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超低出生体重児の双子と長女をワンオペで育てながら感じた、不安と孤独。救われたのは同じ境遇のママたちとの出会い【体験談】

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麻由さんは「不安はつきず、疲労もありましたが、ザ・双子な姿に癒され頑張れた」と言います。

茨城県に住む大貫麻由さんは2022年1月、妊娠25週のときに双子の柚日(ゆうひ)ちゃんと杏奈(あんな)ちゃんを出産しました。茨城県には当時、低出生体重児の家族が集まり情報交換などをする「リトルベビーサークル」がなかったことから、麻由さんがサークルの設立を決意。茨城県で配布される、母子健康手帳のサブブックの「リトルベビーハンドブック」の改訂版の制作に携わります。麻由さんに、産後の思いや双子の成長の様子について聞きました。
全2回のインタビューの2回目です。

長女と双子の子育てで、孤独を感じた日々

もともとの出産予定日の前日の柚日ちゃん。ようやくチューブがはずれ何もついていないお顔が見られました。

2022年1月、予定より約3カ月半早い妊娠25週で、双子を出産した麻由さん。二女の柚日(ゆうひ)ちゃんは714g、三女の杏奈(あんな)ちゃんは760gで生まれました。柚日ちゃんは生後9日で動脈管開存症の手術を受けましたが、その後は2人とも少しずつ成長し、生後3カ月半ごろの5月上旬に退院。体重は約2500gになっていました。

「退院前のMRI検査では、柚日はグレード2の脳室内出血、杏奈は左上衣下(じょういか)出血があったとわかりました。でも後遺症などはほぼ問題ないようで、幸いなことに在宅医療は必要なく、服用しなくてはならない薬もなく2人一緒に退院することができました。

退院してうれしいのはもちろんでしたが、つい最近までモニターでの心拍数や呼吸の管理があったのに、自宅で私1人が2人の命を見られるのかな、急に何かあったらどうしよう、と不安も大きかったです。
おまけに退院したその日の夜は夫が夜勤で不在。2歳を過ぎた長女と、私と柚日と杏奈4人で寝ましたが、夜中に双子が泣いたら長女も泣いて起きてしまって、そこから2~3時間は3人とも泣きっぱなしに。私1人ではもう無理だと思い、夫に連絡をして帰ってきてもらいました。私が双子に授乳している間に、夫に長女を寝かしつけてもらって、なんとか静まりましたが、前途多難だな・・・と感じたできごとでした」(麻由さん)

夫の功さんの仕事は早朝から深夜までと忙しく、事情があって夫婦のそれぞれの両親にも頼れない状況で、麻由さんは2歳の長女と小さく生まれた双子のお世話をたった1人でこなす日々でした。

「柚日と杏奈が退院してしばらくは毎日があわただしすぎて、何があったかあんまり思い出せません。退院して1カ月を過ぎたころから、3人を連れての外出にチャレンジしてみたものの、大変すぎて・・・数カ月間、通院以外はほとんど自宅で過ごしていたと思います。

夏過ぎから、2歳半だった長女はプレ幼稚園へ通えるようになりましたが、それでも毎日は大変でした。行政のサポートを調べてもみたけれど、外出すらままならないのに役所の窓口に申請に行くことなんてとてもできないし、夫以外の人に相談することもできず・・・、孤独を感じていました」(麻由さん)

2歳半になった双子たちの成長は・・・

退院して約1週間ごろの柚日ちゃんと杏奈ちゃん。お家での生活に慣れてきました。

柚日ちゃんと杏奈ちゃんは、身長や体重や発達の診察と、RSウィルス感染症予防のためのシナジス注射のために月1回こども病院へ通いました。麻由さんは2人の成長について「身長・体重の伸びと呼吸器系が弱いことが心配」と言います。

「2人とも身長・体重の伸びがあまりよくありません。とくに柚日は現在も修正月齢(もともとの出産予定日から換算する月齢)2歳3カ月で見ても成長曲線には届きません。

また、早産児は肺が未発達で生まれるため、呼吸器系の病気にかかりやすいそうです。杏奈はぜんそくの発作で一度救急車で運ばれましたし、柚日も最近ぜんそくの診断を受けました。感染症には気をつけていますが、どうしても長女からうつることが多々あります。幸い入院するほど悪化したことはないけれど、ぜんそく発作予防の薬は飲み続け、呼吸の変化を気をつけて見るようにしています」(麻由さん)

