小児科医が教える、脳にいい影響がある朝ごはん。朝ごはんしだいで、学校生活が楽しくなる!?
ストレスのせいで、緊張するとおなかが痛くなったり試験前に便秘になったり・・・。経験として、心(脳)の状態が腸に影響を与えることを理解している方も多いのではないでしょうか?
「食事を見直し、腸内環境が整うと脳にいい影響があるんですよ」と話すのは小児科医の工藤紀子先生。そこで、脳と腸の関係性と腸内環境を整える食事について聞きました。腸内環境が整うと脳もいい状態になり、学習も進むとか・・・。キーワードは「ねばねば」と「白より茶色」です!
ドキドキ緊張する場面では腸活ごはんが効く
――腸は「第二の脳」とも呼ばれています。脳にどんな影響を与えているのでしょうか?
工藤先生(以下敬称略) 脳と腸には互いに影響を及ぼし合う「脳腸相関」という関係性があり、ストレスがかかるとおなかの具合が悪くなる、というのもその一例。逆に腸の調子がいいと、ポジティブな気持ちになったり物事に集中できたりすることが最近わかってきました。
環境がガラッと変わる新学期や学校行事、大事なテストがあるときなど、子どもがドキドキするような場面に備え、日ごろから腸内環境を整えるのはもちろん、忙しい・食べられないからと食事を抜かず、腸を意識したメニューを用意してあげるといいんです。
――腸を整えることから子どもを応援するんですね。具体的には食事の内容でしょうか?
工藤 腸内環境を整える食事の内容について「シンバイオティクス」と呼ばれる組み合わせが注目されています。
シンバイオティクスの「シン」は一緒に、という意味ですが、善玉菌となる「○○菌」がつく食べ物(=プロバイオティクス)と菌のエサになるもの(=プレバイオティクス)、この2つを一緒にとることにより、相乗効果が得られ、腸内の善玉菌が増えやすくなるという考え方です。
「プロバイオティクス」には、乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌・麹菌などの有用菌、「プレバイオティクス」には食物繊維やオリゴ糖があげられます。
食物繊維は野菜、果物、海そう類、きのこ類、豆類などいろいろな食材に含まれていますが、「ねばねばしたもの」にはとくにプレバイオティとして働く水溶性食物繊維が豊富です。おくら、モロヘイヤ・山いも、海そう、果物ではバナナ・りんご・いちじく・プルーンなどがあげられます。
ねばねばといえば納豆ですが、納豆には納豆菌だけでなく食物繊維も含まれているので、ぜひ積極的にとってほしい食品です。
このほか腸内で食物繊維を分解・発酵する過程でできる短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)は悪玉菌を抑えるはたらきがあり、腸内環境の改善に有効な物質として注目されています。
無理なくできる!腸内環境にいい食事の4つのポイント
何をどう食べれば、腸内環境を整えやすくなるでしょうか? 食事のポイントを工藤先生に聞きました。
【ポイント1】主食を白いものから茶色いものに変える
――どのように食べ方を工夫するといいですか?
