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胎児発育不全と診断され、595gで生まれた長女。3歳で「このままでは身長が伸びなくなる」と言われ、ホルモン注射治療を【低出生体重児】

更新

4カ月の入院をへて、退院の日に家族そろっての1枚。

イラストレーター・漫画家のささむらもえるさんは、第1子を妊娠中に胎児発育不全と診断され、妊娠28週で体重595gの長女・のこちゃんを出産しました。現在5歳になったのこちゃんは、3歳を過ぎてから低身長の可能性を指摘され、成長ホルモンの治療を検討することに。もえるさんに、NICU(新生児集中治療室)に入院中からの、のこちゃんの成長について聞きました。全2回のインタビューの後編です。

▼<関連記事>前編を読む

小さいながらも一生懸命生きる、娘の姿

GCUで沐浴中ののこちゃん。とっても気持ちよさそうです。

小さく生まれたのこちゃんは産後すぐNICUへ運ばれました。もえるさんは原因不明の湿疹が出てしまったためNICUに入ることができず、産後6日目にようやく娘・のこちゃんに会えることに。1週間ほどでもえるさんが先に退院してからは、週4日ほど、自宅から1時間強の距離にある病院まで面会に通う日々を過ごしました。

「娘は、NICUで呼吸や循環、栄養管理などの治療を受けていました。初めは母乳でしめらせた綿棒を口に含ませて授乳していましたが、その後は胃管チューブを挿入し、看護師さんがシリンジで母乳をあげてくれていました。私は毎日3時間ごとに搾乳した母乳を冷凍して、面会のたびに持っていきました。

病院のルールでNICUの赤ちゃんのお世話ができるのは看護師さんだけだったので、私は、面会中には娘の様子をただ座って見守るばかりでした。お世話はできなくても、保育器に手を入れて娘の体を包むようにするホールディングをしたり、看護師さんがシーツを替えるときに保育器内で娘の体を私の手のひらで抱っこしたり。母としてやってあげられることはほとんどなかったけれど、看護師さんから『今日は母乳を飲む量が何ミリリットル増えましたよ』などと教えてもらえるたびに、娘の成長を感じてうれしかったです」(もえるさん)

もえるさんが初めてのこちゃんのカンガルーケアをしたのは、生後35日目のことでした。カンガルーケアは、赤ちゃんと肌と肌を触れ合わせるように抱っこして、親子の絆を深めるスキンシップのことです。

「酸素マスクや医療機器をつけたままの娘を、初めて抱っこすることができました。胸のあたりに娘の体温や重さを感じて『生きているんだな』と改めて実感しました。『壊れてしまわないか』とハラハラしつつも、愛おしさと、やっと抱っこできた喜びを感じて、胸がいっぱいになりました」(もえるさん)

「やっと普通のお母さんみたいにお世話できる」

GCUでのこちゃんに授乳をするもえるさん。

小さく生まれたのこちゃんでしたが、幸い大きな病気や手術を経験することなく、少しずつ体重が増えていき、生後82日にはGCUへ移動することになります。

「GCUに移ってからは、私もようやく娘のお世話ができるようになりました。そのころには酸素マスクや胃管チューブもはずれ、哺乳びんで授乳できるようになったんです。だけど、娘はミルクを飲んでいるときに息をすることを忘れてしまうらしく、娘につけられた酸素モニターを見ながら、数値が下がってきたら哺乳びんをはずしてあげなければいけませんでした。

初めはハラハラしながら授乳していましたが、『やっと普通のお母さんのようにお世話することができた』という気持ちもありました。娘が一生懸命飲んでいる姿を見て、この子はしっかり生きようとしているんだと感じて、すごくうれしかったです」(もえるさん)

のこちゃんはNICUに約3カ月、GCUに約1カ月入院。生後122日の退院時には体重3204gにまで成長しました。

「娘は、呼吸器管理などの医療的ケアなどは必要なく退院することができました。退院後は、RSウイルス感染症予防のシナジス注射をするために毎月受診し、眼科の検査にも定期的に通っていました。家庭では、母乳に混ぜて栄養の薬を飲ませていました。

また、入院中にリハビリの先生から『少し早く生まれたのこちゃんは、本来赤ちゃんがおなかの中で手を伸ばしたり足をのばしたりする練習をできてないので、おかあさんが手や足をのばしたり、体操をさせてあげてくださいね』とアドバイスをもらいました。そこで、自宅では毎日私が娘の手足を優しく曲げ伸ばすような体操をしました。通院や投薬は必要ではありましたが、自宅で娘を育てられる幸せをかみしめながら過ごす日々でした」(もえるさん)

「大きくなりたい!」という娘の希望もあり、注射治療を開始

1歳2カ月ののこちゃん。紙おむつを出しまくるいたずらをして楽しそう!

