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家庭での「性教育」。いつからどう伝えていけばいい?【「0歳からの性教育」実践の助産師に聞く】

更新

新生児の息子を保育園で慰める母
monkeybusinessimages/gettyimages

今回のテーマは「性教育」についてです。
「たまひよ」アプリユーザーに聞いた声をご紹介するとともに、0歳からの性教育の大切さについて発信している助産師の岸本志織さんにお話をお聞きしました。

性教育の必要性を感じているものの、いつからどうすればいいのか…

最初にみんなの声から紹介します。

Q:あなたはお子さんへの「性教育」に関心がありますか?また、すでに何らかの形で「性教育」を行っていますか?

関心がある・行っている 69.7%
関心はない・行っていない 20.7%
その他 9.6%

多くの人が関心を持っていますね。ここからは、実際に家庭で実践している「性教育」やその悩みを紹介します。

「関心はありますが、まだ行っていません。適切な時期など難しいように感じています」(くーさん)

「性教育ということの前に、体の作りが違うことや力のあるなしなどを教えたいと思います。そこで体の性が明らかに違うことがわかれば、異性に優しく接することができると考えています」(KUBU)

「自分のからだ、相手のからだを大切にすることを伝えたい」(あみかか)

「デリケートゾーンと言われる、水着で隠れるところは見たり触ったりしてはいけないし見せたりしてもいけない、ということは絶対教えたい」(てーな)

「無闇に他人に触らせてはいけない体の部位があるということ、なぜ触らせてはいけないのか、触られた場合の行動などを教えたい。教える際は真剣な雰囲気で伝え、大切なことだと意識させたい」(すーちゃん)

「『赤ちゃんはどこからくるの?』という絵本を我が家の姉妹が6歳と7歳のときに意を決して読みました。幼い頃の方が変な先入観なく、すっと受け入れてもらえると思ったからです。
そのときは『ふーん。そうなんだ!』という感じでしたが、10歳・11歳になった今、絵本の内容を忘れているようで、どうして赤ちゃんがママのお腹にきたのかよくわかってなさそうです。絵本はいつでも見られるように子どもの本棚にありますが、逆に今読んだら引かれるんじゃないかとドキドキしています」(sakura)

「子どもは男の子のため、避妊についてはしっかりと伝えたい」(ふみ)

「下着で隠す部分は他人に決して見せたり触れさせたりしてはいけないこと、他人はむやみに見たり触ろうとしてこないこと、性別に関係なく性犯罪に巻き込まれる危険性があることなどは伝えたい。もしも何かあったときに少しでも嫌だと思ったなら、すぐに親に言える関係性を構築していきたいと思う」(K)

「男の子と女の子で体の作りが違うことや、プライベートゾーンの扱い方などをきちんと教えるべきだとは思いますが、どうやって、またいつ頃から教えればいいのかが全くわかりません」(あんず)

「我が子が生まれたときから実践できる性教育はたくさんある」と助産師 岸本さん

それではここからは、実際に助産師として性教育を実践している岸本志織さんに、アドバイスをいただきましょう。

「『性教育』。
みなさんはこの言葉を聞いて、何をイメージしますか? 

多くの方は、生理のこと、避妊、妊娠のしくみなどなど、男女の生殖に関することが頭に浮かぶかもしれません。そして、我が子に伝える際は、望まない妊娠を防ぎたい、性犯罪の被害者または加害者になってほしくないーーこういったネガティブな側面を背景に持ちつつ、親も大きな勇気をふり絞って『苦手なことだけど、よし、気合をいれて言うぞ…!』といった、ハードルの高いもののように感じている方が多いことかと思います。

私は『0歳からの性教育』というタイトルで、親御さん向けに講座を行っています。
『性教育っていつから始めればいいの?』という問いに対しては、『生まれたときからできることがたくさんあるんだよ!』とお伝えしています。

というのも、今の子どもたちが学んでいる性教育は『包括的性教育』と呼ばれるもの。これは、従来の私たち親世代が受けてきた性教育の考え方とはちょっと異なります。UNESCO(国際連動教育文化機関)が作成した『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』に基づくもので、世界中の子どもたちが、それをスタンダードとして性教育を学んでいるのです。

