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生後3カ月で診断された骨の病気で低身長の長男。「みんなみたいに大きくなってみたい」の言葉にやっと明るく答えられるように【体験談】

更新

4歳のときの橙吾くん。現在もピアノ教室に通っています。

是永菜絵さんには、小学校4年生の男の子と小学校1年生の女の子の2人の子どもがいます。長男・橙吾(とうご)くんは、生後3カ月のときに2型コラーゲン異常症関連疾患の1つである、先天性脊椎骨端異形成症(せんてんせいせきついこったんいけいせいしょう)と診断されました。脊椎骨端異形成症は、10万に1人といわれるまれな病気で、橙吾くんの主な症状は低身長と背骨が曲がる側弯症です。小4の現在は、身長89cm。2~3歳児の平均ぐらいの身長です。
是永さんに橙吾くんの手術のことや成長、小学校生活、お友だちとの関係について聞きました。全2回インタビューの後編です。

▼<関連記事>前編を読む

4歳のときに幼稚園に入園

幼稚園年中クラスの運動会で。

橙吾くんが集団生活を始めたのは、4歳になってから。是永さんの仕事と第2子が1歳になったのをきっかけに幼稚園に入園しました。

――幼稚園について教えてください。

是永さん(以下敬称略) 夫は大工で、橙吾を授かってから独立を決めたのですが、そのときはまだ病気のことは知りませんでした。私も夫の会社の事務を手伝っていたし、橙吾が3歳のときに下の子を妊娠したので、そろそろ橙吾を保育園に通わせようと思ったんです。しかし先生に病気のことを話すと「うちの園は人手がたりないから」などと言われて、何園も断られてしまって・・・。でもめげずに探していたら、公立の幼稚園の先生が「どうぞ来てください」と言ってくれて、うれしくて思わず泣いてしまいました。

橙吾も、みんなと遊んだりすることが本当に楽しそうでした。

――第2子を妊娠したとき、不安はありませんでしたか。

是永 先天性脊椎骨端異形成症の主な原因は、軟骨の成分である2型コラーゲンを作る遺伝子の変異によるものです。橙吾の場合は、遺伝子の突然変異で、遺伝によるものではないとのことでしたが、それでも下の子を妊娠したときは不安でした。

橙吾は最初、妊婦健診のエコー検査で大腿骨(太もも)の骨が短いと言われたので、下の子のときのエコー検査では医師に「大丈夫でしょうか?」と何度も何度も聞きました。

――小学校について教えてください。

是永 エレベーターがある小学校が隣の地区にあったので、その小学校に入学するために引っ越しをしました。橙吾は低身長で手や足が短いこともあり、同じ年齢の子たちと同じペースでは、階段を下りたり、上がったりできないし、階段から落ちるなどの危険もあるかなと思ったんです。

今は4年生ですが、通常学級と特別支援学級に在籍していて、特別支援学級では国語、算数の授業を受けています。体育は通常学級で行い、加配の先生がついています。医師からは「脊椎が弱いのでマット運動などはしないように」と言われています。
また手を洗う蛇口に手が届かないので、小学校で踏み台を用意してくれたり、机や椅子も橙吾に合うように高さを調整してくれています。

――小学校は、どのようにして通っているのでしょうか。

是永 体が小さくてランドセルを背負って歩けないので、私が車で送迎していました。しかしこの春から下の子が小学校に入学して、同じ小学校に通うようになったら橙吾が「一緒に行く!」と言い出し、今は集団登校の登校班の輪に入り、歩いて登校しています。ランドセルは私や娘が持って歩いています。
でもみんなのように体力がないし、歩幅が狭くみんなと同じスピードで歩けないことを、ジレンマに感じているようです。

――小学校に入学するとき不安はありましたか。

是永 自分で荷物を持って教室を移動したり、掃除の時間に机を後ろに下げたりできないので、「みんなについていけるかな?」と不安ばかりでした。
しかし実際に入学してみたら、友だちが「橙吾、荷物持つよ!」と自然に言ってくれるんです。
そのため橙吾には「友だちが困っていたら手伝ってあげてね! 橙吾にも、できることいっぱいあるよね?」と伝えています。手伝ってもらうだけでなく、お互いさまと思えるような関係性を築いてほしいと思っています。

小学校1年生から半年ごとに側弯症の手術を

半年ごとに手術をして背骨を矯正。

橙吾くんは背骨が曲がる側弯症もあり、小学校1年生のときから半年に1回手術を受けています。

――橙吾くんの側弯症について教えてください。

是永 橙吾は、先天性脊椎骨端異形成症の症状で、2歳になり歩き始めてから背骨の曲がりが目立つようになりました。
医師からは「進行が早いタイプで、ほうっておくと内臓が圧迫されて呼吸機能に影響するし、成長に伴い背中や腰などに痛みが出てくる」と言われています。そのため小学1年生のときから半年ごとにこども病院で手術を受けています。最初の手術で背中に金属棒を入れたときはゆがみがかなり矯正されて身長が7cmほど伸びました。その後は、半年に1回の手術で金属棒を少しずつ伸ばしていくのですが、1回の手術で身長は5mm~1cmぐらい伸びます。手術時間は2~3時間ぐらい。1週間ぐらい入院が必要です。

側弯症で背骨が曲がっていたときは縄跳びも跳べなかったのですが、背骨がまっすぐになってきたら縄跳びも跳べるようになりました。食べる量も増えてきました。身長も小学1年生では72cmだったのに、小学4年生の今では89㎝になりました。そうしたことひとつひとつが自信になっているようです。

