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「全国初」の育休から8年――成澤廣修文京区長が今の育児問題に思うこと

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2010年4月、自治体の男性首長として、全国で初めての育児休暇を取得した東京・文京区の成澤廣修区長。当時は成澤区長に続き、全国各地のパパ首長が育児休暇を取るなど、イクメンブームの先駆け的な存在でしたが、この8年の間に、社会もまた大きく変わっています。お子さんも大きくなり、少し離れた視点から、今の育児問題をどのように見ているのでしょうか。親として、自治体の首長として、今思うこと、今後の展望を語っていただきました。

関連:育休をとったパパに直撃!男性育児休業のメリット・デメリット

9年目にしてようやく「1年育休」取得の男性職員現る

――育児休暇を取得されてから8年がたちますが、その後、育児で大変だったことはありますか?

成澤区長:
2年前に妻が入院することになり、約1ヶ月の間、私が1人で当時小学1年生の息子の面倒を見なくてはならない時期がありました。義母が晩ごはんを作ってくれたり、ママ友が支援してくれたりしましたが、私は子どもをおふろに入れて寝かせ、翌朝は朝食の準備をしないといけない。ワンオペ育児を経験して、育児の大変さをあらためて実感しました。料理や洗濯は苦じゃありませんが、掃除が苦手なので、息子にはちょっとだけ我慢してもらいましたけど(笑)。

――普段はどのような家事・育児を?

成澤区長:
息子が幼稚園のころは、朝ぶろに入れて、妻がお弁当を作っている間に洗濯物と洗い物をしていました。
小学校からは登校時間が早くなったので、私は息子と一緒に家を出ることにしました。一緒に電車に乗っているのは一駅区間だけですが、今度キャッチボールしようとか、この間見た映画はどうだったねとか、あとはママに秘密の会話もしています。
夜は会合が多いので、子どもとの時間がなくなってしまうんじゃないかと思っていましたが、朝が親子の貴重な時間になっています。

――2010年の成澤区長の育児休暇取得は、区の男性職員の育休を取りやすくするねらいもあったとのことですが、その後、育休を取る男性職員は現れましたか?

成澤区長:
私が育休を取得した翌月に一人、取得しました。その後も毎年だれかしら取得していて、昨年度は最多の7名が取得しています。

――取得率も26%と過去最高ですね。

成澤区長:
国は男性の育休取得率を上げようとしていますが、実は、取得率で見るのはあまり意味がないと思っています。というのも、育休を1年取った人も、10日だけ取った人も、数としては同じ「1」でカウントされるからです。
文京区では、今年度ようやく362日間の育休を取る男性職員が現れましたが、これまでは5日から長くて60日です。女性のように1年取ることが当たり前にはなっていません。

――どうすれば男性も育休を取りやすくなるのでしょう?

成澤区長:
男女の賃金格差がある限り、この問題はなかなか解消されないと思います。家計を考えると、所得が多いほうが働きに出るのはしかたのないことなので。
ですから、今は育児休暇を取るべきかどうかの議論よりも、現行制度のカスタマイズをどうやっていくかが大切だと思っています。文京区では、育児休暇を取らずに、出産時の特別休暇や有給休暇を組み合わせて出産前後に休む男性職員が8割を超えています。

長時間労働が子どもに与える影響を考えるべき

――最近の男性の育児参加について、どう思いますか?

成澤区長:
男性の育児参加は一般化していて、定着しつつあると思います。保育園の父母会にも男性が増えているし、電車などで前抱っこしている男性も見かけるようになった。10年前はまだ普通ではなかったけれど、最近のパパは「俺はイクメンだぞー」という感じもなく、自然にやっていますね。

――懸念されていることはありますか?

成澤区長:
学童保育の現場では今、公設の学童保育が終わる夕方6時半になると、民間の学童保育の人たちが迎えに来て、夜10時まで預かるというケースが起きています。それって、子育てを支援しているんじゃなくて、親の長時間労働をサポートしているんじゃないかと思うんです。それよりも、親が子どもと接する時間を増やすサポートしなければいけない。文京区としても、子育て支援策として用意すべきメニューはひと通りそろえていますが、親の長時間労働を支援するメニューを増やすのではなく、これをどうしていくかがこれからの課題です。
私が今とても危惧(きぐ)しているのは、男性同様に女性の長時間労働も増えているということ。夜10時まで預かる学童保育が大はやりするわけです。でも子どもを外に長時間預けることが、どれだけ子どもの負担になっているのか、社会全体で考えるべきだと痛切に思います。

――いろいろな意見がありそうなテーマですね。

成澤区長:
今、フルタイムで残業して頑張っている人たちも、どこかでそう思っていると思います。社会がまだそうなっていないから、長時間労働をせざるを得ないだけで。イクメンブームが一つの社会運動だったのだとすれば、これからは働き方をどうするかを社会全体で考えるべき時。今の育児の問題の多くは、働き方改革が正しく行われることで解決すると思います。

関連:男性の育児休暇ってどう? 妻たちの意外な本音

働き方が変わると、自分たちの育児はどう変わるのか。社会の問題ととらえる前に、家族の問題として、夫婦で一度、話し合ってみるのもいいかもしれません。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)

■profile:成澤廣修さん
東京都文京区長。文京区議会議員、区議会議長を経て、2007年より現職。2010年には自治体の首長として初めて「育児休暇」を取得し、話題となる。跡見学園女子大学兼任講師、明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科兼任講師も務める。

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