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子どもと医療をつなぐ、CLSのお仕事を知っていますか?

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大人でもつらい入院や病気・けがの治療…。痛い注射や服薬、検査におびえて泣いてしまうなど、子どもにとって医療とのかかわりは、大人よりもずっと理解が難しいものです。とくに入院などで治療が長引くほど、肉体的な負担に加えて、精神的な負担は大きくなります。

そんな医療下にある子どもの不安や恐怖を最小限にして、子どもが自分から主体的に治療に取り組めるように支援するのが、CLS(チャイルド・ライフ・スペシャリスト)という専門職です。

アメリカでは、小児患者15人に1人配置されることが望ましいとされているCLSですが、日本ではまだ全国で41名(2017年12月時点)と貴重な存在。そんなCLSの1人で、済生会横浜市東部病院の小児科に勤める井上絵未さんに、CLSについて詳しく伺いました。

「知らない」ことは怖いこと

――CLSは、日本ではあまり知られていない職種ですが、どんな役割があるのでしょうか。

CLSは現在、日本で資格を取ることができません。私も日本の大学で社会福祉を学んだあとに、アメリカに2年間留学して資格を取りました。当時は、日本のCLSは10人未満。最近、ようやく小児医療の業界では少し知られてきたように思います。

CLSの仕事は、子どもが自分の治療や家族の病気に対して、自分の力を発揮できるようサポートすることです。医療に対する不安・恐怖・緊張・疑問などに対処し、安心感や自己肯定感を得て、能動的に医療にかかわれるようサポートします。CLSの主なかかわりは、子どもと「遊ぶ」、医療への不安や孤独感、家族を「支える」、復学支援などの環境を「整える」の3つに分けられます。

――具体的には、どのような活動をしているのでしょうか。

わかりやすい活動の一つが、子どもが自分の治療や病気を理解するようサポートすることです。大人でも、知らないこと・よくわからないことは怖いですよね。大人には理解できる採血でも、何もわからない子どもにとっては怖いもの。押さえつけてやってしまうことも多いと思いますが、検査が定期的に必要な病気の場合、何度も押さえつけていては負担が大きすぎます。

そこで私は、入院中の子どもたちとよく「お医者さんごっこ」で遊びます。お医者さんごっこの効果は2つあって、まずは自分が絶対に痛い思いをしないとわかった状態で遊びながら、医療に触れられること。それから、先生側の気持ちを体験できることです。そうすると、「バタバタ動くとやりにくいね」とか、子どもながらに理解してくれて、泣いちゃうけれどじっとしていられるようになったりするんですよ。子どもながらに、「頑張りたい」という思いはあるので、気持ちが整うまで待ったり、その子に合った方法を試行錯誤して探すこともよくあります。

――小児科の患者さん0~15才と幅広いですが、発達によって対応方法はどのように変わるのでしょうか?

子どもの発達に合わせたケアをするために、CLSは児童発達心理学を学んでいます。たとえば3~5才ぐらいの幼児期は、目の前のことで精いっぱいの時期。このころはまだ、直接目で見ることのできない自分の病気や、体の中で起こっていることをとらえるのは難しいです。だからその時々の治療には耐えられても、ママと離れるのは耐えられないこともあります。一方で、思春期のお子さんは、自分の病気の認識が持てることが多いものの、治療による生活の変化や外見の変化などに大きな苦痛を感じる時期。こうした年齢や発達に応じて、アプローチ方法は大きく変わります。

小児科だけじゃない、CLSが活躍する場所

――一方で、子どもだけでなくママ・パパ、きょうだいが病気になった場合のサポートもするそうですね。

そうなんです。CLSは医療にかかわる子どもと家族のサポーターです。ママやパパが入院した場合、そのお子さんの生活は一変することが多いですよね。そういうケースでは、小児科以外の病棟に呼ばれてサポートすることもあります。また患者さんにきょうだいがいると、ママやパパは病気のお子さんにかかりっきりになってしまうことも多いです。そういったケースでは、きょうだいのケアをすることもあります。

――ママやパパが入院した場合、子どもにどんな声かけをするのがいいのでしょうか。

子どもはだれでも役割を見つけてあげることが大切です。お子さんに「ママは元気になるために頑張るけど、あなたはいつも通り生活してね」と言っておくなど、無理に頑張らなくていいということを伝えてあげるだけで、安心することもあります。心配をかけたくなくて、病状などについてうそをついてしまいたくなることもありますが、つじつまを合わせるためにどんどんうそが重なってしまうので、正直に伝えたほうがいいと思っています。

医療は元気になるためのアプローチ

――子どもの病気や医療とのかかわり方に苦労するママは多いと思います。何かアドバイスはありますか?

ぜひお願いしたいのは、「医療は嫌なもの」というイメージを持たないようにすることです。たしかに、病気やけがの治療は痛いことやつらいことも多いと思います。でも、どれも「元気になるため」にすること。パパやママには、「悪い子だと注射するよ!」と医療を罰に使うのは、絶対にやめてほしいです。

それから、お子さんが予防接種などを受けるときに、よく「泣かずに頑張った」というのをゴールにしがちですよね。でも、「泣かない」ってハードルが高いんです。たとえ泣いてしまっても「病院まで来られたね」とか、「動かずに注射できたね」と、できたことをほめてあげてください。

――入院となると、ママやパパもどうしても暗い気持ちになってしまいますよね。

もし、お子さんが入院するようなことがあったら、ママ・パパが安心して病院と信頼関係を築いてください。親が安心していると、やっぱり子どもにも伝わるし、子どもの力を信じてあげると、子どもは応えようと頑張ってくれますから。おすすめはお医者さんごっこです。医療に対してポジティブなイメージを持つためにも、ぜひ家庭の遊びで取り入れてほしいですね。

子どもたちが治療に取り組みつつも、十分に遊べるようにするのもCLSの役割だそう。今回、撮影に協力してくれたくうちゃん(4才)は、代謝異常の珍しい病気で1カ月ほど入院中です。しかし、「お友だち」と呼ぶ井上さんと楽しそうに遊ぶくうちゃんの姿は、闘病中というよりも普段の生活の場所が病院内になったという感じで、CLSの必要性を実感しました。

アメリカでは、小児科学会が「小児医療に不可欠な存在」と高く評価するなど、広く認知が進むCLS。残念ながら日本では、保険点数がつかない(小児がん拠点病院には補助金が支給される)こともあり、なかなか導入する病院が増えないそうです。ママ・パパ、そして病気と闘う子どもたちのためにも、CLSの活動場所が広がることを願います。(取材・文/ひよこクラブ編集部)

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