新生児の鼻詰まりやゼロゼロは、風邪ではなく飲み過ぎかも!?
はじめての育児に、毎日の赤ちゃんのお世話に向き合っているママたちがとても気にしているのが、授乳についてです。
とくに新生児を母乳で育てているママたちは、おっぱいをあげても泣きやまなかったり、あげてもすぐに泣く赤ちゃんを目の前にして「足りないのかな?」「飲みすぎなのかな?」と心配になることが多いようです。
新生児で鼻が詰まっていたり、ゼロゼロしていたりすると、風邪かなと診断されて風邪薬を処方されることもありますが、その中に風邪ではないケースもあるって知っていますか。
おっぱいをよく飲んでいるから元気なのかなと思っていても、鼻詰まりがある場合、風邪ではなくておっぱいの飲ませ方と関係があるのかもしれません。
約3割のママが「母乳が足りない」と思うことで飲ませすぎに
日本母乳の会前運営委員の小児科医・橋本武夫先生は、「おっぱいが足りないと思って頻回授乳をすることで、満腹感がわからない新生児が母乳を飲みすぎて、“飲みすぎ症候群”になっているケースが1カ月健診時で約3割みられます」と言います。
以前はミルク授乳の赤ちゃんによくみられていたとのことですが、最近では母乳育児の赤ちゃんが、授乳後に赤ちゃんが泣くと「おっぱいが足りないのでは?」という不安からママがミルクを追加してしまうことなどから、飲み過ぎの状態「過飲症候群(かいんしょうこうぐん)」を起こしてしまうのです。
「母乳だけの育児でも、頻回授乳や泣いたらおっぱい、という指導のもとで、母乳分泌が異常に増えて、逆に飲みすぎによる問題が増えているよう」と、橋本先生は言います。
赤ちゃんの胃は大人の胃のようにくびれがなく、まっすぐなのが特徴
どうして、飲み過ぎが鼻詰まりの症状を起こすのでしょうか?
赤ちゃんの胃は大人の胃と違ってくびれがなくまっすぐなのが特徴です。そして胃の入り口にある噴門という部分の筋肉が未熟なので、ちょっとした動きで母乳やミルクをはき戻ししやすいのです。小さい胃に容量以上の母乳やミルクが入ってきた場合、口に戻って少量が口からタラ~っとたれる「いつ乳」という状態になり、口からだけでなく鼻から出ることもあるので、繰り返すと鼻詰まりやゼロゼロにつながるのです。
「すなわち飲みすぎると、飲みすぎた母乳やミルクを口から少しずつあふれ出す“いつ乳”に始まり、鼻閉、ゼロゼロ、よくいきんだりという症状が出てきます。そこで受診をすると多くは風邪と診断されて風邪薬が処方されることがありますが、過飲症候群の場合、薬では症状が改善しません」と、橋本先生。
「おなかがパンパンになって、うんちを出したいからいきみ、それが数日から数週間続くとおなかがますます膨満し、呼吸も苦しいので反り返るように泣くようになります。またうんちは便秘気味のこともありますが、少量の水分が多いジュルジュルのうんちを頻回に出すこともあり、肛門まわりのかぶれ(肛囲皮膚炎)も起こしやすいです」とのこと。
大人だって食べ過ぎたら何かしら体調が悪くなりますが、赤ちゃんも同じです。
「おなかがパンパンだったりおへそが突出(いわゆる出べそ)していたり、赤ちゃんが苦しそうにしていたら、風邪ではなく飲み過ぎを疑ってみましょう。よく飲んでますね!ではなく、この赤ちゃんのつらそうな症状のことをもっと知ってほしい…」と、橋本先生は力説します。
満腹中枢が発達する生後2~3カ月ごろまでは気をつけて
生後1カ月前後の赤ちゃんは、1日30~40gの体重増加が標準ですが、1日平均50g以上の体重増加をしていて、鼻詰まりやゼロゼロが見られたら、「飲みすぎ」を疑ってみてもいいかもしれません。
1カ月健診やそのほかの受診などで症状を伝え「過飲症候群」と言われたら、「泣いたらすぐ授乳」ではなく、抱っこしてあやしてあげたり、授乳以外の気分転換をしてみましょう。満腹中枢の発達は生後2~3カ月ごろと言われていて、それまでは授乳をすれば吐いてでも飲み続けます。「もうおなかいっぱいだよ」と言えない赤ちゃんなので、様子をみながら対応してあげましょう。
初めての育児をしているママたちにとって、「おなかがすいての泣き」「かまってほしいの泣き」「おしりが汚れての泣き」「暑い、寒いでの泣き」が見分けられるようになるには、少し時間がかかるかもしれません。泣いたら抱っこしたり授乳したりを続けながら、赤ちゃんの「泣き」の理由が少しずつわかるようになっていくといいですね。それがわかるようになれば、泣きのストレスからの解放されるだけでなく、育児が相当ラクになることでしょう。そして、「飲みすぎの泣き」もあるということを頭に入れて赤ちゃんのお世話に向き合ってみましょう。(取材・文:ひよこクラブ編集部)
お話:橋本武夫先生(社会福祉法人若楠・若楠児童発達支援センター長)
※この記事は「たまひよONLINE」で過去に公開されたものです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。