「また怒鳴ってしまった…」自己嫌悪の日々。イヤイヤ期、どう乗り切ればいい?
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イヤイヤ期の子どもと接していると、ママもイライラしてしまいますよね。「もう知らない!」って子どもに言いたくなることも?
イヤイヤ期、どうすればいいの!というママたちの悩みについて、発達心理学専門の沢井佳子先生に、子どもとの接し方やイヤイヤのメカニズムについてお話を伺いました。
ママ達を困らせる、イヤイヤ期によくある行動
ママたちも困っているわが子のイヤイヤ行動・・・。どうしてこんなことするの?と理解不能状態に。私だけではない!みんなの困った体験談をご紹介します。
必要以上に怒ったり、余裕がない対応をしてしまう…自己嫌悪の毎日
息子2歳9ヶ月。イヤイヤ期真っ最中です。自分でやらなくては気が済まない、コンビニやスーパーでは「やらないで」と注意したことをやり、商品を破壊、店内を走り回る、道路に飛び出す、捕まえようとすると楽しんで逃げる・・・など、沢山のいたずら?挑戦?をします。
夜も寝かしつけようと3階の寝室に行くと、4、5回起きだして、何か用事を見つけては2階のリビングに行こうとします。トイレ以外は寝室で済ませられるように準備してあるのに「下に行く!」と言い張り、私が折れて(ほとんどキレて)下に連れて行きます。
こういう息子のイヤイヤ期に、頭でわかっていても必要以上に怒ってしまいます。あとで後悔し、次は怒らないやり方で対応しようと思っても、私のキャパが狭くなっているせいもあり、なかなか私のイライラを沈めて注意したり、一緒に遊んだりすることができません。幸い、その分、夫が優しく遊んでくれていますが・・・。自責と後悔と自己嫌悪。こんな毎日です。
絶賛イヤイヤ期中。もういい加減にして!
2歳8か月の娘が絶賛イヤイヤ期で、悩み中です。私も働いているので、余裕がなく、急いでいる時にワガママ言われたりすると、耐えられず爆発して大声で怒ってしまいます。
お出かけ前にお着替えしたくなーい、と言って逃げ回る、寝ずに遊びたいから、牛乳飲む―と言っていつまでもコップで遊ぶ、歯磨きが嫌だから同じく牛乳飲むー(以下同じ)。。。
もういい加減にして!と怒ってしまいます。子どもの気持ちよりも、自分の気持ちをコントロールできない自分に、自己嫌悪に陥ったりして。
怒るばかりも、子どものメンタルに良くない気もしますし。。。
時期が来たら楽になるのだろうとは思いますが、皆さんどうやって乗り切っているのでしょうかね?ぜひコツお聞きしたいです。
イヤイヤ期は順調に認知発達をなしとげている証拠!
チャイルド・ラボ所長で発達心理学専門の沢井先生によると、子どもがイヤイヤをするのは、「大人の言うこと」を理解し、「その先に起きること」をイメージするようになったから…とのこと。
(沢井先生:以下、沢井)「イヤイヤと言うことは、それだけの認知発達を遂げたということ。そういうサインです。
たとえば、ブロックで遊んでいる子どもに、ママが「お出かけ前だからトイレへ行こうよ」と提案すると、子どもは『やだっ!』と言う。子どもの心の中で何が起きているかというと、「ママの言う通りにトイレへ行く…ということは、ブロック遊びをやめて、ここから離れてトイレへ行く…ということだろう。大好きな遊びを中断する…ってことだな」…と、ママの提案する行動を思い浮かべ、次に何が起きるかを予想しているのです。
そして、「もうちょっとでブロックができあがるのに、中断は絶対否定したいな!」と決断する。しかし、自分の気持ちを説明する能力は不十分ですから、「やだ!」という1語の言葉を、不快な表情と大きな声と、体のこわばりで表現することになるのです。
『もう少しで終わるから待っていてね』と、相手に依頼する言葉が言えるようになるのは、4~5歳ころまで待たねばなりませんが、2歳児のイヤイヤは、相手の言葉から、その先の未来を想像している…という心理活動の現れですから、「言葉を聴いて思い浮かべる力」と、「相手に訴える力」が伸びてきたのね!と喜んでもいいことなのです」
『イヤイヤ』されたら、みんなはどう対応してる?
