小児科医ママが教える!猛暑に負けない、子どもの心と体を育てる「おうち遊び」のすすめ


西村佑美先生は、“ママ友ドクター®ゆみ先生”として診察室やSNSやオンラインスクール、コミュニティで、子どもの発達に悩む親をサポートしています。そして、12歳の長男、9歳の長女、5歳の二男を育てるママでもあります。先生が実践していたことをベースに子どもの発育・発達に大切なことを聞く連載「ママ小児科医がすすめる ポジティブ育児」の5回目です。今年の夏も猛暑が続いていますが、今回は暑い夏でも子どもの心を育てる遊び方についてです。
あまりの猛暑に外遊びができない!?
こんにちは!発達専門の小児科医・西村佑美です。毎日の子育ての悩みをひとつでも解決できるよう、さまざまなヒントを私の子育て経験と交えて提供しています。今回は「猛暑で外遊びができない」という悩みについて。
子どもは外で体を動かす時間がたりないと、家の中でエネルギーを持てあまして親を困らせるもの。けれど、夏は暑すぎて外にいられません!
でも大丈夫。暑い夏を「制限」ではなく「新しい遊びの発見」のチャンスに変えていきましょう!
猛暑が子どもに与える影響って?活動制限が心配な3つの理由
最近の日本の夏は本当に暑い・・・。私が子どものころは、夏休みといえば朝からセミ取り、プール、公園で鬼ごっこ.・・・、と外遊び三昧でした。でも今は、気温35度超えの日も珍しくありません。環境省の熱中症予防情報サイトでは、暑さ指数(WBGT)が31度を超えると「運動は原則中止」とされています。小さい子はアスファルトからの照り返しの影響で、大人よりもはるかに高温環境にさらされます。
【理由1】 運動発達への影響
乳幼児期は、体を動かすことで脳が発達する大切な時期。WHO(世界保健機関)のガイドラインでは、1〜2歳児は1日3時間以上、3〜4歳児も同様に活発な身体活動が推奨されています。猛暑で外遊びが制限されると、この運動量を確保するのが難しくなり家で走り回ったり、夜の寝つきが悪くなり、生活リズムが崩れたり・・・、よく相談を受けます。
【理由2】 社会性の発達への影響
公園や児童館でのほかの子とのかかわりは、社会性をはぐくむ大切な機会。おうちにいる時間が増えるとこうした経験が減り影響が出る可能性があります。
【理由3】 感覚体験の不足
砂遊び、水遊び、風を感じる、虫の声を聞く・・・、外遊びは五感を刺激する宝庫です。これらの感覚体験は、脳の発達に欠かせませんので体験の幅が狭まることは避けたいところです。
過度な心配は禁物!発達を促す「おうち・室内遊び」を取り入れよう
でも実は、子どもの発達はとても柔軟で、環境に適応する力を持っています。大切なのは「今できることは何か」を考えることです。年齢別におすすめな「おうち・室内遊び」の具体的な方法を紹介します。
乳児期(0歳):五感を育てる涼しい遊びを
0歳代のころは、五感を育てることを意識した遊びをしてみましょう。3つ紹介します。
【1】 氷遊び・水音あそび
製氷皿で作った氷をジップロックやタオルに入れて、赤ちゃんに触らせてみましょう。 あるいはペットボトルに水を入れて振ると「チャプチャプ」という音でたのしめます。「つめたいね〜」「ツルツルだね」と声をかけながら。安全のため、必ず大人が見守り、氷は大きめサイズで誤飲を防ぎましょう。
【2】 うちわでパタパタ遊び
うちわで風を送りながら「風だよ〜」「気持ちいいね」と話しかけます。視覚(うちわの動き)、聴覚(パタパタ音)、触覚(風)を同時に刺激できます。赤ちゃんが目で追えるなら、ゆっくり左右に動かしてみましょう。
【3】 冷たいタオルでいないいないばあ
冷蔵庫で冷やしたタオルで「いないいないばあ」。冷たい感覚と、大好きなママの顔が交互に現れる楽しさで、赤ちゃんも大喜び。認知発達にも効果的です。
幼児期前期(1歳〜2歳):体を動かす室内遊びを
1歳~2歳のころは、冷房が効いた室内でも、体を動かす遊びを工夫しましょう。
【1】 新聞紙プール
新聞紙をビリビリ破いて、段ボールや衣装ケースに入れて「新聞紙プール」に。全身を使って遊べて、音も楽しい!片づけは大変ですが、わが家では、破いた新聞紙を最後にゴミ袋に入れて「大きなボール」を作り、投げっこ遊びまで楽しみました。
【2】廊下ではいはいレース
歩けるようになっても廊下ではいはいレースを。ママやパパも一緒にはいはいすることで、子どもは大喜び。全身運動になり、体幹も鍛えられます。
【3】 おふろプールごっこ(水着着用)
公園での水遊びもいいけど、おふろに少しぬるめの水を張って、水着を着せて遊ばせるのも楽しいです。コップやじょうろで水を移したり、シャボン玉を作ったり。安全のため、絶対目を離さないで。
幼児期後期(3歳〜5歳):想像力と社会性を育む遊びを
