実はこんなにあった!食品×薬のNGな飲み合わせ。健康食品やサプリも要注意【薬剤師】
薬を飲むときは、飲食物との相互作用に注意が必要です。よく口にする食品にも、薬との相性が悪いものはたくさんあります。薬の効果が弱まったり、逆に強化されたりする危険性があるため、飲み合わせへの理解を深めることが大切です。今回は、薬と食品の相互作用について薬剤師が解説します。
薬と食の相互作用とは
薬と食品の相互作用とは、摂取した食品中の成分が薬の作用に影響を与える現象のことです。食品成分が薬の吸収や代謝、排泄などの過程に影響を及ぼし、薬の血中濃度や作用時間などに変化が生じます。
その結果として薬の効果が強く出すぎたり、逆に弱まったりする可能性があります。予期せぬ副作用が生じる場合もあり、いずれのケースも注意が必要です。(※1)
薬と相性が悪い飲食物
日頃なにげなく摂取する飲食物のなかには、薬との相性が悪いものがあります。飲み合わせが悪い薬と食品の組み合わせや、同時摂取時に起こりうるリスクなどを解説します。
グレープフルーツ
一部の降圧薬などは、グレープフルーツとの相性が悪いことが知られています。グレープフルーツの果実だけでなく、グレープフルーツジュースも相互作用を起こすので注意が必要です。
グレープフルーツの成分が小腸の代謝酵素を阻害して薬が過剰に体内に吸収されてしまうため、効果が強くなったり副作用が出やすくなったりします。たとえば、降圧薬では血圧降下作用の増強により、低血圧やふらつきなどが起こるリスクが高まります。
スウィーティやボンタンなどの柑橘類も、同様の相互作用を起こす可能性があるため注意しましょう。薬と食品の飲み合わせについて、わからないことは薬剤師に相談してください。
青魚
青魚の摂取により、イソニアジドという抗結核薬の副作用が起こりやすくなる場合があります。
青魚に豊富なヒスチジンというアミノ酸は、体内で「ヒスタミン」に変化しますが、イソニアジドの影響でヒスタミンが過剰蓄積すると、頭痛や吐き気、かゆみ、顔面紅潮などの中毒症状が起きるのです。
カツオ、イワシ、サバ、まぐろなどの魚はヒスチジンを多く含むため、イソニアジドを服用している人は青魚を食べてもいいか、かかりつけの医師・薬剤師に確認しましょう。
アルコール
アルコールは睡眠薬や抗うつ薬、解熱鎮痛剤、風邪薬などさまざまな薬と相互作用を起こす可能性があります。
薬の鎮静効果がアルコールによって増強されたり、薬の吸収・代謝の過程で影響を受けて血中濃度が不安定になったりするため、副作用が出やすくなるのです。
お酒以外にもアルコールを含む食品は多く、チョコレートや栄養ドリンク、奈良漬などに含まれる場合もあるため注意しましょう。
カフェイン
一部の気管支拡張薬や胃酸分泌抑制薬などは、カフェインを含む食品と相性が良くないことが知られています。カフェインには中枢神経を刺激する働きがあり、これらの医薬品と一緒に摂取すると中枢神経への作用が強まって頭痛や吐き気などが生じる場合があるのです。
玉露、コーヒー、紅茶、栄養ドリンクなどはとくにカフェインの含有量が多いため、摂り過ぎには注意しましょう。
酸性が強いジュース
抗生物質のなかには酸に弱い種類のものがあり、酸性の強いジュースとの飲み合わせがよくありません。酸性度の高いジュースを飲むと胃酸の分泌が促され、薬が分解されて薬効が弱くなってしまうのです。
炭酸飲料、乳酸菌飲料、スポーツ飲料、果汁飲料など、子どもの好む飲み物のなかには酸性が強いものがたくさんあります。
予期せぬ相互作用を避けるため、薬を服用するときは水やぬるま湯で飲むように徹底しましょう。
薬と相性が悪い健康食品
健康食品のなかにも、薬との飲み合わせに注意が必要なものがあります。ふだん飲んでいる薬がある人は健康食品を購入する前に注意事項を確認し、不明点は薬剤師や登録販売者に問い合わせましょう。
セント・ジョーンズ・ワート(ハーブ)
セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)は気持ちをリラックスさせる効果を謳った健康食品に使用されるハーブですが、さまざまな薬と相互作用を起こすことが知られています。
飲み合わせの悪い薬は気管支拡張薬や抗うつ薬、経口避妊薬、抗てんかん薬、抗不整脈薬など多岐にわたり、併用すると薬の血中濃度が低下して薬効が減弱します。
セント・ジョーンズ・ワートは、摂取中止後もしばらくは薬への影響が残るため注意が必要です。ふだんからセント・ジョーンズ・ワートを摂取している人は、薬を服用する前に必ず医師・薬剤師に飲み合わせを確認しましょう。
イチョウ葉エキス
