子どもの乗り物酔い。市販薬「成分少なめ」がカギ?!座席選びのポイントも解説【小児科医】
子どもの乗り物酔いは、2歳未満ではまれですが、4歳以後から徐々に増え、ピークは9歳ごろといわれています。
帰省や旅行など、移動のたびに子どもが吐いたり具合が悪くなったりするとなかなか大変です。
連載「ママ小児科医さよこ先生の診療ノート」の12回目は、車、飛行機などの、子どもの乗り物酔い対策についての解説です。
酔い止め薬は「成分が少ない」ものを
「うちの子、車に乗ると、毎回吐いてしまうので、今からゆううつです・・・」(5歳)
「帰省するので、吐きけ止め、もらえますか?」(3歳)
子どもの乗り物酔いは、とくに連休や長期休みの前に、相談が多くありますす。
子どもを連れて移動するだけでも大変なのに、そこで吐かれると、なおさら大変ですよね。
乗り物酔い対策として、酔い止め薬がまず浮かぶ方も多いと思います。市販薬は、基本的に年齢・月齢に合ったもので、用法用量を守って使えば問題ありません。錠剤やシロップ、ドリンクなどさまざまな剤形があるので、子どもが飲みやすいものでトライしてみましょう。
市販薬を選ぶもう1つのポイントとしては、「成分が少ないものを選ぶ」ということです。というのも、酔い止めとして効果がある成分は、主に抗ヒスタミン成分(マレイン酸フェニラミン、クロルフェニラミンマレイン酸塩など)と抗アセチルコリン成分(スコポラミンなど)のみだからです。ビタミンやカフェインなどが含まれている市販薬もありますが、酔い止めに明らかに効果があると証明された成分ではありません。
アレルギー疾患がある場合などは、医師に相談を
「うちの子花粉症があるので、ヒスタミンの薬って、すでに毎日飲んでいる気がするんですが・・・?」(4歳)
「市販の薬を使うのは、ちょっと抵抗があります。医療機関で処方してもらうことはできますか?」(2歳)
さまざまな市販薬をトライするのもいいですが、医師に相談してほしい場合もあります。
とくに、もともとアレルギー性疾患のある子どもは要注意です。酔い止めに効果がある抗ヒスタミン成分は、アレルギー疾患にも効果があるため、毎日内服している薬に、すでに含まれている可能性があります。市販の酔い止めを使う前に、事前に医師に相談してください。
また、市販薬がまだ飲めない月齢・年齢の場合や、市販薬に抵抗がある場合は、漢方薬が有効なこともあります。五苓散(ごれいさん)など、0歳から処方できるものもありますので、ぜひ医師に相談してください。漢方は苦い・まずい、というイメージがある方もいるかもしれませんが、子どもの場合、ヨーグルトやココアなどに混ぜると、すんなり飲んでくれることも少なくありません。
座席のポイントは「揺れにくい場所」
酔い止め薬以外にできる対策として、乗り物の座席も大事なポイントです。
とにかく「揺れにくい場所」を選ぶこと。たとえばバスや船の場合、前方や後方ではなく、車両中央あたりの席だと揺れが少ないです。飛行機の場合は、翼の横の席がいいでしょう。また自動車なら、景色が見える前方の席がおすすめです。またどんな席でも「地平線や、遠くの固定された物体を見ること」や「読書や画面を見るのを避けること」が大事になります。
この理由としては、乗り物酔いは「めまい」の一つだからです。「めまい」にはさまざまな種類がありますが、とくに乗り物酔いの場合は、「視覚から得られる情報」と「そのほかの体の感覚から得られる情報」とが、脳の中でうまく統合できないことから生じます。
薬は車内に放置しないで。飛行機も手荷物で。
酔い止めの薬以外にも、帰省や旅行の際には、普段から飲んでいる薬を持ち運びますよね。
それらの薬は「常に持ち運ぶ」ことを意識してください。車内に放置すると、冬場は寒さで、夏場は暑さで、薬の剤形が変化してしまったり、薬の効果が十分に保てなかったりする場合があります。
また飛行機の場合、カウンターで預けた荷物が目的地に届かないトラブルもありえます。薬は必ず手荷物に入れて搭乗するようにしましょう。
そのほか、母子健康手帳・お薬手帳もあると、万が一の体調不良の際に安心です。子ども連れの移動は大変ですが、ポイントをおさえて安全・安心に楽しみたいですね。
文・監修/白井沙良子先生 構成/たまひよONLINE編集部
冬休み、年末年始のお休みがもうすぐ。旅行を楽しんだり祖父母に会いに帰省を考えたりしている家庭も多いことでしょう。すてきな思い出をつくるためにも、子どもが気持ちよく過ごせるように酔い止め対策をして出かけませんか。
【参考文献】
・UpToDate “Motion sickness”
・『チャイルドヘルス』2024年4月号 特集「子どもと安心・安全に旅する極意~どうする!? 旅先の病気や怪我~」(診断と治療社)