子育て世代の「稼ぐ」「家事」「育児」がうまくいく分担のコツとは?
「たまひよ」アプリユーザーの家事分担についてのアンケート調査とともに、これからの時代に合った家事分担について大阪教育大学教授の小崎恭弘さんにアドバイスいただきました。
家事分担はしてる? していない? みんなの家事分担の実情とは
アンケート結果によると、家事分担をしているのは約51%となりました。していないが約44%で家事分担をしている家庭の方が多い結果に。(※たまひよ公式アプリ「まいにちのたまひよ」調べ)
■お互いの家事に文句を言わない
「基本家事分担しているけど、自分がやりたくなかったりできなかった時は、お互い何も言わずにフォローし合っています。お互いのやった家事に文句を言わないから、気持ちよく家事ができます」(おもち)
■お風呂掃除は交互に
「食事は夫、その他は私が担当。お風呂掃除は、基本、最後に入った人が掃除するようになっていますが、平等になるように交互にしています」(みきてぃ)
■夫担当のはずなのに放置が気になる…
「食器洗いは、夫がやるから置いておいてって言われるけど、2、3日放置されることがある気になります」(みー)
■夫は率先して掃除
「お願いしなくても、夫は私の苦手な部屋の掃除や風呂の掃除、トイレの掃除をしてくれるので、いつも感謝しています。その分、ごはん作りはがんばろうと思います」(くるぱー)
■絶対しない家事がある
「洗い物やトイレ・お風呂の掃除は絶対にしてくれない。たまには交代して欲しいです」(のん)
■先回りしてやってくれて感謝!
「夫は家事をしてくれますが、もう少し早く動いてほしいと思う時があります。例えばお皿洗い。なかなか洗ってくれないので結果的に私がやることも。でも、基本的にはよくしてくれるし、伝えればやってくれます。指示待ちだったりした時期もありましたが、今は先回りしてくれることもあるので助かっています!いつもありがとうね!!」(あんころもち)
■育休明けの現実をわかっているのか心配
「なんとなくで分担しています。夫は私の育休が終わってフルタイム勤務に戻った時どうなるか想像しているのかな?と心配になることも。自称、育児も家事もよく『手伝っている』夫。手伝うんじゃなくて、一緒にやるんだよ…と思ってしまいます。感謝しないといけないと思ってはいるけど…」(グラス)
■たまに揉めることも
「全てやってくれますが、微妙にお互いの常識、非常識が違うので揉めることもあります」(tomomiy)
家事分担は夫婦の永遠のテーマ。多様性の時代は、家庭内の役割分担は、家族の生存戦略のひとつ
家事・育児の分担は当たり前になりつつあります。ただ、体験談にあるように分担していてもお互いモヤモヤすることもあるようです。そこで、ファザーリングジャパン顧問の小崎恭弘さんに、これからの家事分担についてアドバイスいただきました。
「『家事分担』は夫婦や家族の永遠のテーマだと思っています。きっとどこまでいっても、お互いが100%納得することはないでしょう。なぜうまくいかないのか、そしてどうすればいいのかを一緒に考えていきましょう。
まず、なぜ現在『家事分担』が大きなテーマになっているかというと、その前提として社会の急激な変化が挙げられます。1990年つまり平成の初期においては、専業主婦世帯は共働き世帯の約2倍存在していました。『働く男性/家事育児を行う女性』という、固定的な性別役割分業が社会全体で共有されていた時代であると言えます。
現在のように女性の就業率が上がり共働き家庭が増えてくると、以前のように男性が中心となり担ってきた『稼ぎ手』としての役割をひとりで遂行することが困難になってきました。全体としてはまだ少ないかもしれませんが、母親の方の収入が高い家庭も見られるようになってきました。このような家庭において、一方的に母親のみに『家事・育児役割』を付与されるのは、やはりバランスを欠いたものとなるでしょう。
ここに新しい時代の新しい役割分担のヒントがあると思います。つまり大切なのはバランス感覚だと思います。
男性が経済的な稼ぎ手の役割を担い、女性が家事・育児という家庭生活役割を担うという、これまで明確であった役割分担が、不明瞭になってきています。男性がまだまだ稼ぎ手としては優位な部分もありますが、以前のように圧倒的な優位性があるわけではありません。そうなると同時に、男性の『家事・育児役割』がとても重要になります。
気をつけないといけないのは『稼いでいるから偉い』のではなく、夫婦や家族でどのように稼ぎながら、同時に家事・育児を行うかという、バランスと戦略が必要だということです。
