【防災の専門家監修】あなたの「防災ポーチ」を作って! 育児中ファミリーが地震の備えに用意しておきたいもの
2011年3月11日に発生した東日本大震災から、13年がたちます。2024年の元旦に発生した能登半島地震の被災地では、いまだ日常が戻らない人たちがたくさんいます。赤ちゃんのいる家族が避難生活を送る場合、どんなグッズが必要なのでしょうか?
25年以上地震の研究をしている防災の専門家、清永奈穂先生に「子連れファミリーが用意しておきたいもの・被災時にないと困る意外なもの」を聞きました。
外出時に被災するケースも。できるだけ「いつも持っていたいもの」は確認して携帯を
――能登半島地震のあと、SNSなどで「防災ポーチ作り」の投稿が話題になりました。
清永先生(以下敬称略) 日本は世界でもっとも地震発生率の高い国の一つ。いざというときのために自分なりに必要なグッズをまとめた「防災ポーチ」を持ち歩くのはとてもいいと思います。定期的に中身を見直して、必要なものを入れ替えるといいでしょう。
赤ちゃんと一緒に外出しているときに被災したら、そのときに持っている「お世話グッズ」がそのまま「防災ポーチ」に相当します。
・紙おむつ・おしりふき
・抱っこひも
・ストールなど大判の布(薄手のバスタオルなどでもOK。授乳ケープやおむつ替えの敷物に)
・赤ちゃん用&大人用の最低限の水分と食べ物(ベビーフード1食分や、すぐ食べられる個包装のおやつ、大人用はゼリー飲料など)
などは、外出時のお世話のことだけでなく、防災のことも考えて準備し、いつも持ち歩くといいでしょう。
それに加えて、
・止血パッド(ばんそうこう)
・携帯ポンチョ(寒さ対策や雨具として)
・小銭(テレフォンカード)
・携帯用充電器(乾電池式だと、停電中も乾電池があれば複数回充電できて便利)
・大人用のマスクや携帯トイレ
などがあると、万が一の災害時に役立つでしょう。
普段はあまり持ち歩いていなくて、意外に困ることが多いのが小銭やテレフォンカード。大きな災害のときは通話料なしで公衆電話が使えることもありますが、それほどではないときに家族と連絡が取れなくて困ることがあります。最近は公衆電話も少なくなっていますが、いざというときに使えるように小銭やテレフォンカードを準備しておくといいでしょう。
地震後は停電などの影響で、お店でカード決済ができない場合も。買い物のためにも、ある程度現金があるといいです。
スマホが壊れたとき・電源がきれてしまったときのために、家族の電話番号は覚えておくか、紙に書いて、「防災ポーチ」に入れておくといいですね。災害時に家族との連絡手段をどうするか相談し、災害用伝言ダイヤルなどの使い方も確認しておきましょう。
被災後は「在宅避難」が基本。必要な物資は自宅備蓄を
――災害に備えて自宅に用意しておきたいのは、どんなものでしょうか?
清永 大きな地震のあとでも、自宅の被害がさほど大きくなければ、「在宅避難」を推奨している自治体が多いです。水や食料などの配給はすぐにはきません。自宅で少なくとも3日、できれば1週間過ごせるよう、必要な物資を備蓄しておきましょう。
忘れると災害時に困ることになるのがトイレの備え。断水時には水洗トイレが流れなくなります。災害用トイレまたは、その代わりとなる高吸水性ポリマーとゴミ袋などを用意しておくといいでしょう。
私が地震の被災者から「なくて困った」という声をよく聞くのが、乾電池です。今はいろいろなものが充電式になっているので、乾電池を使う機会が減っていて、自宅にストックしていないという人もいるかもしれません。ただ、停電が長引くときに、乾電池があると便利な場面はたくさんあります。できれば、いろいろなサイズの乾電池をストックしておくといいでしょう。
赤ちゃんがいる家庭ではこれに加えて、液体ミルク、ベビー用飲料、ベビーフード、紙おむつ・おしりふきなどを備蓄しておきましょう。毎日使うお世話グッズは「ローリングストック」で備えておくのも手です。紙おむつが残り数枚になってから買いたすよりも、日ごろから少し多めに買い置き(ストック)しておいて、使用したら買いたして回転させていく(ローリング)という考え方です。とくにおしりふきは、赤ちゃんのおしりをふくという用途だけでなく、なかなかおふろに入れないときなどに家族の体をふくのにも使えて避難生活でマルチに役立ちます。育児中でなかったとしても、災害に備えて用意しておきたいアイテム。育児中のファミリーはぜひローリングストックで備えておくといいでしょう。
避難所での生活に、意外に便利なのが「ウエスト部分用のゴム」
――地震で自宅が被害にあって、数日間避難所で過ごすことになった場合、少しでも快適に過ごすコツはありますか?
