再びがんが見つかったちーちゃん。治療できるタイミングは今しかない…!応援してくれた人たちの想いがイタリアでの治療の後押しに【体験談】
神経芽腫の再発が見られたちーちゃん(久保田ちひろちゃん)の命を救うため、イタリアの小児病院の治療を決めた久保田さんご夫妻。しかしその治療には、一般家庭では捻出するのが難しいくらいの費用がかかります。パパ将さん、ママ祐香子さんの新たな闘いが始まりました。
4,000万円と聞いていた治療費も蓋を開けてみたら5,000万円。渡航費や滞在費を合わせると最低でも6,000万円以上は必要であることがわかりました。しかし、二人の想いが親戚、友人、知人、マスコミをも動かし、クラウドファンディング開設10日という短期間で、目標額を大きく超える8,800万円が集まりました。
後編では、再発したちーちゃんを救うためにイタリアでの治療を決めたパパ、ママの想い。そして治療費を捻出するために奔走したご夫妻の想いをお聞きします。
治療のタイミングは今しかない。そのために必要な治療費を集める
「実はイタリアでの治療にかかる費用は銀行から借りるつもりでした。
でもどこに申し込んでも、家のローンが残っていたため審査は通りませんでした。お金がたまった1年後に治療を受ければいいじゃないかと思われるかもしれませんが、転移場所が1カ所、コントロールできている、そして臨床試験が実施されている今のタイミングを逃すわけにはいかないんです。だから1カ月後の治療に合わせて費用を集めることが、僕たちの目標でした。家の売却査定もしてもらいましたが、治療開始前に全額を支払うことが条件なので待っている時間はありませんでした」(将さん)
この治療は、最初にちひろちゃんの細胞を採取、1カ月〜1カ月半後に遺伝子操作したちひろちゃんの細胞を体内に戻すというもの。そして治療後3年間は3カ月に1度ずつ、経過観察のためイタリアに渡り診察を受けることになります。イタリアでの治療が始まるまでも日本にいる間は、がん細胞が増えないよう抗がん剤治療を続ける必要があるのだそうです。
ちーちゃんの病気や治療のタイミングなど現状を知らせることに全力を注ぐ
そこでたどり着いたのがクラウドファンディングでした。しかし現状では日本のクラウドファンディングで個人の病気の治療費を集めることはできないという現実を知らされます。
「そこでアメリカの“GoFundMe(ゴーファンドミー)”というクラウドファンディングのプラットフォームをアメリカに赴任しているいとこの名義で立ち上げました。しかし日本にいる友人、知人が寄付するにはハードルが高過ぎると、もう一度探して見つけたのが“For Good!”です」(祐香子さん)
ちーちゃんが入院中は、久保田さん夫妻は名古屋にある病気の子どもと家族のための滞在施設であるマクドナルド・ハウスで生活しています。昼間は、両親ともにリモートワークで仕事をしながら、ちひろちゃんに付き添っています。
「支援を集めるためには、ちひろの病状や海外の情報などを正確に伝える必要があります。その点を理解していただける構成になるよう意識しました」(将さん)
二人は病院から戻ったあと、みんなが寝静まったマクドナルドハウスで、クラウドファンディングのための準備を進めました。
「やらなければならないことが山積みだったため、連日午前3時、4時まで作業をしていました。そろそろ寝ないと仕事に影響してしまうと言って寝るというような毎日でした」(将さん
10日で目標額を達成。周りに助けられた私たちがすべきことは
クラウドファンディングと並行して、友人に協力してもらいながら、非営利団体である「ちーちゃんを救う会」も立ち上げました。そして2023年12月15日に“For Good!”に募金ページを公開したところ、10日という短期間で目標を大きく上回る8,800万円という支援が集まりました。
「友人や知人、同僚、親戚など身近な人が次々とシェアしてくれました。友人、そのまた友人と、たくさんの人が自分のことのように動いてくれ、本当にありがたかったです。テレビ番組や新聞の掲載記事を見て、協力してくださったかたもたくさんいらっしゃいました」(将さん)
「友人や同僚、上司など、周りの人に恵まれて今があるのだと、感謝しています」(祐香子さん)
「病院にはイタリア語を英語に訳してくれる通訳さんはいると聞いているのですが、イタリア語も英語もわからないので、親戚があちらに住んでいるお友達を紹介してくれることになっています」(祐香子さん)
「治療を受けるだけでなく、周りの人に助けられてこうしてイタリアに行けるのですから、この時間をどうやって自分たちの糧にできるのか、何をすべきなのかを考えています。ちょっと気を抜くと『怖さ』が勝ってしまいますから、良い方向で自分のモチベーションを保っていければと思っています」(祐香子さん)
イタリアの担当医師からは、「これまで臨床試験を受けた27人に大きな合併症は見られなかったけれど、28人目では起きるかもしれない。治療は自己責任」と言われているそうです。希望はあるとはいえ臨床試験であることには変わりないのです。
それまで淡々と話をしていた将さんが言いました。
「ちひろの病気がわかってからこれまで、何度もボロボロ泣いて、何度も膝から崩れ落ちそうな想いも経験しました。でもちひろが少しずつ元気になっていく姿を見られたから今日までがんばってこられました」
取材に同席してくれたちーちゃん。「イタリアでは『ボンジョルノ!』ってあいさつするんだよ」と教えてくれました。そして2024年1月。この記事が公開される頃には、ちーちゃんは祐香子さんとイタリアに渡って治療を開始しているはずです。
将さん、祐香子さん、そしてちーちゃんをたくさんの人が応援しています。そしてきっとこの困難を家族三人で乗り越えていける日が来ることを信じています。
お話・写真提供 / 久保田将、祐香子さん 取材・文 / 米谷美恵、たまひよONLINE編集部
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年1月の情報で、現在と異なる場合があります。
久保田ちひろさんプロフィール
名前 : 久保田 ちひろ
生年月日 : 2014年5月19日
習い事 : 習字 ピアノ 日本舞踊
好きな食べ物 : 生のニンジンとイチゴ
好きな芸能人 : YOASOBI NiziU
好きなYoutuber : フィッシャーズ ヒカキン からぴち ドズル社
〈治療の経過〉
2018年 1月 3歳 8ヶ月 副腎原発の神経芽腫の診断
2018年 5月 4歳 0ヶ月 名古屋大学医学部附属病院転院
2018年10月 4歳 5ヶ月 右副腎全摘出
2019年 1月 4歳 8ヶ月 金沢大学医学部附属病院転院
2019年 3月 4歳10ヶ月 131 I-MIBG内照射
2019年 3月 4歳10ヶ月 大量化学療法、自家造血幹細胞移植
2019年 5月 5歳 0ヶ月 名古屋大学医学部附属病院転院
2019年 7月 5歳 2ヶ月 KIRリガンド不一致同種臍帯血移植
2019年 9月 5歳 4ヶ月 陽子線照射
2019年11月 5歳 6ヶ月 退院、レチノイン酸内服
2023年 8月 9歳 3ヶ月 第9番ろっ骨に再発(局所)
2023年 9月 9歳 4ヶ月 名古屋大学医学部附属病院転院
2023年12月 9歳 7ヶ月 放射線照射
2024年 1月 9歳 8ヶ月 渡欧予定
※2024年1月現在、目標金額を達成したため、クラウドファンディングは終了しています。