イライラしがちなイヤイヤ期の対応。わかっちゃいるけど、ママだって人間だもの。苦悩が目に浮かびます。みんなはどう対応しているのでしょうか?
急いで帰ることをもうあきらめました
あまりの大変さに、うちは園から急いで帰ることをもうあきらめました・・・。買い物も子連れで夕方行くのはやめました。私がイライラしちゃうからです。
お迎え後の時間って、子どもが唯一自由にできる時間なのかな、自由にしたいのかなと考え、私のストレスが一番少ない方法を選んだ感じです。
「お母さんは違うことするわ」と言って離れて家事
息子が保育所からなかなか帰らない場合、私は息子がひと段落するまで待っています。駐輪場へ移動してもまた遊び出しますが、私はスナックパンとか小さなパンを持参して自転車に乗るよう誘導するか、交番や消防署に寄るから見に行こうって誘います。
イヤー!と大声で言われる時もありますが、張り合うパワーがないので、「お母さんは違うことするわ」と言って離れて家事をしています。すると寂しく感じるのか、息子もトーンダウンして違うことするか、やってほしいことにとりかかったりしています。
とにかく全力でぶつかる!って決めました
3歳半の息子がいます。ひとりっ子でワガママなのかもしれません。服を裏返しで投げちゃったり(直せばいいだけ)や、服のチャックに生地を挟んでしまって上がらないなどと、些細なことでウギャーってなります。お風呂から上がって、棒で遊んでいたので注意してもやめなくて、お茶のカップにあたってこぼして泣いて、怒ったら、今度は自分で2階に上がれないから抱っこしろと泣いたのでほっておきました。で、5分くらいかかって上がってきました。笑
わたしは、対応はわからないけど、とにかく全力でぶつかるつもりです!
いいことと悪いことはその時に教える。最近、怒りすぎだなぁと辛くなるときもありますが、その分いいことも、全力で褒めると決めました。
ワンクッション置いてから接する。お互い少し冷静に
3歳4ヶ月の息子がいます。4月から幼稚園に通い出しましたが、少しでも気に入らない、自分の思い通りにならないとスイッチが入ります。最初は幼稚園頑張ってるもんね、となだめていたのですが、私の方がイラっとしていつまでもぐずぐず言わない!となってしまうので、今ではワンクッション置いてから接しています。そっちの方がお互い落ち着いて少し冷静になれます。今はイヤイヤ言いたいのね~と横目で見ながら家事なんかして。笑
でもこれは家の中だからできることで、外では担いで撤収です。
『もう知らない』と見放すのではなく、複数案で交渉してみて
(沢井)「何らかの障がいによって、人への関心を示しにくいお子さんもいますが、一般に子どもは、生後すぐの新生児のころから、人の顔を注視し、人の口の動きをまねて、お母さんの声と同じトーンの声を出すなど、身近な人を模倣するものです。
昔も今も、道路などで駄々こねている子どもがいますよね。その時に、お母さんが『行っちゃうからね』と言って、子どもを置き去りにするフリをしているのを見かけますが、あれはやめたいですね。お母さんの「置き去り行動そのもの」が真似をされてしまいます。『知らないよっ!』などと見放すような態度を、子どもに学習させてはいけないです。
明日それが現れるのではない。8歳、9歳…と大きくなって、それまでの経験が積み重なって、友達に対して「知~らないっ!」という態度が出てくるのかもしれません。あとあと子どもの社会性に問題が生じる可能性があるのです」
イヤイヤ期で困っているママたち。『もう知らいない』『先に行くよ』など、言ってはいけないと分かっていても、ついつい言い放ってしまう場合もあると思うのですが、具体的にどのような対応ができるとよいのでしょうか?
