「スマホ育児は絶対ダメ、なんて無理・・・」。でも、少しでもいいから気をつけて!【ママ小児科医】


“ママ友ドクター®ゆみ先生”として診察室やSNSやオンラインスクール、コミュニティで、子どもの発達に悩む親をサポートしている西村佑美先生は、12歳の長男、9歳の長女、5歳の二男を育てるママでもあります。西村先生が実践していたことをベースに子どもの発育・発達に大切なことを聞く連載「ママ小児科医がすすめる ポジティブ育児」の4回目です。今回は1~3歳ごろのスマホとのつき合い方についてです。
どうして乳幼児期のスマホは"ちょっと慎重"が合言葉?
「あ~、ごはん作る10分間だけでも、じっとしていてくれたらいいのに!!」・・・ママたちからよく聞くこの悲痛な叫び。そんなとき頼りたくなるのが、"スーパー子守り"のスマホ。私もお世話になった魔法の子育てツールです。でも、3歳までの乳幼児期は脳の発達がぐんぐん進む時期。ことばも感情も運動能力も大人と子どもの双方向のやり取りで伸びます。スマホの知育アプリや動画から学ぶことも確かにあるけれど、日本小児科医会では〈スマホに子守りをさせないで!〉とリーフレットを出すほど注意喚起し続けています。なぜなら「画面にくぎづけになると、親子のやりとりが減り言葉の発達や睡眠リズムに影響がでる」と言われているから。スマホを使って子育てをするママ・パパを責めるつもりはないけれど、今日はスマホに育児をさせるリスクと私が行っている対策をご紹介します。
年齢別のスマホ利用の目安をまとめてみると・・・
キーワードは「一方通行を避ける」です。赤ちゃん時代から子どもは、ママやパパとのやりとりで、どんどん脳神経回路が育ちます。でもスマホで動画を見せてしまうと、狭い視界から情報がただただ脳に流れてくるだけに。大事な時期に育つべき力が育たなくなります。世界保健機構(WHO)も「2歳未満は(スマホなどを見せる時間は)ないほうがよく、2〜4歳でも1日1時間までにしましょう」と提唱しています(上の表参照)。
でも「え〜っ!じゃあ絶対ダメなの?」って思いますよね? そんなことないです。
世界のガイドラインを"わが家ルール"に変えるヒント
スマホ育児には慎重になってほしいのですが、たとえば親子でスマホを一緒に見て、おしゃべりしながらだと、むしろ会話の"きっかけ"になります。過去のビデオ通話の研究では、画面越しでも「○○ちゃん、見てみて!」って名前を呼んだり、まねっこ遊びをすると語いが増えるという報告も。つまり"どう使うか"なんです。
幼い子どもたちとスマホなどのメディアデバイス(スクリーンタイム)の使い方、そして睡眠時間の目安の提唱ガイドラインが出ています。さまざまな研究や報告をもとにしていますが、キチンと守るのは正直大変。 それでも、この目安時間は頭に入れてなるべく意識を続けていきましょう。わが子が少し大きくなったころに、スマホ依存から守ることにもつながります。
スマホとの上手なつき合い方"3ステップ"をお伝えしています。
【ステップ1】タイマーを子どもと一緒にセット
「ほら、ピピッってなったらおしまいだよ〜」と、"約束の見える化"。もしぐずってもニコニコしながら「おしまい」と言って終わらせる習慣を。少しずつでも、切り替えや約束を守る練習になります。
【ステップ2】生活リズムを優先
食べる・遊ぶ・寝るが整っていれば、少しの動画はそんなに心配しなくても大丈夫!子育ては完璧よりも、だいたいでOK!の精神が重要。ちなみに、外遊びの時間が十分確保できれば、デバイス時間による社会性の影響は少ない、という報告もあります。
【ステップ3】親も"ながらスマホ"減らしリアル体験を
スマホ置き場作って通知オフ。親とのやりとり時間こそが最高の学びの時間。ちょっとした工夫でいいのでデジタルから離れて一緒に過ごす意識をしましょう。何より、あっという間に大きくなる子どもとの時間を堪能しないと、後悔します(私も懐かしんでます・・・)。
「スマホ=悪者」ではなく、一方通行な利用をできるだけ避け、"親子で一緒に楽しむメディアツール"と思いましょう。 私も子どもにスマホを渡す必要があるときは、なるべく声をかけながら同じ画面を見て。これは「共同注意」と呼ばれ、社会性や言葉の習得力、集中力を育てることができます。
今日からできる!スマホに頼りすぎない工夫とQ&A
スマホに頼らない生活のヒントを、具体的な例からお答えします。
Q:料理中やスーパーのレジ列でグズグズ・・・、どうしよう?
そもそも、子どもがグズる理由を考えて対応するのが重要。心理学的には、子どもの行動には必ず理由があります。たとえば(1)飽きた(2)眠い(3)暑い(4)おなかすいた(5)甘えたい(6)そのほかの不機嫌になる理由・・・。スマホを渡す前に、それらに先に対応していきましょう!ちなみに(1)に対しては以下のような工夫を!