イチョウ葉エキスは記憶力や認知機能維持のサポートを目的とした健康食品に含まれる成分ですが、ワルファリンやアスピリンなどの血をサラサラにする薬を服用している人は注意が必要です。
イチョウ葉エキスは抗血栓作用があるため、これらの薬の作用を増強して内出血などの副作用を起こしやすくするとされています。
そのほかにも、イチョウ葉エキスの血管拡張作用により降圧薬の血圧降下作用が強まったり、一部の胃酸分泌抑制薬の血中濃度を下げたりする可能性があります。
特定保健用食品
特定保健用食品(トクホ)はからだの機能に影響を与える成分を一定量含む食品であるため、薬との併用にはとくに注意しなければなりません。
たとえば、血圧が高めの人に向けたトクホは降圧薬と併用すると血圧が下がり過ぎる可能性があり、一部利尿薬やカリウム製剤と併用した際には血中のカリウム濃度が上昇するおそれがあります。
血糖値が気になる人用のトクホを糖尿病薬と併用すると、血糖降下作用の増強によって低血糖になったり、腸でガスが発生して腹部膨満感が生じたりするケースが知られています。
薬を安全に服用するためにも、トクホを摂取する際には医師・薬剤師に飲み合わせを確認してください。
薬との相性が悪いサプリメント
栄養を補うためにビタミンなどのサプリメントを飲んでいる人は多いですが、薬との相性には注意しましょう。飲み合わせが悪いと、薬に悪影響を及ぼす場合があります。
葉酸
葉酸のサプリは、抗リウマチ薬のメトトレキサートや一部の抗がん剤などと相互作用を起こすことが知られています。
たとえば、メトトレキサートと併用すると薬効が弱まりますが、副作用を軽減する目的であえて葉酸製剤が処方されるケースもあります。葉酸の服用量は主治医によって厳密に管理されるものであり、自己判断で葉酸サプリを追加するのは厳禁です。(※2)
カルシウム
テトラサイクリン系やニューキノロン系と呼ばれる抗生物質は、カルシウムと相互作用を起こします。カルシウムと薬の成分が結合して薬の吸収が阻害されて薬効を減弱させてしまうため、併用の際は時間をずらすなどの注意が必要です。
大量の牛乳や乳製品を摂取した場合も、食品中のカルシウムとセフェム系の抗生物質などで相互作用が生じる場合があります。胃の中でカルシウムと抗生物質が混ざり合うことのないよう、牛乳などを飲む場合には2時間以上間隔を開ける必要があります。
ビタミンA
ビタミンAは角化症治療剤のエトレチナートや、白血病治療薬のトレチノインとは併用できません。これらの薬はビタミンAに類似した作用を示すため、万が一併用するとビタミンA過剰症のような副作用が出現するのです。
通常、これらの薬が処方される際には医師・薬剤師からビタミンAとの併用ができないことを十分に説明されます。不明点は必ず医師・薬剤師に質問しましょう。
ビタミンK
血液凝固阻害薬のワルファリンを服用している人は、ビタミンKのサプリを併用してはいけません。ワルファリンはビタミンKの作用を阻害して血を固まりにくくする薬であるため、ビタミンKを摂取するとワルファリンの効果が弱まってしまうのです。
サプリだけでなく、ビタミンKを多く含む納豆、青汁、クロレラなどの飲食も避ける必要があります。
薬は正しく活用しよう
相互作用を避けて薬を安全に服用するためには、病院・薬局・ドラッグストアなどで薬を手に入れる際、現在服用中の薬や健康食品の内容を適切に伝えることが大切です。
また、食べたものが薬に影響を及ぼさないよう、指示どおりのタイミングで薬を服用することも欠かせません。「食前」は食事の30分〜1時間以内、「食後」は食事後30分以内、「食間」は前の食事の約2時間後、「就寝前」は寝る30分〜1時間前を意味します。用法用量を正しく理解してから服用しましょう。
薬と食の相互作用にはさまざまなものがあり、一般の人がすべてを把握するのは難しいという側面があります。そのため、お薬手帳や薬品情報提供書を活用して薬剤師に相互作用を確認してもらうことをおすすめします。
●記事の内容は2023年12月の情報で、現在と異なる場合があります。
PROFILE
あんしん漢方薬剤師
山形 ゆかり
薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ入り、牛角・吉野家他薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信するMedical Health -メディヘルス-Youtubeチャンネルで簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=211332f2tmhy00010054
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