち家族にとって変わらないことでした。保育園に通えなくなってしまったり、肺炎で入院をして付き添い入院があったり、という苦労はそれなりにあります。ただ、できないことがあったり、2歳になっても言葉が出なかったり、といったことも「そっか、そっか」と受け入れていました。初めての育児なので、比べる対象もなく、そんなに違和感がなかったのも大きいかもしれません。

また、同じ病気のご家族と早期に繋がれたことも大きかったと思っています。夫がInstagramをやっていたのですが、「福山型筋ジストロフィー」「ふくやまっこ」というハッシュタグを見つけて、そのタグで投稿していたんです。そしたら福山型筋ジストロフィーのお子さんを持つ親御さんが投稿を見つけてくださり、「よかったら、ふくやまっこのご家族のLINEグループに参加しませんか?」と声をかけてくださって、そこから同じ“ふくやまっこ”のご家族の方々とつながることができました。

もともと情報交換の場として先輩パパさんやママさんが立ち上げて運営してくださっている「ふくやまっこ村」というLINEグループがあり、そういった繋がりもあって家族会にも繋がっていくことができて、という形で「何かあったら聞ける」セーフティーネットが広がっていったように思います。筋ジストロフィー協会という会から分化した福山型の会も、ご家族の方々が10年ほど前に作ってくださったそうです。私たちは運よくお声がけいただいて会に参加できたのですが、福祉機器や訪問看護の情報などを流してくださって、皆さんとても親切で日々本当にありがたいです。

――いろいろな情報交換や相談ができる家族会やグループの存在には、とても助けられますよね。鈴木さんはこの病気について、お医者さんからどんな説明を受けましたか。

鈴木 まず、福山型先天性筋ジストロフィーには現時点では治療法がないと言われました。そして、座位(おすわり)や、立位(まっすぐ立つ姿勢)ができるようになる子もいますが個人差があり、進行性の病気なので筋力がだんだん衰退していくことも伝えられました。

予後はだいたい10~20歳と言われているそうです。ただ、これは今までの平均なので、先生は「医学は進歩していて、真剣に研究されている先生方もいるので、10年、20年後には変わってくると思う」とおっしゃっていました。
福山型筋ジストロフィーの研究は、現時点では、動物による実験の有効性が認められ、人への治験が行われようとしていて、治療薬を見つけている段階です。家族会の方々がいろいろな患者さんのデータを集めてくださったり、実際に研究や薬の開発に携わっている医療関係の方々がいて、本当にすごいことだと思いました。

――あちょくんは現在3歳ですね。普段はどんな様子ですか。

鈴木 座った姿勢を長く保つことが難しく、座位保持いすや車いすバギーなどの福祉機器を使って生活しています。全体的に筋力が弱いので歩行は難しく、脳に筋肉が関わっている関係もあって知的発達の遅れがあって、コミュニケーションは身振り手振りや音で伝えていて、リズムをとったり、楽しいときは足を揺らしたりして表現してくれますね。

筋力を使う排泄や食事は毎日介助が必要で、食べ物をうまく食べたり飲み込んだりできない「嚥下(えんげ)障害」もあります。PT(理学療法士)さんやST(言語聴覚士)さんに支えていただき、今では刻んだもの、やわらかいものを食べたり、以前よりも少しながら動きが出たりしてきました。発達の能力が、これからどれくらいその力を獲得できるかは未知数です。ただ、うまく伝えられない不思議な感覚なのですが、あちょにとってはそれが普通の状態でずっと過ごしているので、他と比べて「これができないんだ…」などと思うことは少なかったです。今できることを、どうしたらもっとできるようになるか、と考えるようにしています。

「あちょらしい生き方」を、応援していきたい

あちょくんと、0歳の妹。お互いにじっと見つめたり、触ったりしてコミュニケーションをとっています。

――2023年4月には、2人目のお子さんが生まれました。

鈴木 下の子が生まれたときに、あちょが、ちゃんと“お兄ちゃんの顔”をしたんですよね。最初は「あちょには赤ちゃんはわからないかな、興味を示さないかな?」と思っていたんですけど、下の子をじっと見ていたり、触りにいったりしていて、下の子が泣き出すと「大丈夫?」と困ったような感じを見せて、一緒に泣いちゃうんです。たぶん、どうしようもしてあげられなくて泣いちゃうんじゃないかと思っています(笑)。

下の子が家に来てからは、あちょ自身も寝返りで動いたり、しっかり座れるようになったりして、お兄ちゃんになってできることが増えたな、成長としてもすごく伸びたなという感じがしています。

――あちょくんとの生活や今後について、どのように考えたり、ご夫婦で話し合っていますか。

鈴木 私自身は、つらいことや心配なこと、今後のあちょの集団生活のことなど、気になることもたくさんあります。ただ、ポジティブに「あちょにできることを探したい」という思考になって、「具体的にどういうことができるんだろう」と考えるようにしています。

私はインターネットやスタートアップといった新しい価値を生み出す業界のお仕事に長く関わっているのですが、その中で感じるのは、人とは違う視点を持つことは、すごく難しく、かつ意味のあることだということです。そういった意味で、あちょにはあちょ自身の魅力があると私は信じていて、何かあちょが人の役に立てることを探していきたいと思っています。

また、私自身は、出産前には思ってもいなかった「疾患や障がいのある子の親」という立場になりました。大変なことはもちろんありますが、当事者だからこそ違う視点や価値観で「こんなことに困っている、解決したい」と発信することは、自分だからこそできることで、すべきことだとも感じています。 疾患や障がいのある子どもでも、家族との大切な思い出や「楽しい!」を感じる瞬間を増やしたいという思いから、“疾患児・障がい児家族の毎日を楽しく”というコンセプトの「ファミケア」というサービスも新たに始めました。

夫もいろいろと話を聞いてくれて、アイディアも出してくれます。彼は彼自身で「アクセシビリティ(使いやすさ)がある世の中にしたい」という思いを持ってデザインの仕事に取り組んでいて、私も応援しています。
まだまだ疾患児や障がい児、その家族にはいろいろな選択肢が少なくて、たくさんの苦労もあります。でも、今私たちが感じているような不便さや大変さを解消して、少しずつ社会が良くなるように、1歩1歩取り組んでいきたいなと思っています。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

取材・文/武田純子、たまひよONLINE編集部

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年11月の情報で、現在と異なる場合があります。

鈴木碩子さん

1991年、愛知県生まれ。2017年、25歳で株式会社ismを設立。2020年に同社を株式会社PR TIMES社へ売却後、プロダクトチームマネージャーとして活躍。2022年に株式会社NEWSTAを設立。2023年9月、“疾患児・障がい児家族の毎日を楽しく”がコンセプトのサービス「ファミケア」を開始する。2020年生まれの長男「あちょ」くん、2023年生まれの長女の母。

ファミケア公式サイト

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