「育児本は赤ちゃんのことばかりで、親がどう工夫すればいいのか書いてなかった。ないなら僕が書こうと」子育てがラクになるノウハウを集めた育児本の著者ヨッピーさんインタビュー
2024年9月末、1冊の書籍が刊行されました。タイトルは「子育てがラクになるノウハウを集めた 育児ハック」。ヨッピーさんという男性ライターによるものなのですが、この本、よくある育児本とはひと味違うんです。それは、赤ちゃんにフォーカスをあてるのではなく、赤ちゃんを育てる親が「育児、楽しいじゃん!」と思えるように、効率よく育児をするための具体的な方法をまとめた、ありそうでなかった育児本なんです。なるほど!という発見の多いこの書籍の著者ヨッピーさんに、この本を書いたきっかけやご自身の育児スタンスなどについて聞きました。全2回インタビューの前編です。
先輩ファミリーのアドバイスと育児本のズレ。そこに違和感を持ったことが始まりだった
「革命的」とも言える育児本「育児ハック」の著者であるヨッピーさんは、現在43歳。第1子となる息子さんは、ヨッピーさんが40歳のときのお子さんです。最近では「40歳でパパ」というのも、さほど珍しくありませんが、ヨッピーさん自身は少し焦りもあったのだそうです。
「子どもはいつかほしいと思っていたんです。だから、40歳という大台が近づいてきて『やばい。40だし、子どもつくんなきゃ!』みたいなあせりは当然ありました。というか、もうとっくにあせっていたんです。
実は僕、35歳くらいから『そろそろ子どもをつくらなきゃやばいな』って思っていたんですよ。女性に比べると、妊娠のタイムリミットは男性のほうが長いのかもしれませんが、それでも男性の精子も当然劣化するだろうし、妊娠しにくい可能性も出てくるだろうし。
あと、僕は仕事柄、あちこちに出かけることが多かったんですが、コロナ下でそういう仕事がいっさいできなくなっちゃって、急に暇な時間ができたんですよね。そういう時間があると、自分をちょっと見返すじゃないですか。この先どうしようかな、みたいな。
そうやって、自分の人生を振り返ったときに、『もうすぐ 40 だし、子どもは昔からずっとほしかったし、いい加減つくらなきゃいけないな』と感じたことは大きかったです。なので、妻と子どもをつくろう!と話してからは、割とすぐ授かることができたという感じですね」(ヨッピーさん)
ヨッピーさん夫婦2人にとって念願だった第1子の妊娠。今回の「育児ハック本」では、生まれる前からの準備について記述があります。お子さんを授かる前から「妊娠したら、こうやって子育てしていこう!」みたいな計画を頭の中で描かれていたのでしょうか。
「いやもう全然! 全然なかったです。とりあえず妊娠できたじゃないですか。次は子育てが始まるぞ!という思いが頭にあったんで、まずまわりの男性に『育児どう?』『何を準備して、どうしたらいいんだ?』と聞いて回ったし、育児本も10冊以上読んだんですよね。
するとね、割と多くの人が『とにかく体力勝負だよ』とか『今のうちに体力つけておいたほうがいいよ』とか言うんですよ。でもね、買った育児本は、そんなことを全然書いてない。赤ちゃんにはこうしてあげましょうみたいなことばかりで、それをするために具体的に親がどう工夫すればいいのかは書いてないんですよ。
そこにめっちゃズレがあるなっていうのが、最初の違和感でした。
あとは SNS でも同じように育児について情報収集するとね、『子育てはもう地獄』とか『つらくて涙が止まらない…』みたいな言葉もたくさん出てきたんですよ。それを読むと『そんなにつらいの?』ってめちゃくちゃ怖くなって、これはちょっと入念に準備をしなきゃいけないなと思ったんですね。
いかにラクに子育てをするか…。うーん、ラクといったら語弊があるかもしれないですけど、いかに効率よくやるかっていうのを考えなきゃいけないなと思って、そのためのプロジェクトが僕の中で立ち上がったんですよね」(ヨッピーさん)
「親がどう工夫すべきか」にフォーカスをあてた育児本がないなら、自分で書こう!