もともとの出産予定日より4カ月ほど早く生まれたのこちゃん。身長や体重・発達などゆっくりのペースで成長し1歳5カ月から保育園に入園しました。

「発育的には順調で、保育園入園後の1歳10カ月くらいには1人でしっかり歩けるようになりました。ただ、2歳くらいから体力のなさが目立ってきたように感じていました。保育園に平日毎日預けると、木曜日くらいからふらふらして転んだり、ぼんやりしたり、嘔吐するように。低出生体重児のフォローアップでかかっていた医師に聞いても、小さく生まれたことが原因なのかはわからないようでした。

私の仕事は基本的に在宅ワークなので、保育園に預けるのは週3日にして、家で娘を見ながら仕事してみました。なかなか大変なこともありましたが、
“今こうして娘のそばにいて近くで見られることは幸せだな”とも思いました」(もえるさん)

最初に通った保育園が小規模保育で2歳までの預かりだったため、3歳で別の保育園に移ったのこちゃん。そのころには体力もついて、ふらふらしたり吐いたりすることもなくなり、毎日元気に保育園に通えるようになりました。しかし、成長とともに、のこちゃん自身があることを気にするようになります。

「娘は、お友だちと比べて体が小さいことを気にするようになって『大きくなりたい!』と言うんです。私は、娘が体力がついたことに安心していたのですが、そういえば娘の身長は同じクラスのお友だちと比べても10cmほど小さい状況でした。

その上、3歳でフォローアップ外来を受診したとき、医師から『のこちゃんはこのまま普通に生活しても、周囲の子に身長や体重は追いつくことはないでしょう。大人になっても身長は140~145cmで止まってしまいます』と言われました。そして、身体的な成長を促すため、成長ホルモンの注射治療をすすめられました」(もえるさん)

母子健康手帳の「発育曲線」などを目安に、身長が同じ年齢の人の標準身長よりも大きく下回る場合、成長ホルモンの注射治療をすることで、成長期の子どもの骨の成長を促す効果が期待できるようです。

「医師からは、機械で自動的に針を刺すタイプと、親が子に手で刺すタイプの2種類を紹介され、もし注射治療をする場合は、そのいずれかを毎日打つ必要があると説明されました。
また、注射治療にあたり、手のレントゲンやMRIといった検査のために入院をする必要がある、とのことでした。

小さく生まれた赤ちゃんの場合は、身長の伸びがよくないことが多いそうです。成長ホルモンの注射を毎日打つと、食欲が増進し、まわりの子にも身長が追いつくとのことでした。夫と娘にもそのことを説明や相談し、私たちは娘の注射治療を始めることに決めました」(もえるさん)

治療開始後、思わぬ壁にぶつかった

1歳11カ月ののこちゃん。1人で歩けるように。

のこちゃんは治療のための入院をしてさまざまな検査を受け、もえるさんものこちゃんが楽しい気持ちで治療をできるように準備をしました。

「娘が治療を始めやすいように、“注射をうつとどうなるか?”の紙しばいを作ってみたり、“できたよスタンプ”を作り、注射するごとにシールを貼って〇日注射できたら好きなおもちゃをもらえるよ〜、というようなシートを作ったり。娘が少しでも怖がらないように準備をしました。

ところが・・・実際注射治療を始めると、娘は怖さと痛さとで異常なくらい泣き叫んでしまったんです。私たちが選んだ機械タイプの注射は、一瞬で針が入るもので針もかなり細く、医師の許可を得て大人も試しに打ってみたところほとんど痛みは感じませんでした。だから実際にはそれほど痛くないと思うんですが・・・。おしりに注射をうつこと自体が“怖い”という気持ちが強かったのかもしれません」(もえるさん)

なんとか4日間続けたものの、のこちゃんのあまりの嫌がりように、医師と相談して一度治療をストップすることに。

「娘は泣きながら『一生懸命ごはんを食べるから注射をやめてほしい』とまで言っていて。そこまでして無理に続けるものではないと感じて、夫とも相談して治療をいったん止めることにしました。

医師の説明では今後治療は再開はできるとのことなので、娘の心の成長とともに夫婦で相談しながら慎重に見極めようと思っています」(もえるさん)

自身の経験を漫画に。「心のお守りになれたら」

5歳になったのこちゃん。お料理のお手伝いをしています。

もえるさんは、自身の妊娠・出産の経験やのこちゃんの成長の様子を漫画にしました。

「私自身、妊娠中に“胎児発育不全”という言葉を初めて聞いたとき、すごく不安になってネットでいろいろと調べました。でも、ネットで見つかったのは2〜3件のブログ記事くらいで、不安がふくらむばかりだったんです。だから、同じような状況の妊婦さんやお母さんたちにとって、私の体験談が少しでも心の支えになれば、と漫画にして残したいと思いました。

出産後も『何グラムになったら退院できるんだろう』『何グラムになったら母乳をあげられるんだろう』と、日々気になっていたので、漫画にはエピソードごとに妊娠週数や生後の日数・体重の情報も記載しています。当時の私のように、初めての出産で不安なお母さんやお父さんたちに届いて、不安な気持ちを少しでもやわらげられたら、少しでも“心のお守り”になれたら、と願っています」(もえるさん)

お話・写真提供/ささむらもえるさん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

もえるさんは、最近のこちゃんから「妹がほしい」と言われることもあるのだそう。「1回目の妊娠・出産が大変だったから怖さがあったんですが、今は少しずつ前向きに考えられるようになってきたところです」と話してくれました。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

ささむらもえるさん

PROFILE
2007年漫画家デビュー。漫画アシスタントのほか、イラストレーターとして児童書や小説のさし絵、イラスト、4コマ漫画などを制作。pixivやInstagramでは育児漫画を投稿している。

ささむらもえるさんの育児・エッセイのX

ささむらもえるさんのイラスト・漫画のX

ささむらもえるさんのInstagram

『産まれてきた赤ちゃんは両手サイズ595gでした②』

イラストレーターのささむらもえるさんが、胎児発育不全と診断され28週で出産したあとから、NICU・GCUの生活や、保育園での様子などを描いた育児エッセイ漫画。ささむらもえる著/260円(Kindle版)

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