――橙吾くんは、手術を嫌がったりしませんか。

是永 最初は怖がって大泣きしていましたが、最近は頑張ってくれています。病院で、橙吾と同じ側弯症の女の子と出会い、意気投合してすごく仲よくなったんです。担当の先生もそのことを知っていて、その子とだいたい同じ時期に入院・手術をするようにしてくれています。入院や手術はつらいけど、「その子と会える!」と思って頑張っているようです。

――側弯症の手術は、どのぐらいまで続くのでしょうか。

是永 医師からはあと4~5年と言われていて、「身長は120cmぐらいにはなりそうだけどな~。そのぐらいになったらいいな~」と言われています。
橙吾はたまに「1回、みんなみたいに大きくなってみたいな~」と言うことがあり、「頭がいい人がボタンひとつで高さが調整できる靴を開発してくれたらいいよね~」なんて話したりもしています。

1人でコンビニに行って、おやつを買うのがマイブーム

最近の橙吾くん。

橙吾くんは、明るくて好奇心旺盛です。是永さんも橙吾くんが「やりたい!」と言うことは、なるべくさせてあげたいと考えています。

――橙吾くんは、習い事はしていますか?

是永 英語とピアノ、学習塾に通っています。病気で、みんなと同じようにできないこともあるけれど、橙吾が「やりたい!」と言うものはなるべくさせてあげたいと考えています。将来は、ピクサーで映画を作る仕事がしたいなど、いろいろな夢をもっています。

――最近の橙吾くんについて教えてください。

是永 最近は、1人でコンビニに行っておやつを買うのがマイブームです。最初は、心配して「一緒に行こう。高いところのもの取れないでしょ?」と言ったのですが、橙吾は「1人で大丈夫! 取れないときは、店員さんにお願いして取ってもらうけん」と言うんです。

小学校で友だちに手伝ってもらったりする経験を通して、困っているときは「取って!」「手伝って!」と言うと助けてくれる人たちがいるとわかったようです。たくましくなったな~と感心しています。

また橙吾は、人懐っこくて明るい性格なんです。小学校の先生からは「橙吾くんは明るいけん。やらかしても許しちゃうんですよね~」と言われたこともあります。持ち前の明るさとコミュニケーション能力の高さで、きっと将来は、自分で人生を切りひらいていくんだろうな・・・と思っています。

情報がほしくて、2型コラーゲン異常症患者・家族の会に入会

下の子が小学校に入学したときの記念写真。

是永さんは、2型コラーゲン異常症患者・家族の会に入会しています。2型コラーゲン異常症は、軟骨、目の硝子体、内耳などに症状が現れる骨の病気の総称で、橙吾くんと同じ先天性脊椎骨端異形成症をはじめ、スティックラー症候群1型、ニースト骨異形成症などさまざまな病気があります。

――2型コラーゲン異常症患者・家族の会に入られたときのことを教えてください。

是永 橙吾が2歳のときに、2型コラーゲン異常症患者・家族の会の前身となる、つくしの会(軟骨無形成症患者・家族の会)の中にあった2型コラーゲン異常症部会に入会しました。
入会した理由は、脊椎骨端異形成症は10万に1人といわれるまれな病気のため情報がほしかったんです。入会したら部会代表の毛利さんが脊椎骨端異形成症の人たちが集まるグループLINEに招待してくれて、いろいろな人の話を聞くうちに、将来に見通しがもてるようになりました。

橙吾が診断されたのは生後3カ月で、私はずっと将来を悲観していました。でも今は、橙吾と「病気になったから出会えた人たちもたくさんいるし、気づけたこともあるよね! 人生悪いことばかりじゃないよね」と話し合っています。

【澤井先生から】学校や家族会の交流などで、広い世界を経験して

橙吾くんのX線画像。側弯症の手術によって、体のゆがみが矯正されて、身長も伸びてきた。

脊椎の異常な彎曲(脊柱後側彎症および脊柱前彎症)は、小児期には重症化する傾向があります。そして頚椎(椎骨)の不安定もあり、脊髄損傷の危険性が増加します。また内反股や内反足などがあるため歩行がしにくいです。
橙吾くんは運動盛りなので体を動かすことはいいことである一方で、首に負担がかかるマット運動などは危険があるため、お母さんと学校の先生でよく話し合って、そうした部位に極端に負担がかかる運動は避けるようにしましょう。学校のお友だちがいろいろ手伝ってくれていて、とてもよかったです。学校はもとより、家族会での交流など広い世界を経験していっていただければと思います。

お話・写真提供/是永菜絵さん 監修/澤井英明先生 協力/2型コラーゲン異常症患者・家族の会 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

先天性脊椎骨端異形成症を含む、2型コラーゲン異常症は、指定難病ではありません。是永さんも「指定難病ではないので将来が不安」と話します。2型コラーゲン異常症患者・家族の会では、指定難病の認定によって、小児から成人まで切れ目のない医療・支援の実現をめざしています。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

2型コラーゲン異常症患者・家族の会のHP

澤井英明先生(さわいひであき)

医学博士。兵庫医科大学大学院看護学研究科特命教授。1984 年高知医科大学医学部卒。同年兵庫医科大学産科婦人科学入局。2006年京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻遺伝カウンセラー・コーディネータユニット准教授。2010年兵庫医科大学産科婦人科准教授。2017年同病院遺伝子医療部教授を経て、2025年4月より現職。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年5月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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