育児本には「赤ちゃんにはこうしてあげましょう」ばかりで、それを効率的に行うには親はどうすればいいかについて書いていない――。確かにこれは盲点かもしれません。もちろん、ポイントポイントでどうすればよいのかを説明してある場合もあると思いますが、「赤ちゃんにこうしてあげるために、親はこんな工夫をしましょう」という、親の動き方に特化し、その視点だけで育児について語った本はなかなかありません。そういう意味で、ヨッピーさんの育児本は「革命的である」と言えるのです。
実際に、ヨッピーさんの本では、洗濯、料理、買い物、掃除といった家事全般の圧縮のしかた、子育てに備える体力のつけ方、育休を取るための諸注意など、どうやって子育ての以外のことを圧縮するか、また子育てを効率化するための人手と体力を確保するかについて具体的な方法が書いてあります。これは、子どもにとくに手がかかる時期は、親が「家事」ではなく「子育て」に集中し、多くの力を(多くの人の手を)「子育て」に注(そそ)げるようにするために必要なことだと、ヨッピーさんは言います。
「幸い、僕はまだ子どもが生まれる前に気づけたので、『生まれたら育児シフトになれるように、今のうちから準備しとかんと、どうもやばそうだぞ』みたいなことを妻に伝えて、妻の妊娠中から、夫婦で家事代行とか宅配食とか、家事を圧縮するのに便利なものはいろいろ試して、準備を始めました。
で、その準備のおかげか、実際に育児が始まったら、正直思っていたよりも大変じゃないなと感じたんですよ。まぁ、子どもの特性にもよりますし、新生児のときはどうしても睡眠時間を削られるんで、大変でしたけどね。
ただ、育児に集中するための効率化とか、育児について考えたり調べたりしたことを周囲に話すと、意外とみんなが知らないことも多かったんです。
パパ友と飲んだりすると、みんな何かしら悩みごとがあって話したりするんですけど、前は僕のほうが教えてもらう立場だったのに、AI見守りカメラとか、ファミサポとか、申請したら戻ってくるお金とか、僕がこういうのがあるから使ってみたら?って、いつの間にか詳しくなっていて。だったら、この話を世に出したほうがいいんじゃないかって。
親にフォーカスをあてた育児本がないなら、自分で書こう!って。そう思ってできたのが、この『育児ハック』なんです」(ヨッピーさん)
実際にヨッピーさんが子育てをしながら実践してきたこと、使ってきたものが軸になって書かれているので、具体的でわかりやすく書かれているのもこの本の特徴です。
「確かに、難しかったり、ハードルが高かったりすることは書いてないはずなんですよ。だれでもまねできるものというイメージで書きました。だから、僕みたいな考え方で、すでに子育ての効率化を実践している人からしたら、割とありきたりな初歩的な内容と感じるかもしれません。でも、こういう考え方をしたことがなかった!みたいな人もたくさんいらっしゃって、そういう人からすると、わかりやすいとか、実践しやすいと言ってもらえている感じですね。
よく企業経営を円滑に進めるためには「ヒト・モノ・カネ」のバランスが大事と言いますけど、育児においても同じことが言えると思っています。ゆとりを持って子育てして、家族が幸せでいるためには、どう人手を増やし、どんな便利なものを使い、何にお金をかけるのか。
これから子どもが生まれるという人や、今現在、育児に追われて大変で心が折れそうという人には、ぜひ読んでほしいと思いますね」(ヨッピーさん)
お話・写真提供/ヨッピーさん 取材・文/酒井有美、たまひよONLINE編集部
子育てに関して「ラクにする」「効率化する」という言葉を使うと、ちょっと聞いただけでは、冷たいように感じる人もいるかもしれません。でも、ヨッピーさんの場合は、子育て以外のことを効率化することで、子育てに集中することができ、結果子育てがラクになる、そして赤ちゃんも幸せにできるという考え方。子育てに手を抜くということではないんです。楽しく笑って子育てをしていくためには、限りある人手、体力、時間を効率よく使うことはとても大事ですよね。後編では、ヨッピーさんの実際の子育てでのエピソードや、本で紹介されている名言などについて、ご紹介します!
ヨッピーさん(よっぴー)
PROFILE
1980年生まれ。ライターとして、さまざまな媒体で記事を執筆する一方、お出かけメディアの編集長、講演、イベント主催など活動は多岐にわたる。2021年に第1子、2023年に第2子が誕生したことをきっかけに、子育てコミュニティ「ぴよぴぴ」をLINEオープンチャットで設立したり、子育てをしている親にゆっくりおふろに入ってもらいたいという思いから託児銭湯を主催したりと、育児分野での活動も行っている。著書に『明日クビになっても大丈夫!』(幻冬舎)。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●掲載している情報は2024年12月現在のものです。
パパもママも必読!子育てがラクになるノウハウを集めた育児ハック
「こんなズボラな僕が、父親をやれるのか?」と不安だったライター・ヨッピーが試行錯誤の末にたどり着いた「子育てをする親」に向けた育児ハック集。「育児は大変!と思ってしまう全ての人へ。家事、育児、仕事、すべてを効率化して、ゆとりのある子育てライフを送ろう!」1760円(KADOKAWA)