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頭が大きく生まれた長男。出生前検査では異常はなかったのに・・・。「ソトス症候群」の診断がついたのは生後4カ月、情報がなくつらかった【体験談・医師監修】

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療育を頑張っている翔馬くん。

看護師として働く河本翼さん(42歳)の長男・翔馬くん(10歳)は生後4カ月で1~2万人に1人といわれる指定難病の「ソトス症候群」と診断されました。ソトス症候群は、頭が大きい(大頭症)などの顔貌の特徴、体つき(身長)の大きさ(過成長)、発達の遅れなどをもつ症候群です。「それまでこの疾患のことは何も知らなかった」という河本さんに、妊娠中や出産時のことを聞きました。全2回のインタビューの前編です。

妊娠初期、胎児の首にむくみがあることを指摘される

生まれたばかりの翔馬くん。

――河本さんが妊娠したときの様子を教えてください。

河本さん(以下敬称略) 結婚前から子どもが欲しいと思っていました。29歳で結婚し、1年くらいで妊娠がわかったときは本当にうれしかったです。

心拍も無事に確認されたのですが、妊娠5~6カ月くらいのときの妊婦健診で、医師から「赤ちゃんの首の後ろにむくみがある『頸部肥厚(けいぶひこう)』が認められます。ダウン症候群などの染色体異常がある可能性があります」と、説明されました。とてもショックで頭が真っ白になり、帰宅途中に涙がこぼれてしまいました。

病院で告げられたことを私と夫、双方の両親に伝えると、どちらからも出生前検査をすすめられ、受けてみることにしました。

――検査はどのように受けましたか?

河本 胎児ドッグを受けられるクリニックでエコー検査と血液検査を受けました。エコー検査では「赤ちゃんの脳室や腎臓が少し大きい」「腸の動きが気になる」などの指摘を受けました。一方、血液検査ではとくに気になる数値は出ず、ほっとしました。ところが「頸部肥厚があると指摘を受けているのなら、染色体異常の可能性の確率は変わらない」と言われたんです。

急きょおなかの赤ちゃんの染色体や遺伝子を調べる出生前診断である「絨毛(じゅうもう)検査」を受けました。その結果、頻度の高い染色体異常はないだろうとのことでした。

とはいえ、エコー検査で指摘されたことが気になり、妊娠中は心配なことばかりでした。妊娠5カ月目くらいでおなかの赤ちゃんは男の子だとわかりました。

生後2日で腸閉塞の手術を受けることに

お母さんも入院中でしたが、生後4日目に翔馬くんの入院先へ行きました。

――出産はどんな様子でしたか?

河本 妊娠後期に入ってから、「赤ちゃんの頭が大きいから、自然分娩は難しいかもしれない」と言われていました。私自身もむくみがひどくて・・・。様子を見ていたのですが、出産予定日の1カ月前である36週に私の血圧が上がり出し、妊娠高血圧症候群の症状が出始めました。おなかの赤ちゃんも、私自身も危険な状態ということで、緊急帝王切開で出産することになりました。

出産時は部分麻酔だったので、私はずっと意識がはっきりしていたんです。医師が「やっぱり赤ちゃんの頭が大きい」と話す声が聞こえ、赤ちゃんが引っかかってなかなか出てこない様子が伝わってきました。どうなるんだろう・・・とハラハラしどおしで、無事に生まれたときはほっとしました。赤ちゃんは産声(うぶごえ)を上げるまでに少し時間がかかったものの、時間と共に呼吸も安定していったんです。「無事に生まれてくれてよかった」と、安堵(あんど)感でいっぱいでした。体重は3406g、身長は49.5cmでした。「翔馬」と名づけました。

ところが、生後2日目に胎便が出ないと言われたんです。検査をしたところ腸が動いていなくて、腸閉塞の疑いがあるとのことでした。急きょ小児外科のある病院に転院し、手術することになりました。たった生後2日で手術をするなんて・・・とつらかったです。

――赤ちゃんだけが転院したのですか?