それでも柚日ちゃんと杏奈ちゃんは成長とともに、歩く、走るなどの運動発達面ではどんどんできることが増えているそうです。

「修正月齢で見ると運動発達にあまり遅れはなく、2人とも歩いたり、走ったりできています。ただ、柚日は歩行が安定しなくてちょっとフラフラしてしまいます。脳出血があった影響なのかもしれません。柚日の歩行については今度9月に整形外科を受診する予定です。

また柚日はコミュニケーションの面でも少し心配があります。2人はプレ幼稚園に通っているんですが、同じクラスのお友だちはもう2語文を話せるし、ものの名前もよく知っているし、先生ともやり取りができています。杏奈は少しずつ2語文が出てきたんですが、柚日は理解しているようでしていないような、自分の要求を表現できていない感じがします。3歳でまた発達検査をするので、療育の必要があるかどうかを医師に相談しようと考えています」(麻由さん)

茨城県のリトルベビーサークルの設立を決意

生後1歳のお誕生日。家族でお祝いしました。左が柚日ちゃん、右が杏奈ちゃん。

小さく生まれた双子の育児をするなかで、麻由さんは「不安な胸の内を1人で抱えていた」と振り返ります。

「出産した当時はリトルベビーという言葉を知らず、県内にサークルも見つからなかったため『仲間がいない』と孤独を感じていました。双子がNICUに入院中には、自分と同じ境遇のママと出会うことはできなかったんです。コロナ下で面会時間も1回30分と短かったですし、NICUに入院しているのは1分先の命もわからない状態の赤ちゃんたちばかり。面会中のママさんに『今日どうでしたか?』と気軽に話しかけることはできませんでした。私もわが子のことに精一杯で、周囲を見る余裕がありませんでした。

家族には心配をかけたくなかったり、強がったりしてしまって、不安を1人で抱え込んでしまっていたと思います。家族が私を励まそうと『大丈夫だよ』と言葉をかけてくれても『何が大丈夫なの!?』と思ってしまいました。人に話して自分が責められたらどうしよう、とか、無責任な言葉をかけられて傷つくことがとてもこわく、だれかに相談することもできませんでした」(麻由さん)

麻由さんは退院した双子の育児に大忙しの中、SNSで低出生体重児の育児の情報を集めていたとき、ほかの県にリトルベビーサークルという低出生体重児の保護者の集まりがあることを知りました。

「あるとき栃木県のリトルベビーサークル『にちにちらんらん』代表の小林さんと知り合い、11月17日の世界早産児デーに合わせて『にちにちらんらん』が開催した写真展に遊びに行きました。そのときに、『茨城県のサークルを立ち上げてみたい』と小林さんに相談したんです。そこから国際母子手帳委員会の板東あけみ先生を紹介してもらい、サークル立ち上げの手順などを教えてもらうところからスタート。そして、2022年11月に茨城リトルベビーサークル『hug(はぐ)』を立ち上げました」(麻由さん)

対面交流会やオンライン交流会などを行いながら少しずつメンバーが増え、現在11組の家族が参加しています。麻由さんはリトルベビーの子育てに悩んでいるママやパパに「ひとりぼっちじゃないと伝えたい」と言います。

「私自身、同じ境遇の人と話すことは力になるんだな、と実感したできごとがありました。先ほど話した世界早産児デーのイベントであるママさんと出会ったときのことです。生まれたときに歩けないかもしれないと言われたお子さんが、イベント会場でトコトコと歩いていたんです。その人が私に『きっと大丈夫だよ』とかけてくれた言葉が、心にすっとしみるようですごく励まされました。やっと気持ちをわかってくれる人に会えた、と感じたというか。今思い出しても、涙が出ます。

リトルベビーを産んだママたちがもし悩んでいたら、1人じゃない、と知ってほしいです。サークルには同じ経験をした仲間がいます。元気に成長しているリトルベビーたちがいます。勇気のいることですが、話して楽になれることもありますから、ぜひ連絡してほしいです」(麻由さん)