これからの夫婦や家族において、この『稼ぐ役割・家事役割・育児役割』の3つの役割を真剣に考え、作戦を立て、どう実践するかが求められるのです。
家庭内の役割分担は、家族の生存戦略のひとつです。
では具体的に、この3つの具体的な取り組みについてそれぞれ考えてみましょう。
1.稼ぐ
共働き、専業主婦家庭だけでなく、現在は副業や男性の専業主夫も見られるようになってきました。さまざまな働き方や稼ぎ方が存在します。多様な働き方を意識しながら、それらの準備やネットワークを広げていくことも大切だと思います。もちろん会社で働き続けることも非常に有利な方法です。また今だけでなく、将来の働き方も意識しましょう。その視点を入れるだけで、作戦が変わってきます。
将来に向けて新しい勉強や資格の取得を目指すなどもいいと思いますし、また様々なビジネスのネットワークやSNS上のグループなどに積極的に参加していくなどもいいでしょう。今すぐに働き方を変える、ということではなく少し先を見据えた準備を進めていくというイメージです。
2.家事
中学・高校の家庭科で男女が共に生活に関わることを学んでいる世代です。一方的に女性のみが、家事の全てを担うのではなく、それぞれの育ちの中で獲得してきた生活のスキルの得手や不得手を確認して、お互いに無理のない形を目指しましょう。ただ必ずしなくてはいけないものも、当然存在します。お互いの話し合いと納得が前提となります。
家事の分担に絶対的なルールややり方はありません。
例えば『全てを半分にして1/2ずつ』などは、一見平等のように思えますが、子どもの突然の対応や生活のタイミングなどを考えれば現実的ではないでしょう。大切なのはお互いの納得による『公平感』であると思います。それと相手に対する気遣いです。『今、何かできることはある?』など、少しの配慮と相手へのリスペクトが大切になると思います。
3.育児
女性には『妊娠・出産・授乳』という女性特有の能力があります。この部分をしっかりとサポートするのが父親の役割です。そしてその後の『子育て』に関しては、男性は全て女性と同じことができます。母親だから当然にできるものではありません。子育てを通じ、いろいろな経験や時には失敗をしながら学んでいくものなのです。この部分を『苦手』や『母親だからできる』などと思わず、夫婦二人で積極的に最初から、関わりを持って一緒に行ってほしいです。夫婦は二人でゆっくりと親になっていくものなのです。
一緒にやっていくポイントは初めて体験のタイミングで、話し合い、相談し、共に取り組むことです。新生児や赤ちゃんは日々成長していき、その都度、関わりや対応は大きく変化していきます。子育ての全てが初めての体験だらけなのです。その時にパパとママが一緒に考えながら、自分たちの子育ての形を作っていければいいと思います。『男性(女性)だから苦手』ではなく、一緒に考え、話し合っていきましょう。
これら3点の役割分担を、現在、未来という視点を加味しながら、自分たちらしいやり方を探してほしいと思います。多様性が認められる社会であるからこそ、その生き方はますます困難なものになっていきます。その多様性を大きな武器として、我が家らしい楽しい家族を作ってほしいと思います」(小崎恭弘さん)
家事・育児の分担は家庭ごとに合ったスタイルがあるはず。夫婦で話し合い、その都度、調整していくことが大切ですね。
(取材・文/メディア・ビュー 酒井範子)
小崎恭弘さん
PROFILE)
大阪教育大学附属天王寺小学校 校長。大阪教育大学教育学部教員養成課程家政教育講座教授。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。ファザーリングジャパン顧問。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をから「父親の育児支援」研究を始め、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて、父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修等で、講演会等を行うように。著書に『育児父さんの成長日誌』(朝日新聞社)、『パパぢから検定』(小学館)など。
※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※調査は2023年5月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです(有効回答数308人)
※記事の内容は2023年7月の情報で、現在と異なる場合があります。