河本 そうです。私は帝王切開したばかりで血圧もとても高く、動ける状態ではありませんでした。わが子のそばにいることもできず、遠くから祈ることしかできなかったんです。翔馬は生後2日で手術を受け、腸への神経がなく、腸が動かない「ヒルシュスプルング病」ではないか、とのことでした。初めて聞く病名だし、さまざまな症状があるようで、この先どうなるのか不安でした。その後、生後4カ月までに4回も手術を受けることになります。

――どんな手術を受けたのでしょうか?

河本 最初は先ほどお伝えした生後2日で受けた腸閉塞のための人工肛門(ストマ)造設手術です。その1カ月後、ストマの脱腸手術と生検手術をしました。ヒルシュスプルング病だと、腸に動かない部分があり、そこを切除する必要があるそうです。ところが生検を受けたところ、翔馬は「ヒルシュスプルング病」ではないことがわかりました。医師は「ヒルシュスプルング病類縁疾患」ではないかと言っていましたが、調べれば調べるほどいろんな情報があり、結局なんだろう?と不安な毎日を過ごしていたんです。

生後4カ月目で腸が動き出し、ストマを閉鎖する手術を受けるになりました。その2週間後、今度は腸閉塞になり、4回目の手術を受けました。小さい体で本当によく頑張ったと思います。

初めて聞く疾患名にとまどうも、前を向こうと決意

10年来のソトス症候群のお友だちと一緒に。

――河本さんから見て、赤ちゃんのころの翔馬くんの様子はいかがでしたか?

河本 気になることはいろいろありました。動いているものを目で追いかける追視がなくて、変だな?と感じていました。足の動かし方も気になる部分でした。一般的な赤ちゃんの足は両ひざと股関節が外側に開き、M字型です。でも、翔馬はずっと左右の足をクロスしていたんです。何かおかしいとは思っていたものの、原因まではわかりませんでした。

――ソトス症候群と診断されたのはどんな経緯からでしょうか?

河本 主治医も翔馬の足の形や見た目、動きなどが気になっていたようです。生後2カ月ころに撮ってあった翔馬の写真を、研究会で見せて相談してくれたんです。写真を見た別の医師が「ソトス症候群ではないか?」と指摘してくれたそうです。それでソトス症候群の検査を行うことになりました。

私は看護師ですが、ソトス症候群についての知識はまったくありませんでした。同僚でも知っている人はいなかったんです。すぐにネットで調べてみたのですが、当時は情報がほとんどなく「ソトス症候群ってなんだろう?」とわからないことだらけでした。

――ソトス症候群とはどんな疾患なのでしょうか?

河本 遺伝子の疾患です。日本国内で1~2万人に1人の患者がいると推定されているとのことです。この疾患がある子の8割は知的障害があるとも言われています。個人差はあるものの、発語の遅れや首のすわり、歩き始める時期の遅さなども。外見としては頭が大きく、顔に特徴があります。合併症もあり、けいれん、側弯(背骨の曲がり)、心臓合併症などの症状が見られるようです。

ソトス症候群の検査は、染色体の特定の部分が欠損しているか、異常があるかということでわかります。翔馬は検査をして2週間後にソトス症候群と診断されました。医師からは、今後合併症が出てくるだろうと説明をされました。腸閉塞は合併症かどうかはわからないとのことでした。

ずっと翔馬の様子には違和感はあったものの、正式に診断されるとやっぱりショックでした。「この先どうなるんだろう」と、将来も不安でした。でも、ずっと立ち止まっているわけにはいきません。翔馬を育てるために、目の前のこと一つ一つに向き合い、しっかり取り組んでいこうと決意しました。翔馬の入院は生後5カ月半まで続きました。

生後9カ月から毎日療育に通うように

翔馬くんが笑顔で過ごしてくれるのがママの願いだそう。

――翔馬くんにはどんな症状がありますか?