工藤 食事で腸を整えるにあたって、大切なのは毎日続けること。主食を食物繊維の多いものに変えると簡単です。
たとえば水溶性食物繊維の豊富な『もち麦』。白米100gあたり食物繊維含有量が0.5gであるのに対して、もち麦の場合は約12.9gにもなります(水溶性:3.9g不溶性:9g)。
もち麦は白米に混ぜて炊くとかなり食べやすくなります。ぷちぷちとした歯ごたえがあるので、自然とかむ回数が増え、脳に刺激を与えることもできます。慣れてきたら、アマランサス・あわ、きび、もち麦などが入った『雑穀米』もおすすめです。スーパーなどでも売っているのを見たことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
パン食の場合は、小麦の粒を丸ごと使っていて食物繊維を多く含む『全粒粉』のものを選ぶようにするといいですね。全粒粉は不溶性食物繊維が多くなりますが、便のカサを増やす効果があり、便秘改善にもつながります。
ごはんもパン生地も茶色になるなので、主食は『白いものより茶色のもの』を意識してみましょう。
【ポイント2】納豆でねばねば朝食
――1日のエネルギー源となるのが朝食です。
工藤 必要な栄養をとるためにも朝食は欠かさないようにします。朝食を抜くと便秘になる、午前中に集中できない、肥満になりやすいことが指摘されています。また食事が1日2回になると、1日に必要な栄養をまかなうのは難しくなります。成長期にバランスよく食べるためにも朝食は欠かせません。
規則正しく3食とることが大切で、食事を抜くと子どもでも血糖値の調整がうまくいかなくなるのではないか、という指摘があります。また、糖質が過剰に含まれた食品ばかり食べ、あまりかまず早食いをしたときも血糖値の調節がうまくいかなくなるのではという考え方も出てきています。
忙しい朝でも簡単に用意できて腸内環境にいいのが納豆です。食物繊維が豊富なもち麦ごはんや雑穀ごはんにかければ、“シンバイオティクス”と呼ばれる組み合わせになり、善玉菌をアップすることができます。しらす、ごま、卵などをトッピングすると栄養価もアップします。
パン食の場合は全粒粉のパンにバターを塗り、納豆と発酵食品のチーズをのせて焼く『納豆トースト』もおいしいです。食べ応えもあるので、ぜひ試してみてください。
【ポイント3】朝食やおやつにヨーグルトを追加して
――腸にいい食べ物といえば、ヨーグルトが思い浮かびます。どんなタイプをどうやって食べるとより効果的でしょうか?
工藤 まさしく、乳酸菌やビフィズス菌を含むヨーグルトは朝食やおやつにぴったり。ヨーグルトは糖質量の少ない無糖のものを選びましょう。甘みづけには冷凍フルーツや1歳以上のお子さんであればはちみつがおすすめです。
果物の栄養価は冷凍でも生でも変わりません。日本人の果物の摂取量は、高齢者を除いて全体的に不足しているといわれているので、さっと食べられる冷凍フルーツをぜひ活用したいところです。ボリュームが欲しいときはバナナをプラスすれば食物繊維の量も増え、より腸にいいメニューになります。
【ポイント4】サバ缶を食べて脳と腸にいいDHAを摂取
――そのほか、おすすめの食材はありますか?
工藤 DHAは脳の発達にかかわる栄養素として知られていますが、腸の炎症を抑え、善玉菌の増殖をうながす働きもあります。主に青魚からとれるので、積極的に魚を食べましょう。
――調理が難しい、とつい避けてしまいがちですが大事なんですね。
工藤 最近は消費量の減少を抑えるために、調理がしやすい下処理済みのものもお店に多く並んでいます。より手軽に使いたいのならサバ缶がおすすめ。骨ごと食べられるので、生の状態よりも、カルシウムや亜鉛といった栄養の含有量が多いのもポイントです。
腸内環境は3歳までに多くが決まる。離乳食を大切に
――子どもの腸内環境は何歳ごろから意識するといいでしょうか?
工藤 私たちの腸内には多種多様な細菌が生息しています。この様子を腸内フローラ(腸内細菌叢)といいますが、腸の菌の基礎はおおよそ3歳までにできてきます。ですから、離乳食のうちから月齢に合わせた食材を使って、腸にいいメニューを積極的に取り入れてみるといいでしょう。
今離乳食をあげているというママ・パパであれば、赤ちゃんの時期にいろいろな食材を食べさせてあげましょう。腸内環境を整えるだけでなく、離乳食でたくさんの味を体験すると、5~6歳のころに好き嫌いが減る傾向があるので一石二鳥です。
お話・監修/工藤紀子先生 取材・文/中澤夕美恵、たまひよONLINE編集部
「腸活ごはん」といえば大人向けのイメージでしたが、幼稚園や学校生活を健やかに楽しく過ごすためにも、腸内環境に注目したいですね。
●記事の内容は2025年3月の情報で、現在と異なる場合があります。