「入園までに自分の名前ぐらい読めたほうがいい」はウソ?ホント?
Tomwang112/gettyimages
幼稚園の入園前の準備として、「自分の名前ぐらいは読めておいたほうがいいよ」と言われたことはありませんか? 園の様子がわからない親としては、ちょっと気になってしまいますよね。実際、自分の名前を読めるように、子どもに事前トレーニングをさせるべきなのでしょうか? 乳幼児の発達に詳しい、白百合女子大学人間総合学部の秦野悦子先生(発達心理学)にお話を聞きました。
子どもが「自分の名前だ!」と認識する瞬間
自分の名前が読めないと、子どもは園生活で困ってしまうのでしょうか? 自分の名前を覚えるタイミングとは? 秦野先生に聞きました。
Q1 子どもは何歳くらいから自分の名前を認識するようになるのですか?
A1 1歳6ケ月ごろから認識します
1歳前の子どもを名前で呼ぶと、声が発せられたほうに振り向きます。本人とは違う名前で呼んでも、同じように振り向きます。そのため保育園などで子どもが何人もいると、誰かの名前を呼んだときにみんなが反応するようなことが起こります。1歳6ケ月くらいになると、自分の名前を音で認識し始めるので、自分の名前を呼ばれたときだけ反応するようになります。ただし、このときはまだ、文字で自分の名前を読めるわけではありません。
Q2 幼稚園入園までに自分の名前ぐらいは読めたほうがいいですか?
A2 園生活の中で読めるようになるので、心配しなくて大丈夫!
幼児は話し言葉で生活しているので、自分の名前が読めなくても困ることはありません。幼稚園や保育園では、自分の持ち物にひらがなで名前が書いてあります。最初は道具が置いてある場所などで自分の持ち物であるということを認識するかもしれませんが、そのうち自分の名前を見て、「これは自分の名前だ」と覚えるようになります。最初は一つ一つの文字が何と読むかはわかっていませんが、自分の名前をひとかたまりで見て、見た目で「自分の名前だ」と認識しています。このように、自分の名前は、園生活の中で自然に読めるようになるので心配はいりません。
Q3 自分の名前と別のものを読み間違えることもありますか?
A3 勘違いはありますが、文字に関心を持っているということなので心配しなくて大丈夫
たとえば牛乳パックなどの商品名に、自分の名前に使われている文字が入っていると、「これ○○(自分の名前)だよ!」と子どもが勘違いすることがあります。最初は形として自分の名前を覚えているだけなので、見た目が似ていたり、同じ字が使われていたりすると、子どもは自分の名前と誤認してしまうようです。ただし、これは文字への関心を高めていることのあらわれでもあるので、心配する必要はありません。
Q4 入園までに自分の名前を読めることよりも優先したほうがいいことは?
A4 あいさつやトイレができていたほうがいいでしょう
フルネームで呼ばれて返事ができる。「おはよう」などのあいさつができる。入園前には、自分の名前を読めることよりも、そういったことができたほうがいいでしょう。相手とコミュニケーションが取れることのほうが、大切なのです。また、3歳以上は自分でトイレができるようになっておきたいところです。
子どもは園生活の中で、自然に自分の名前を読めるようになります。最初は先生がサポートしてくれるので、無理に覚えなくても園生活で困ることはありません。最初から完璧をめざすのではなく、徐々に一つずつできるようになっていく様子を見守ってあげたいですね。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
監修/秦野悦子先生
白百合女子大学大学院文学研究科発達心理学専攻、人間総合学部発達心理学科教授(学科長)、発達語用論、障害児のコンサルテーション、子育て支援が専門。『子どもの気になる性格はお母さん次第でみるみる変わる』(PHP研究所)など著書多数。