河本 さまざまな合併症があり、背骨の曲がり、偏平足などがあります。腎臓に尿がたまり拡張してしまう水腎症や熱性けいれん、無熱性けいれん、中耳炎も経験しました。左目はほとんど見えていなく、右目だけで見ています。左目は瞳孔が8つぐらいに分かれているということで、視力が期待できないんです。
ソトス症候群の子はとてもよく食べ、体が大きい子が多いです。翔馬も幼少期はびっくりするほど食べ、私が食事量を調整していました。現在もときどき食べ過ぎることがあるので、注意しています。

医師によると、ソトス症候群の子にはたくさんの刺激を与えてあげてほしいとのことでした。入院中から音を聞かせる、たくさん話しかける、体に触れるなど、五感を刺激するように意識しました。療育も有効と聞いたので、生後9カ月から通い始めました。3年間、親子でほぼ毎日通い、その後2年は翔馬1人で通っていました。

11歳になった現在は体の動かし方を学ぶリハビリにも通い、理学療法、作業療法、視能訓練にそれぞれ月1回通っています。小児リハビリを実施しているところが少なく、自宅から車で1時間ほどかけて通っています。自宅では足のマッサージなども行っています。以前は言語聴覚も受けていましたが、だいぶ話ができるようになってきたので2~3年前に終了しました。

――翔馬くんを育てるうえで大変なことはありますか?

河本 翔馬を育てながらだと働くのが難しかったです。預ける先も限られているし、体調を崩したら急に休まないといけません。療育も毎日つき添う必要があり、仕事を取るか、療育を取るかという選択を迫られました。私は仕事を続けたかったです。もし療育をやめて保育所に預ければ仕事はできたと思います。
でも、それは翔馬にとっていいことなんだろうか?と悩んでしまって。結局、当時は仕事はあきらめ、療育を選びました。ほかのママも仕事か療育か、どちらを選ぶか悩んでいる人が多いです。

振り返ってみれば、療育を選んで正解でした。療育を受けたことは翔馬の発達にとてもいい影響があったと思うからです。最初は言葉が出るのもゆっくりで2歳7カ月くらいから話し始めました。現在はとてもおしゃべりで、学校であったこともよく話してくれます。楽しそうに自分の気持ちを伝えてくれる姿を見ると、これまでの選択は間違いではなかったと思うし、今後も見守っていきたいです。

【水本先生から】発達はゆっくりでも着実にできることが増える

ソトス症候群と診断されるお子さんは、背が高く、体重も大きく、頭も大きいことが多いです。一般的に発達はゆっくりですが、それぞれのペースで着実にできることが増えていきます。翔馬くんはとても純粋で無垢な心の持ち主です。私を見つけると、いつもすぐに声をかけてくれて、「ちっくん(注射)しない?」と確認します。今までいくつもの合併症を乗り越え、最近では体調を崩して入院することはほとんど無くなりました。

お話・写真提供/河本翼さん 監修/水本洋先生 取材・文/齋田多恵、たまひよONLINE編集部

▼続きを読む<関連記事>後編

生後4カ月で、初めて聞く疾患名を告げられたのは不安だったと思います。それでも前を向き、しっかり向き合ってきた河本さんの強さが伝わりました。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

河本翼さんのブログ「ソトスっ子しょしょくん」

河本翼さんのinstagram

関西STS〈ソトス症候群〉~広げよう親の会~のホームページ

河本翼さん(かわもとつばさ)

PROFILE
生後4カ月で長男がソトス症候群と診断される。関西を中心にソトス症候群の子どもと親が集まる「ソトスの会」を定期的に開催している。

水本洋先生(みずもとひろし)

PROFILE
北野病院 小児科新生児部門主任部長。日本小児科学会認定専門医。日本小児科学会認定指導医。専門領域は、新生児蘇生、蘇生教育。

●記事の内容は2025年1月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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