(沢井)「交渉をしてみてはどうでしょうか。交渉するときに,『Aをやって!』ではなく、『A案・B案・C案どれにする?』と提案する。子どもに選択をさせるのです。子どもは、しぶしぶかもしれませんが、納得はします。
2案でもいいんです。これは、子どもに真似をされてもまったく困らないやり方です。むしろそういう、提案型の交渉ができるようになってほしい。8・9歳になったころから巧妙に人と交渉していく、思春期になったときには、口が達者になる…という発達をとげたら、おめでとう!です。
“見放す”背中を見せるのではなく、顔を見て向き合って、“交渉”してみてください。
ただ、「“見放す”ような態度をとっちゃったなぁ…」と心配しすぎないように!ふだんから、親子で愛情ある遊びの時間を過ごしていれば、「ママはほんとうは見守ってくれている」と子どもはわかっているはです。」
第3者をたてることで興奮が収まることもあります
(沢井)「交渉事って,1対1だと疲れてしまいますよね。第3者の同輩がいるといいでしょう。それは人形やぬいぐるみでもいい。お母さんが人形を操って、もうひとりの子ども役を登場させ、子どものイヤイヤ行動を演劇的に、客観的に見せるのです。これを“異化効果”と言います。まるで自分の姿をみるように対象化させるのです。
お人形が『ヤダヤダー!』と言っているのを見ると『そこまで興奮しないで!』とさすがに子どもも思います。イヤイヤ期の自分の姿を客観的にみることができ、ちょっと大人びたふるまいになって、落ち着くことはあります」
ぐったりだけど、笑っちゃう!わが家のイヤイヤっ子
そんなイヤイヤなわが子も、やっぱりカワイイ! 思わず吹き出してしまう子どもの必死のイヤイヤ、みんなも経験あるのでは?
スッポンポンのまま怒る怒る…
今朝は寝覚めが悪く、朝から超絶不機嫌だった娘。拗ねてグズグズになったところ、朝の支度で急いでいたので、夫も私も少しそのままにしていたら、構われないことに逆上し、着ていた物を次々に脱ぎだし、こちらを睨みながら力いっぱい床に叩きつける。
最後はオムツも床に叩きつけ、肩でふーふー、息をつきながら全身で抗議。その後、15分ほど着衣拒否でスッポンポンのまま怒っていました。なだめながらも、「何で脱ぐんだ?!」と夫と笑いをこらえるのに必死でした。
イヤイヤ期、大変だけど、やっぱり2歳。可愛いものです(笑)
おネエ言葉
わが家の次男もイヤイヤ期です!もう長男の時に私はイライラが止まらなくて毎日戦っていた経験があるからか、次男のイヤイヤが可愛くて仕方ない!笑
最近、イヤ!と言うフレーズから、何故か「やだわ!」と変わり、オネエか!と吹き出し笑ってしまいます・・・笑
子どもは、イメージしていたことと、現実とのギャップに怒っている
(沢井)「お母さんもただでさえ忙しいのに、本当に大変ですよね。
例えば、体験談でも挙げられているようなすっぽんぽんの子は、お父さんとお母さんが自分をそのままにして、かまってくれなかったことに対して、私だってストレスいっぱいなんだぁ!ということを表現しているのです。
お母さんがこういう働きかけをしてくれたら、こうする予定だったのに。期待していたのにそれとは違う反応をされたから、予想と現実のギャップに怒っているのです。遅くても5歳くらいになれば、『○○したいから待ってて』『もっと○○したかったのに』と伝えられますが、言語的にうまく説明できないから、ドラマティックで大げさな動作と共に注意を引きつけようとし、イヤイヤ、という訴えになるわけです」
「イヤイヤが起きない方が心理学者としては心配です。人と交渉しようと思わなければ、起きない現象なので。イヤイヤしていれば、大きな心配は不要です。子どもの相手をするのは、忍耐力がいることですが、お母さんには、イヤイヤと言うほどに発達したのねぇ…と、安心していただきたいですね」と沢井先生。
イヤイヤ期にはマイナスなイメージを持っていたママたちも多いのではないでしょうか。でもイヤイヤは認知発達を遂げている証拠、成長の証なのですね。大変なことも多いイヤイヤ期ですが、『子どもは親の鏡』と思って子どもに合った接し方で過ごせるといいですね。
(取材・文/武田さくら・真山りせ)
■監修:沢井 佳子先生 (SAWAI Yoshiko)
チャイルド・ラボ所長 静岡大学情報学部客員教授
認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。お茶の水女子大学大学院修了。専攻は発達心理学。幼児教育番組「ひらけ!ポンキッキ」(フジテレビジョン)制作の心理学スタッフ、大学講師などを経て、 現在チャイルド・ラボ所長。静岡大学情報学部客員教授。「こどもちゃれんじ」(ベネッセコーポレーション)の「考える力」プログラム監修。幼児教育番組「しまじろうのわお!」(テレビ東京系列)監修。人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事。「日本子ども学会」常任理事。
■文中のコメントは『ウィメンズパーク』の投稿を再編集したものです。