・小さいペットボトルにビーズや液体を入れた"手作り楽器"をさっとだす。コスパ最強簡単おもちゃに子どもは意外と夢中に(出先なら小石を入れてさっと作ることも可)
・マグネットやシールの絵合わせ本を与える(カードより散らばりにくい)
・水のペンの塗り絵やお絵描きボード(ペンが落ちないようにひもをつけて)を渡す
・お気に入りの人形や車のおもちゃを渡す
・お気に入りのハンディタイプの図鑑を渡す
・ちょこっとおやつを与えてみる
・スマホを渡すなら、内側カメラモードにして自分の画像を加工させて遊ばせる
こういう"ぐずり対策3分アイデア"を10個くらいストックして、手間でもママバックに準備を。乳幼児のママは、お出かけ時くらいはミニマリスト生活はちょっとがまんを。お出かけ対策の専用ミニバックを用意してもいいかも。困ったときにスマホに手を伸ばす回数をぐっと減らせます。こうやって、最初は親がこまめに介入しながら、子どもたちに暇になったときスマホをみる以外の過ごし方を身につけさせましょう。
Q:長距離ドライブ・電車移動ではスマホOKですか?この前2時間見せちゃいました・・・
長距離移動って本当に大変ですよね!わが家の工夫をご紹介します。
・ドライブならお気に入りソングを流してみんなで「せ〜の!」って合唱。意外と車内カラオケ盛り上がります!またアニメや幼児番組など長めのものを見せるならOK。ショート動画ブームの影響で、短い動画しか見れない子どもが増えています(ストーリーを楽しむ忍耐力が育たない)
・もし、電車移動で親の手があいているなら、前述の“ぐずり対策3分アイデア”に加えて、100円ショップなどで、スクイーズやスライムなどミニアイテムも用意。絵本もあるといいですね。また、お気に入りのおもちゃをたくさん持ち込むのもOK。2時間の移動だとしたら、最初の1時間はこういう形で5分くらいひとり遊びができるものを次から次に渡して過ごし、おやつや絵本タイムを挟み、残り時間を知育アプリをやったり一緒にアニメなどを観る時間にしてみましょう。子ども1人がスマホデバイスを操作する時間はなるべく少なく!
Q:今日、動画を見せすぎちゃった・・・、罪悪感でいっぱいです
大丈夫!そんな日はだれにでもありますよ。たとえばこんな"リセット術"で気持ち切り替えましょう!昼間の一方通行のデジタル情報に偏った興奮気味のお子さんの脳に、双方向な楽しいアナログやり取りで上書き保存しましょう。 これは私の子育てで意識していることです。
1.外遊びで身体をめいっぱい動かす!
2.寝る30分前からお部屋を少し暗めにしてゆったりすごす。
3.寝る前に絵本をよみきかせ。ただ読むのではなく、質問したり感想を述べながら読みます。
スマホ育児が「絶対ダメ」なんて、現代のママ・パパには無理な話。けれど、たとえばオーストラリアでは16歳未満のSNS利用が禁止されたように、スマホ依存はこれからの時代を生きる子どもたちには深刻な問題。スマホに頼らない時間の過ごし方を幼いうちから覚えさせていきましょう。
・スマホ使わせない時間帯を決めておく
・見るときは親子で一緒に楽しむ(横で「わぁ!」って共感するだけでOK)
・見終わったらリアル体験でバランスを(「動画見たね〜、今度はお絵かきする?」)
子どもをスマホと上手につき合わせていけば、スマホに頼らない子育ても同時にめざせます。でも、完璧じゃなくていい、"ほどほど"が一番です。
文・写真提供・監修/西村佑美先生 構成/たまひよONLINE編集部
「スマホがない生活は考えられない」という人は多いでしょう。家族間での連絡ツールにも、保育園連絡帳にもスマホは便利です。「絶対ダメ、は無理なのはわかっているから、それぞれの家庭で上手にルールを作ってほしい」と西村先生は言います。
【参考文献・サイト】
公益社団法人 日本小児科医会『スマホに子守りをさせないで!』リーフレット(2023年改訂版)
世界保健機関(WHO)『5歳未満児の身体活動・座位行動・睡眠ガイドライン〈日本語版(暫定訳)〉』(2019年)
国立成育医療研究センター 「乳幼児期のテレビ・DVD長時間視聴は危険です」(2023年9月19日)
大阪大学/浜松医科大学 「外遊びが幼児期のデジタル視聴による神経発達への影響を弱める」(2023年1月24日)
Strouse, G. A., Troseth, G. L., O'Doherty, K. D., & Saylor, M. M. (2018).
Co-viewing supports toddlers' word learning from contingent and noncontingent video. Journal of Experimental Child Psychology, 166, 310-326. doi:10.1016/j.jecp.2017.09.005
●記事の内容は2025年6月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。