抱っこ、寝かしつけ、入浴、外遊びの時の子どもの「パパはイヤ!ママがいい!」にどう対処する?
嫌いというわけではないけれど、寝かしつけや入浴、抱っこなどで「パパイヤ」が発動することも。「たまひよ」アプリのユーザーから寄せられた悩みについて、大阪大学教育学部教授の小崎恭弘さんに聞きました。
「パパイヤ」発動するのはどんな時?
まず、みんなの「パパイヤ」エピソードをご紹介します。
■毎晩腕枕
「寝る時はママの腕枕でしか寝なくなったので、ママの腕は毎日痺れる羽目に…」(あと)
■外出時は大泣き
「外出先(ショッピングモールでのヘアカットや通院など)で夫に預ける時は、『あっち、あっち』(ママのところ)とずっと大泣き。最終的に泣き疲れて寝たそうです。家で預ける時は大丈夫なんですが…」(ふーみん555)
■眠い時はパパはイヤ!
「眠い時にパパが抱っこをすると全力で嫌がってギャン泣きする。ママが抱っこを代わるとすぐ泣き止みます」(あーにゃ)
■寝かしつけはママだけ
「夜の寝かしつけだけは、産後からずっと『パパイヤ』です。ママだけしか受け付けず…。一緒に寝落ちしちゃうことがほとんどなので、夜の自由時間はありません(笑)」(かまぼこ大好きの妻)
■入浴時はギャン泣き
「パパがお風呂入ろうと誘っても、ママと入るからいいと必ず断られているパパ。パパと一緒に入っても、お風呂場から泣き声が聞こえることが多いです」(みかん)
■ゆっくり入浴もできない
「ママがお風呂に入る時は号泣。パパが一生懸命気を紛らわすもうまくいかず、結局ママがお風呂から出るまでお風呂場のドアの前で待っています」(みなまな)
■外遊びが好きなのに…
「外が大好きなのに、パパが連れ出そうとしたら、私の方に手をのばして泣いていました。外から泣き声が聞こえてきたと思ったら、すぐ帰ってきました…」(ぽぽこ)
■全力首振りのイヤイヤ
「最近、首を振ってイヤイヤすることを覚えたので、そんなにパパを嫌いじゃなくても全力で首を振ります(笑)」(まみママ)
■具合が悪い時
「普段はパパのことが大好きなのですが、具合が悪い時はママじゃないとダメっていう時があり、離れられず大変でした」(こまり)
■むしろママイヤ?!
「むしろ『ママイヤ』の方が多いです(笑)。抱っこしていても私だと体をそらせ、眉間にシワを寄せていますが、パパが抱っこするとご機嫌になり、自ら袖を掴みながらご機嫌で抱っこされています」(ゆっきーな)
子どもとパパの関係性づくりには時間がかかるもの
「パパイヤ」はどのようなことが原因なのでしょう。その原因と対応方法について、小崎恭弘さんに聞きました。
「子どもは幼く未熟な生き物で、本能的に自分の命を守ってくれる存在を理解しています。その最もわかりやすいものが『授乳』です。哺乳類である人間は、おっぱいを飲むことで命を繋いでいきます。そのため、おっぱいのある人が生きていくために一番大切な存在です。
多くの場合それは『母親』です。育ちの初期は、父親より母親の方が子育てや赤ちゃんとの関係性において優位であると言えます。
しかしこれが絶対的なモノかというと、決してそうでもありません。
子どもの成長に応じて、特定の養育者の存在は大切なのですが、それは『母親』のみがふさわしいものではないのです。
『特定の養育者』ということがポイントになります。つまりいつも同じ関わりをしてくれる存在であり、安定した気持ちや行動で、接してくれる人を指します。
いつも自分のそばにいてくれて、自分のお世話をしてくれて、自分のことをわかってくれる存在に、子どもたちは信頼感を持ち、親しみを感じるのです。考えてみれば当たり前のことなのです。
それでは皆さんのお家では、特に子どもの小さい時は、パパとママどちらが子どもと関わる時間や回数が多いでしょうか。
もしかすると多くの場合は、ママなのではないでしょうか。授乳と共に育児がスタートするので、そのような傾向になりがちだと思います。
その場合、ママとの関係性を子どもたちは人生の一つの基盤とします。ママとの関係性を大きな柱として、人との関わりを作り広げていきます。まさにこのタイミングは『子どもとママ』が一心同体となる時期だと言えます。そのタイミングでパパが関わろうとしても、そのこと自体が子どもにとっては、あまり嬉しくない状況になるのかもしれません。
また眠い時やおなかの空いた時など、子どもが不快を感じている時は、より安定したママとの関係性や関わりを求めるので、パパが邪魔者のように感じることもあります。
辛いですね。パパは、こんなにも頑張っているのに。またこんなにも子どもを愛して大切に思っているのに、子どもに『パパイヤ!』とされるわけですから。
子どもとパパの関係性を作っていくのには、少し時間がかかると思います。特に授乳期などは、おっぱいとママが中心の生活ですから。
しかし子どももいつまでもママとの生活が、基本になるわけではありません。少しずつですが、ママとの関係性を大きな軸として子どもは子ども自身の生活や関係性を広げていきます。そのタイミングでパパの出番がきます。
例えば、最初からいきなりパパだけの環境や状況は、子どもたちも不安になったり、驚いたりするかもしれません。まずはママとの安心感をうまく活用し、ママとパパが一緒に寝かしつけや食事、お出かけなどをしていくことがいいですね。
その中で子どもに『ママもいいけど、パパもいい』というように感じさせてほしいと思います。決して急いだり、無理をしたりする必要はありません。ゆっくりと丁寧に関わり、ママのやり方や関わり方をまずは真似て欲しいと思います。それが子どもにとって心地のいいことなのですから。
それらの安定を大切にして、パパとの関係性を作って欲しいと思います。
パパ頑張って!」(小崎恭弘さん)
可愛い我が子からの「パパイヤ」はかなりショックです。「パパイヤ」の時期は、ゆっくりじっくりママと一緒に子どもとの時間を増やしていけるといいですね。
(取材・構成/メディア・ビュー 酒井範子)
小崎恭弘さん
PROFILE)
大阪教育大学附属天王寺小学校 校長。大阪教育大学教育学部教員養成課程家政教育講座教授。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。ファザーリングジャパン顧問。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をから「父親の育児支援」研究を始め、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて、父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修等で、講演会等を行うように。著書に『育児父さんの成長日誌』(朝日新聞社)、『パパぢから検定』(小学館)など。
※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※記事の内容は2023年9月の情報で、現在と異なる場合があります。