2020年の大学入試改革!幼児のうちから身につけたい「考える力」とは?
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2020年は「入試改革元年」。大学入試のスタイルや求められる能力がこれまでとは大きく変わるといわれています。センター試験はマーク式から記述式へ、英語は「聴く・読む」から「話す・書く」を含めた四技能テストへ。教科書を読み解いたり、正解を選択肢から探したりするだけでなく、自分で疑問を持ち考え、人に伝えられる能力がこの先、ますます必要とされてきます。
こうした時代の流れについていくためにも、幼児期からの家庭での「学び」が重要になりそうです。今、親が子どもにしてあげられることは何でしょうか?
IT研究の専門家でもあり、ご自身も三児の母である、明治大学准教授の五十嵐悠紀先生にお話を聞きました。
コンピューターにはない「ゼロから考える力」が重要に
“AIの時代”ということがよく言われます。確かに人工知能の発達によりコンピューターができることはとても増えました。膨大な情報をデータにして、検索一つで最も求められている答えを導き出す速さは、人間ではとてもかないません。でも、コンピューターはゼロから何かを作り出せるわけではなく、人間が行動し、考え、つくった情報を集めてこそ、それを元に計算ができるのです。
つまり、これからの時代、子どもたちがAI時代を生き抜くために求められているのは、“考える力”。何もないところから考え出し、コンピューターを使って見つけ出した情報を元に考えを広げ、それを人に伝えプレゼンテーションしていく力が求められています。こうした能力は“21世紀型スキル”と呼ばれています。
遊びから学べる「考える力」
とはいえ“考える力”を身につけるためには、一朝一夕にはうまくいきません。幼少期から、こうした力を育むために、まずは次のような力を身につけることで“考える力”を子ども自身に身につけてもらうのがいいでしょう。
創造力
創造力とは、“新しいものを作り出したい”と思う力。たりないもの、無いものがあってもあきらめずに、“自分でつくり出せる”と思う力です。こうした力は実は、子ども時代に大切な“遊び”の中から育まれます。砂場遊び、ブロック遊びなど、特別じゃない遊びが大事なのです。
論理的思考力
“論理的思考力”の中で幼児期に鍛えられることは、一つの大きな問題を、こまかく分けて考え、その中でできることを組み合わせていく力でしょう。たとえば“コップに入ったお茶と、もう一つのコップに入った牛乳を入れ替えるにはどうする?”という問いがあるとします。うちの子どもは “もう一つコップを持ってきて、お茶を移し、空いたところにミルクを注いで、最後にお茶を戻し入れる”という考えを出しました。これも、論理的思考力です。こういった力を鍛えるのに、プログラミングが親和性が高いと最近注目されていますが、日常で取り入れるほうがもっと簡単です。身の回りのちょっとした問いを、“どうすればいい?”とぜひ聞いてみてください。
コミュニケーション・プレゼン能力
遊びを通して作ったものや、考えたことなどを、たとえば仕事から帰ってきたお父さんやお友だちに説明させてみましょう。どうしてこれを作ったのか。どのようにしたら上手に遊べるのか、などを話すことでプレゼンテーション能力を育むことができます。また、1つのおもちゃをきょうだいで使うときも、譲り合ったり、交代したり、交渉したりしながら遊ぶことで、コミュニケーション能力も育むことができます。
五十嵐先生によれば「考える力」を身につけるのは、実はごくアナログな「普通の遊び」や「日常」を通しても可能とのこと。確かに、筆者が自分の子どもたちを見ていても、驚くほどの集中力や、不思議や発見を見つけ、それを一生懸命伝えようとしてくれる「意欲」が見られるのも「遊び」を通じてかもしれません。勉強やスポーツなど、一つの能力だけを伸ばそうとするのではなく、複合的に絡み合ったいろいろな力を伸ばすことをこれからも心がけていきたいです。ぜひみなさんのご家庭でも、親子の会話を通して、「考える力の練習」をいろいろ試してみてくださいね。(取材・文/玉居子泰子、ひよこクラブ編集部)
監修/五十嵐悠紀先生
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 准教授
1982年生まれ。東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。博士(工学)。日本学術振興会特別研究員を経て、現職。専門はコンピュータグラフィックスおよびユーザインタフェース。子どもを対象としたITワークショップを多く開催する。2男1女の母。著書に『AI世代のデジタル教育 6歳までにきたえておきたい能力55』(河出書房新社刊)他。