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3人目で初めて育休を取った父親。仕事復帰時に気分の波が押し寄せて・・・上がったり、下がったり【双極性感情障害・体験談】

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茉帆さんが3人目を妊娠中、気持ちが不安定になった長女、二女のケアは、大樹さんがしていました。

信州大学医学部附属病院には「周産期のこころの外来」があります。3人の子どもがいる中村茉帆さん(39歳)・大樹さん(41歳)夫婦。妻の茉帆さんは3人目を妊娠中にメンタルヘルスが不調となり、「周産期のこころの外来」を受診しました。当時、茉帆さんのつき添いで通っていた夫の大樹さんは、その後、「双極性感情障害(そううつ病)」と診断されました。
メンタルヘルスの改善のために専門医を受診した、茉帆さん・大樹さん夫婦に話を聞いた、全2回のインタビュー記事の後編です。

▼<関連記事>前編を読む

16年前、電車の中や会議の前に、突然、息苦しさに襲われたことが

現在、長野県で、古書ビジネスの会社を経営する大樹さん。今から16年前の2009年、まだ茉帆さんと結婚するより前に、自身の体に異変を感じたことがありました。

「会社設立から2年ほどたったときのこと。当時、会社は東京にあり、東京でくらしていました。帰宅途中の電車の中で急に息苦しくなり、電車に乗っていられなくなったんです。10駅先の自宅最寄り駅にたどり着くまでに、1駅ごと10回乗り降りをくり返しました。

その後、社長として参加しなればいけない会議の直前にも、同じような症状に襲われました。周囲のスタッフには『急におなかが痛くなった』と言ってごまかし、その場は何とか取りつくろいました」(大樹さん)

自分の症状についてネットなどで調べた大樹さんは、「パニック障害」という病名を見つけました。

「電車の中や人前で話そうとするときに急に息苦しくなるという症状が、パニック障害の症状の一つにあることを知りました。それらから判断すると、自分はこの病気なのかなと思ったんです。でも、周囲の人には言えなかったし、病院で相談することも思いいたりませんでした。

会社の規模が大きくなるにつれ、ストレスが増えていたころでした。でも、自分のことにかまっている余裕はなく、なんとか気力で乗りきりました。病院は受診しませんでした」(大樹さん)

メンタルヘルスが不調になった妻を見て、「自分がしっかりしなければ」と

その後、茉帆さんと出会い結婚。希望どおり子どもにも恵まれ、夫として父親として満ちたりた日々を送っていました。

「ある程度働き方に自由がきくので、上2人のときは育休ではなく、産後2~3カ月は仕事をセーブする形で、育児の時間を確保しました」(大樹さん)

「とくに1人目の育児はわからないことばかりだったので、夫と一緒に育児ができたのはうれしかったです。2人で力を合わせて育児をしたという実感がありました。
2人目が生まれたあとは、夫はおもに長女の相手を担当。赤ちゃん返りもしていた長女には、『いつでも見ているよ』『大切にしているよ』って夫からどんどんアピールしてもらいました」(茉帆さん)

3人目の妊娠中、茉帆さんのメンタルへルスに不調が現れました。

「茉帆の落ち込みが激しくなっていくのは、そばで見ていてよくわかりました。また、茉帆のおなかが大きくなっていくにつれ、上2人が赤ちゃん返りをするなど、少し不安定になっているのもわかりました。夫として父親として、私がフォローしなければいけない。そのことをプレッシャーに感じるようになっていました」(大樹さん)

3人目の出産の3カ月くらい前から、茉帆さんは信州大学医学部附属病院の「周産期のこころの外来」の受診を始めました。

「私はつき添いとしてついていき、一緒に話を聞いていました。メンタルヘルスをいい状態にして出産にのぞんでほしかったので、私ができることはやらなければ!と思っていました」(大樹さん)

育休明け、ハイテンションになったと思うと、ひどい落ち込みがやってくる

3人目が新生児期のころ。大樹さんは育休を取って育児に専念しました。

月1回「周産期のこころの外来」を受診したことで、不安や落ち込みを改善してから出産を迎えられたという茉帆さん。2024年2月に元気な男の子が生まれました。

「上2人の世話もあるので、3人目は出産前の1月から6月まで私は育休を取り、妻と一緒に子育てに専念することにしました。まったく仕事から離れたのは、3人目にして初めてのことです。仕事に関する情報は遮断し、家族のことだけを考える生活を送りました」(大樹さん)

産後のあわただしい日常が落ち着いた2024年7月、大樹さんは仕事に復帰します。

「もともと仕事が好きなので、張りきって復帰しました。『じゃんじゃん仕事をするぞ!』とテンションがすごく上がっているのを感じました。でも、その反動なのか、次にすごく気分が落ち込む時期がやってきてしまって・・・。これはちょっとおかしいと感じました。