リトルベビーハンドブックを手にしていたら、もっと心が救われたかも

双子の抱っこひもは、通常生後6カ月ごろまでが使用対応のものでしたが、元が小さく成長もゆっくりなので1歳を過ぎても使用していました。

茨城県では、麻由さんがリトルベビーサークルを立ち上げる前の2022年10月、リトルベビーハンドブックの初版が作成されました。リトルベビーハンドブックは低出生体重児の成長を記録するための母子健康手帳のサブブックです。

「私が双子を出産したときには、茨城にはまだリトルベビーハンドブックはありませんでした。母子健康手帳の赤ちゃんの身体発育曲線のグラフは“体重1kg、身長40cm”から始まっているので、約700gで生まれた柚日と杏奈は、最初の点を打つことができませんでした。毎日面会に行って見ているだけでは、どれくらい成長しているのかよくわかりません。低出生体重児に合わせた成長曲線に記録したり、その子なりの成長の変化を記録できたら、『この子のペースで大きくなっている』と実感できたんじゃないかな」(麻由さん)

リトルベビーハンドブックには、出生体重500g未満からの身体発育曲線のほか、早産ゆえの病気や合併症についての解説や、先輩ママ・パパからのメッセージも記載されています。

「子どもがNICUに入院している間は、心配のあまりなかなか気持ちの整理がつかなかったし、専門知識もなく、わが子の健康状態についてよくわからないままに受け止めるだけでせいいっぱいでした。不安を抱え、自分を責めて、周囲の何気ない言葉に傷ついていました。あのときリトルベビーハンドブックがあれば、もっと心が救われたかもしれないと思います。

現在、茨城県のリトルベビーハンドブックは母子周産期医療センターや市区町村の窓口などで受け取ることができます。茨城県内で手にしたママたちからは『早産で入院中に欲しかった』という声もあがっています。必要とするママにリトルベビーハンドブックが届くように、医療者の方々にも協力してもらえたらと思っています」(麻由さん)

茨城県リトルベビーハンドブックは2023年12月に改訂版が発行。麻由さんはサークルメンバーからの声を集め、改訂版の内容の改善点を提案しました。今後も毎年、利用者からの声を集めて改善点を見直していく予定です。

生きていてくれるだけで幸せを感じる

2歳3カ月の柚日ちゃんと杏奈ちゃん。「出産したときは、こんなふうに手をつないで歩く日が来ることを想像できなかった」と麻由さん。

現在2歳半になった柚日ちゃんと杏奈ちゃんはプレ幼稚園に通っています。「双子の成長に幸せを感じることは?」と聞くと、麻由さんは「生きていてくれるだけで幸せ」と答えます。

「2人は最近、幼稚園で習った『あまだれポッタン』という歌を手のふりをつけて踊りながら遊んでいます。双子のどっちかが歌い始めると、もう1人も一緒になって歌って踊っている姿が本当にかわいいです。

けんかもしょっちゅう。おもちゃの取り合い、ママの取り合い、嫌いなおかずの押しつけ合いをしています。食べたくないおかずがあると、きょうだいのお皿にぽい、と置くんです。置かれたほうも食べたくないとまた相手のお皿に戻す、というふうに。そんなささいなことも、幸せを感じます。

2人の好きな食べ物は、納豆(笑)。朝から『なっとう、なっとう』とコールされます。納豆が好きなのは大いに結構なんですけど、偏食気味なことはちょっと心配ですね。でも、2人のペースでこれからどのように成長していくか、とっても楽しみです」(麻由さん)

お話・写真提供/大貫麻由さん 取材協力/板東あけみさん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

双子たちはプレ幼稚園に通い始め、お友だちとかかわりながらぐんぐん成長しているそう。実は麻由さんは、今4人目を妊娠中。前回の出産が早産だったために体調に気をつけながら、新しい家族の誕生をみんなで楽しみにしているそうです。
また、茨城リトルベビーサークル「hug」のInstagramでは、茨城県のリトルべビーハンドブックへの意見を集めています。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

茨城リトルベビーサークル「hug」

茨城県リトルベビーハンドブック

ちいさな赤ちゃんからの贈り物

各地のリトルベビーサークルのママたち有志が作成した動画。NICUに入院中の気持ち、リトルベビーハンドブックの記録、子育て中に支援されてうれしかったことなど、ママたちの気持ちや赤ちゃんたちの成長の様子が約7分にまとめられています。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年8月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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