人間関係・人権・幸福・ジェンダー・多様性…などなど、人が社会の中で個性を活かし、幸せに生きるために必要な項目が多く含まれ、いわゆる『性と生殖』に関する内容は、『包括的性教育』のガイダンスの後半にやっと登場します。
そして、この『包括的性教育』は4、5歳から開始し、段階を経ながら高校生まで継続して行っていくものと言われています。

『え?年中さん?』と驚く方もいるでしょうし、『そんな子たちが学ぼうとしていることを果たして大人は知ってるのか?まずは大人が知っておく必要があるよね…』というのが、実は私が『0歳からの性教育』のタイトルに込めた意味となります。

幼児期の子どもたちにとことん伝えていきたいのが、『私の身体と心は、私だけの大切なもの』本当にこの感覚が何よりも重要で、すべての根っことなります。

おむつ替えのとき、お風呂で身体を洗うときなど、日頃お世話をしていると、どうしても無意識に流れ作業になりがちです。そんな日常のちょっとした場面でも『〇〇ちゃんのおしり拭くね~』なんて一言かける、こんなことを継続できたら、これも立派な性教育の一つです。

『自分の身体と心を大切にする』。ここの土台をしっかり作った上で、『相手のことも大切にする』→『みんな違ってみんないいよね』という風にステップアップしていくのが、乳幼児期の目標の一つです。

おうちでできる『性教育』って、声掛けや言葉遣いの工夫、何より親が性教育をどう捉えているのかから始まるのです。

『性教育』とは、『子どもたちが自分らしく生きるための知識とスキル』だと私は考えます。性を健康的なものとして、よりハッピーに、より肯定的に伝えていくことができたら、子どもたちの未来は大きく変わると信じています。

ちなみにですが『包括的性教育』の効果の一つとして、『初体験の年齢が遅くなる』『性的パートナーが減る』といったものがあります。みなさん、これを聞くと俄然やる気を出してくださいます(笑)。

今、『包括的性教育』を取り扱った絵本や本が多く出されています。世の中でも『性教育』に関する情報が目立つようになってきました。
これらをうまく活用していただきたいと思うのですが、その前にぜひ立ち止まって考えてほしいことがあります。

伝える側である自分自身が、まずは『性教育』に対してどう思っているのか、どういうことを我が子に伝えていきたいのかといったところを、明確にすること。
その上で、『自分が心地よく伝えられることってなんだろう?』と考えてみてください。

『性教育』は決して母親一人で完結すべきものではありません。父親も巻き込んで一緒に伝えていくことも重要ですし、『ポジティブに言うべきだとはわかっているんだけど、やっぱり苦手で…』なんて場合は、『性教育』を得意とした地域の助産師を頼ってみたり、絵本を一緒に読んでみたりと、いろいろな方法があります。

この記事を読んで、一人でも多くの方が、『包括的性教育ってなんだろう?』と興味を持ってくれたり、『なんだ! そんなことから始められるのか!』と、『性教育』に対するハードルが低くなってくれたらとても嬉しいです」(岸本志織さん)

岸本さんが性教育の目標の一つとして教えてくれた、「自分の身体と心を大切にする。そして相手のことも大切にする」。これらは普通に生活する上でも大事な基本ではないでしょうか。幼い頃からできる方法はたくさんあるそうなので、ぜひ日常に取り入れていきたいですね。
(取材・文/橋本真理子、たまひよONLINE編集部)

岸本志織さん

岸本志織さん

PROFILE)
助産院fillme代表(出張訪問/オンライン型)。母乳外来や育児相談のほか、ベビーマッサージ、タッチケア、性教育などにも力を入れている。「自己受容できる子どもたちで溢れた社会」にすべく、まずはママや女性がご機嫌でいられるようなサポートを大切に、家族の暮らしごとに寄り添う地域助産院を目指している。

※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※記事の内容は2024年8月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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