そのころ、まだ茉帆が「周産期のこころの外来」を受診していたので、つき添いでついていったとき、少し自分のことも話したんです。そうしたら私の様子を聞いた村上先生が、『大樹さんもきちんと受診する必要があります』って。茉帆はかなりメンタルヘルスが改善していたので、受診は終了ということになり、次回からは私が受診することになりました」(大樹さん)

「双極性感情障害」と診断。専門家が近くにいる安心感もあり、症状は安定

つき添いではなく、患者として改めて村上先生の診察を受けた大樹さん。過去のパニック症状のことも含めて、自身のメンタルの浮き沈みについて話しました。先生の診断は「双極性感情障害」でした。

「双極性感情障害は、ハイテンションで活動的なそう状態と、ゆううつで無気力なうつ状態をくり返すとのこと。まさに私の症状にピッタリ合います。説明を受けたときすぐに納得できました。
実は、16年前もそんな精神状態にありました。私が過去に経験したパニック症状は、双極性感情障害でも現れることがあるそう。あのころ、私はすでに双極性感情障害だったんです。そのことが、先生の診断によって初めて明らかになりました」(大樹さん)

大樹さんは今も月1回ペースで受診していて、薬も処方されています。

「幸い大きなそううつの波が起きたのは仕事に復帰した直後の1回だけで、その後は自分でコントロールできる程度の小さな波に収まっています。仕事にも子育てにも支障はありません。症状が悪化したらすぐに先生に相談すればいいと思えることも、症状の安定につながっているような気がします」(大樹さん)

お互いにやってほしいこと、助けてほしいことをそのつど伝えていく

夫婦ともにメンタルヘルスの不調を経験したことで、メンタルヘルスをいい状態に保つために必要なことについて、2人で話し合ったそうです。

「先々の不安を考えると精神的に追い詰められてしまうので、そのときどきで必要なことを柔軟にやろうと話し合いました。私たちは2人とも分担をきっちり決めてやることが得意ではないから、長女のフォローは私が担当する、ということだけは決めていますが、それ以外はそのつど、やってほしいこと、助けてほしいことなどを伝え、夫婦でやり方を決めていこうと話し合いました」(大樹さん)

「私は産前にはメンタルヘルスを改善できて、夫は職場復帰後に双極性感情障害がもともとあったことがわかったので、いわゆる産後うつとは違うのかもしれません。でも、早めに先生に相談したことで、2人ともそれほど深刻な状態にはならずに済みました。
メンタルヘルスの不調を感じたとき、両親にも話したのですが、動揺せず受け入れてくれたことがありがたかったです。

産後うつはだれもがなりうることなので、不調や不安を感じたときはがまんしないで周囲に相談するとともに、専門家のアドバイスを受けることがとても大切だと実感しています。助産師さん、産婦人科の先生、保健師さんも親身になって話を聞いてくれました。力になってくれる専門家が身近にいると知ってるだけでも、とても安心できると思います」(茉帆さん)

【村上先生より】周産期の母親だけでなく、父親のメンタルヘルスのケアも重要

父親の産前産後のメンタルヘルス不調は、まだまだ世間に十分認識をされていないのが実情です。父親は妊娠・出産をするわけではありません。しかし育児によって負荷がかかった際に、今まで抱えていらっしゃった精神科的な問題が、表に現れてくる場合があります。夫婦の中で、1人が産後うつとなった場合は、もう1人が産後うつになるリスクが増加します。妊産婦さんだけではなく、その夫のサポートも重要です。

お話・写真提供/中村茉帆さん・大樹さん 監修/村上寛先生 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

専門家に相談することで、メンタルヘルスを改善した茉帆さん・大樹さん夫婦。産後うつを予防するには、「出産前からメンタルヘルスをケアすることがとても大切」と感じているそうです。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

村上寛先生(むらかみひろし)

PROFILE
医師。1985年生まれ。東京都出身。2011年順天堂大学医学部卒業。信州大学医学部内に日本で初めての周産期メンタルヘルスに特化した大学講座「周産期のこころの医学講座」を創設。信州大学医学部附属病院の「周産期のこころの外来」「周産期の父親の外来」にて、妊産婦や父親のメンタルヘルスサポートおよび産後うつの治療を行う。日本各地で周産期メンタルヘルスや母子保健に関する講演会・研修会も開催。3児の父。著書『さようなら、産後うつ 赤ちゃんを迎える家族のこころのこと』(晶文社)。

●記事の内容は2025年3月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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