清永 子連れの場合、子どもが好きな遊びができるといいですね。トランプやカードゲームのような音が出にくいもの、一つのツールでいくつか遊びができるもの、かさばらないもの(あやとり、シール帳、ぬり絵など)があるといいでしょう。長時間電車に乗るときに持っていくと役立つおもちゃを思い浮かべるといいと思います。
そのほかのものも、旅行やアウトドアに出かけるときに役立つものをイメージするとわかりやすいでしょう。たとえば避難所では周囲の音が気になることがあるので、質のいい耳せんがあるといいです。また、好きな香りを感じられるものを持っていくのもおすすめ。周囲の邪魔にならない範囲内で、エッセンシャルオイルをタオルやハンカチにしみこませるといいでしょう。好みによりますが、オレンジなどの柑橘系の香りはリフレッシュしやすく、周囲にもあまり嫌われないと思います。
大きな布(ふろしきやガーゼケットなど)は、防寒にも役立ちますし、敷物や授乳ケープとしても使えて、育児中は何かと役立ちます。
もしものときのために、防犯ブザーもあったほうがいいでしょう。
また、意外に役立つのが、衣類用ゴム(パジャマなどのウエスト部分用ゴム)。配給の服はサイズが合わないことが多いです。とくに子ども服は、サイズぴったりのものを手に入れるのが難しいので、衣類用ゴムなどでウエストを調節できるといいでしょう。
地震の備えは定期的に見直すことが大切
――万が一の災害に備えて、これからいろいろな準備をしたいというママ・パパにメッセージをお願いします
清永 防災のために何を備蓄しておくべきか、どんなものを非常持ち出し袋に入れておくといいのかは、赤ちゃんの月齢や家族の状況によって異なります。家族で相談しながら準備し、定期的に見直すことが大切です。
食料や飲料水の消費期限だけでなく、そのほかのアイテムの使用期限も確認しましょう。
ないと困るものは、家の中に分散して用意しておくと安心です。自家用車がある場合、車の中にも置いておくといいでしょう。とくに子どもがまだ歩けない年齢の場合、避難時には抱っこひもが必須アイテムに! できればいつもそばに置いておくといいでしょう。
取材・文/たまひよONLINE編集部
赤ちゃんが生まれると毎日のお世話に追われ、いざというときの準備にまで気が回らないというママ・パパもいるかもしれません。ただ、もしも被災したときには、備えがあるとないでは大きな違いが出るでしょう。まずは防災について、家族で話し合うことからスタートを。地震が起きたらどうするかシミュレーションしながら必要なアイテムを用意するといいでしょう。
●記事の内容は、2024年3月の情報で現在と異なる場合があります。
『おおじしん、さがして、はしって、まもるんだ: 子どもの身をまもるための本』
子どもが1人のときに大地震が来たら、子どもはどのように自分の身を守ればいいかを、親子で読んで学べる絵本。練習方法や、日ごろから親子でやっておきたいことも。清永奈穂 文・監修 石塚ワカメ 絵/1430円(岩崎書店)