想像力を育てたい3歳~5歳のころ、室内遊びで工夫できることを紹介します。
【1】おうちキャンプ
室内にテントを張る(なければシーツで代用)だけで、特別な空間に。懐中電灯で影絵遊びをしたり、「キャンプごっこ」でワクワク過ごせます。わが家はネットでみつけたポップアップ式テントを3つほど敷き詰めて遊んだことも。
【2】大きな紙にお絵描き
定番中の定番のお絵描き。床に広げて絵具と手で描いてみたり。片付けが大変にならないよう、事前に新聞紙やブルーシート等を広く敷いてから親子で楽しんで。
【3】室内障害物競走
お布団で山をつくったり、クッションを飛び越えたり、テーブルの下をくぐったり、室内に障害物コースを作ります。「次は後ろ向きで!」「ケンケンで!」とルールを変えれば、飽きずに楽しめます。
【4】 ごっこあそび
100円ショップで買った商品で「お店屋さん」を開店。あるいは、コスチュームを着てヒーローやプリンセスになりきりる遊びも。ごっこ遊びは、他人の立場になりきる力=「心の理論(Theory of Mind)」が身につくとされ、社会性を育てます。
猛暑を乗りきる!小児科医ママのアドバイス
昼間外で活動できない真夏だからこそ、規則正しい生活は子どもの発達にとても大切です。
生活リズムと整える工夫と、熱中症対策を紹介します。
【生活リズムを整えるポイント1】 朝の涼しい時間を活用
朝6時〜7時の比較的涼しい時間に、ベランダや玄関先で外気浴を。そのまま朝の公園で遊んだり朝食ピクニックも!暑くなる前に帰宅して。遊び足りなければ夕方また公園へGO!
【生活リズムを整えるポイント2】 おふろの時間を工夫
日中は、外から帰ってきたら早めにぬるめのシャワーでさっぱりと。寝る前に再度、ぬるめのおふろに入ることで、体温が下がって寝つきがよくなります。
【熱中症予防のポイント1】 水分補給をゲーム感覚で続ける
「お茶タイム」を決めて、みんなで「カンパーイ!」。楽しく水分補給ができるよう最低限飲んでほしいラインにシールを貼るなど、見える化すると子どもも積極的に飲んでくれます。
【熱中症予防のポイント2】 室温は26〜28度をキープ
寝る時もエアコンは必須ですが、冷やしすぎは禁物。扇風機を併用して、空気を循環させましょう。
【熱中症予防のポイント3】ダラダラ汗と真っ赤な顔はレッドカード
子どもは汗っかきゆえ、脱水傾向にもなりやすいです。さらに顔が真っ赤になったら体温を下げられなくなってきているサインなので、すぐに休憩し体を冷やしましょう。
ママ・パパも「ゆっくり」を大切に
猛暑の日は、無理に体を動かさなくても大丈夫。「ゆっくり」過ごすことも、子どもの発達には大切です。
エアコンの効いた部屋で、ゆったり絵本を読む時間は、親子の絆(きずな)を深める貴重な時間。また「お昼寝アート」は、子育ての素敵な思い出になります。私のスマホにもたくさんわが子のお昼寝の写真が残っています。
猛暑で家にこもりがちになると、終わりの見えない室内遊びに疲れ果てて、つい子どもにイライラしてしまったことが私も何度もあります。
ときには、テレビや動画に頼ったっていい。ママやパパが笑顔でいることが、子どもにとって一番の栄養です。子どもにとって一番大切なのは、安心して「自分のペース」で過ごせることです。そこで新しい「遊び」を発見できたらさらにハッピー!
SNSや雑誌で見るような体験をいろいろさせたい夏だけど、冷房の効いた部屋でゆっくり音楽を聴くだけみたいな「なんでもない日」の中でも、子どもの心はしっかり育っていきます。
文・写真提供・監修/西村佑美先生 構成/たまひよONLINE編集部
2025年の夏も猛暑です。幼稚園や小学校の夏休みもあって、「暑すぎて外に出れない」と困っているママ・パパたちもいるかもしれません。西村先生からのアドバイスを参考にしてみてはいかがでしょうか。
【参考文献・資料】
・WHO(世界保健機関)「Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age」(2019)
・環境省「熱中症予防情報サイト」暑さ指数(WBGT)について
・日本小児科学会「子どもの発達段階に応じた遊びの重要性」(2020)
・American Academy of Pediatrics. "The Importance of Play in Promoting Healthy Child Development and Maintaining Strong Parent-Child Bonds" (2018)
・日本体育協会「幼児期運動指針」(2012)
・厚生労働省「健やか親子21(第2次)」中間評価報告書(2020)
●記事の内容は2025年7月の情報で、現在と異なる場合があります。