自己判断で服用を止めるのはNG!正しい服用ルールを薬剤師が解説
「症状がおさまったら、薬はやめてもいいの?」と思う人は多いのではないでしょうか。しかし、自己判断で中止すると、思わぬ悪影響が生じる可能性があります。薬を安全に使うために、正しい服用ルールをおさえておきましょう。この記事では服用を止めたときのリスクと、薬の正しい服用ルールを薬剤師が解説します。
自己判断での服用中止はNG
医療機関から処方された薬には、症状が消えたら服用を止めていいものと、症状が消えてからも一定期間飲む必要がある薬があります。
たとえば、解熱剤や咳止め、下痢止めなどは症状がおさまったら、基本的に継続する必要はありません。一方、抗生物質やステロイド薬などは、自己判断で止めてはいけない薬です。
服用を止めるタイミングを患者さんが判別するのは難しく、「この薬は途中でやめてもいいの?」と疑問に思うこともあるでしょう。
医師から「症状がよくなったら止めていい」と言われた場合を除いて、薬の服用を勝手に中止してはいけません。自己判断でやめてしまうと、思わぬ悪影響が生じることがあります。自己判断を避け、不明なことがあったら主治医や薬剤師に相談しましょう。
服用を止めた場合の影響
薬の服用を勝手に中止すると、薬剤耐性菌やリバウンド現象などの問題が起こる可能性があります。具体的にどのような影響があるのか解説します。
薬剤耐性菌ができる
抗生物質の服用を中途半端にやめてしまうと、薬剤耐性菌が生まれる可能性が高くなります。薬剤耐性菌とは、その薬への抵抗力を持った細菌のことです。薬剤耐性菌に対してその薬を服用しても、菌の増殖を抑えることができず感染症を治すことができません。
処方された抗生物質を途中で飲み残すケース以外にも、前に処方されて手元に残っていた抗生物質を自己判断で飲んだ場合にも薬剤耐性菌が発生する可能性があります。(※1)
薬剤耐性菌が増えて他の人に感染が広がれば、薬が効かずに苦しむ人を増やすことにもなりかねません。
リバウンド現象が起きる
薬をいきなりやめると、「リバウンド現象」という有害な反応が起こる場合があります。リバウンド現象とは、薬の効果で抑えられていた症状が、薬の中止によってぶりかえしてしまう現象のことです。(※2)
たとえば、抗生物質を急に飲まなくなると、体内に残っていた細菌がまた増え始めて感染症の症状が悪化することになります。ステロイド薬を自己判断で中止した場合も、からだの中のホルモンバランスが崩れて、これまで落ち着いていた症状が再発する可能性があります。
高血圧や胃潰瘍の薬も、中断すると血圧が上がって心筋梗塞の原因になったり、抑制されていた胃酸分泌が活発化して胃潰瘍になったりするため注意が必要です。他にも、睡眠薬や抗うつ薬など、さまざまな薬でリバウンド現象が起きる可能性があります。
守るべき服用ルール
薬を飲むときは、次の3つのルールを守りましょう。
医師の指示通りに服用する
薬の服用期間や回数・タイミングなどは、医師の指示に従ってください。飲み忘れた場合は気づいた時点ですぐ飲むか、次の服用時間が近ければ1回分飛ばして1回分のみ服用します。過剰服用を避けるため、2回分をまとめて飲んではいけません。(※3)
水かぬるま湯で飲む
薬は水やぬるま湯で飲みましょう。それ以外のもので飲むと、相互作用が起こって薬の効果に影響が出たり、副作用が出やすくなったりする可能性があります。
たとえば、ジュースやお酒、カフェイン飲料などで飲むのは避けてください。なお、口腔内崩壊錠(OD錠)は水なしでも服用できる薬です。
子どもに大人用の薬は飲ませない
もし家に余っていても、子どもに大人用の薬を飲ませてはいけません。大人用と小児用では薬の含有成分や量が異なっているため、子どもにとっては安全性が未確立だったり、量が多すぎて副作用が出たりする危険があります。たとえ成分名が大人用と小児用で同じだったとしても、自己判断で薬を半分に割るなどして飲ませるのは厳禁です。
また、子ども同士でも年齢が違うと服用できる薬の種類や用量が異なることがあるため、兄弟姉妹に処方された薬を他の子どもと共有するのもやめましょう。
薬は正しく飲もう!
薬は正しく服用すれば病気の治療に役立ちますが、自己判断で中止したり、用法・用量を守らなかったりすると思わぬ健康被害につながるおそれがあります。薬に関する疑問や不安があるときは、必ず主治医や薬剤師に相談して、安心・安全に服用しましょう。
<参考文献>
※1 政府広報オンライン「抗菌薬が効かない「薬剤耐性(AMR)」が拡大! 一人ひとりができることは?」
※2 一般社団法人脳神経疾患研究所付属総合南東北病院「薬局だより 薬のリバウンド現象」
※3 全国健康保険協会「お薬を飲み忘れてしまったら」
PROFILE
あんしん漢方薬剤師
山形 ゆかり
薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ入り、牛角・吉野家他薬膳レストランなど15社以上のメニュー開発にも携わる。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホひとつで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):
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