【専門家監修】母乳育児のコツと、ミルク育児への切り替えが必要になったときの上手な移行のしかた
今進めている母乳育児、順調に進んでいますか? おっぱいをあげることにしんどさや不安、心配があるのなら、“何がなんでも母乳!”じゃなくていいんです。ミルク育児に切り替えることは、決して悪いことではありません。でも、「もう少し、おっぱい頑張ってみよう」と少しでも思うのなら、コツをつかんでラク~に進めてみませんか? 肩の力を抜いて進められる“母乳育児”のコツや、ミルク育児への上手な移行のしかたを、助産師の小澤千恵先生に教えてもらいました。
母乳育児をラクに進めるコツと注意したい行動ポイントは?
赤ちゃんの主な栄養源となる母乳とミルク。どちらを与えようとも、ママが笑顔でいることが赤ちゃんにとって最高の栄養であることに変わりありません。ただ、母乳はわが子にとって世界で一つしかない飲み物であることも事実。特別な事情や無理がなければ、母乳が出るのにあえてミルクに切り替えてしまうのは、ちょっともったいない気もしますよね。そこで、母乳育児をラクに進めるコツとママが注意したいポイントを紹介します。
母乳育児をラクに進めるコツ
(1)おっぱいを繰り返し吸わせる
生後間もない赤ちゃんは、唇に触れたものを反射的に吸う性質があり、唇に乳首が触れると自然に吸いつきます。ただ、母乳は最初からたくさんは出ませんし、赤ちゃんもうまく吸えず、途中で眠ってしまうこともあるかもしれません。でも、繰り返し吸わせると、しだいに上手に吸えるようになるでしょう。
(2)正しい授乳姿勢でまんべんなくおっぱいを吸わせる
乳汁がママの乳房の中にたまってしまうとトラブルの原因になります。正しい姿勢でまんべんなく飲ませることが大切です。※詳しくは「母乳が出ないのはママや遺伝のせいじゃない! 母乳の出がよくなるコツとは?」をチェック!
(3)乳首を深く含ませる
赤ちゃんがママの乳首を浅くくわえておっぱいを飲む“浅飲み”は、乳頭に傷ができるなどのトラブルが起こりやすくなります。乳輪が隠れるくらい深く含ませることが、母乳育児成功のコツの一つといえます。
※詳しくは「母乳が出ないのはママや遺伝のせいじゃない! 母乳の出がよくなるコツとは?」をチェック!
(4)授乳リズムを乱さないように規則正しい生活を心がける
昼夜のリズムがつき始める3ヶ月ごろになると、お出かけする機会が増え、授乳リズムが乱れやすくなります。外出先でもリズムが乱れないように授乳ケープを用意したり、不慣れな場所で飲まないときは静かな場所に移動して授乳するなどの工夫をするといいでしょう。ママも疲れがたまりやすいので、規則正しい生活リズムを心がけましょう。
(5)栄養バランスのいい和食の食事を意識する
タンパク質、炭水化物、ビタミン・ミネラル をバランスよくとれる和食がおすすめです。温かい食事で体を内側から温めると、血液の循環がよくなっておっぱいトラブルの予防になります。体を温める食べ物や温かい飲み物をとるといいでしょう。胃腸機能が高まって血液の循環が促されるため、母乳の出がよくなります。
★「まごわやさしい」を意識した和食がベター!
ま 豆類
ご ごま
わ わかめ(海藻類)
や 野菜
さ 魚
し しいたけ(きのこ類)
い いも類
(6)水分をしっかりととる
水分は1日1.5~2リットルを目安に水分補給を心がけましょう。朝にお湯で1日分のお茶を沸かし、その日のうちに飲みきるように意識してみてもいいですね。ごぼう、だいこん、にんじんといった根菜類などを入れた具だくさんの汁ものをまとめて作り、毎食食べるようにすると、栄養も水分もとれて一石二鳥です。
(7)体を冷やさないようにする
母乳は血液からつくられています。体が冷えて血行が悪くなると、おっぱいの詰まりや分泌量が減る原因になるので注意しましょう。湯船につかる場合は5分くらいを目安にします。母乳が出にくいママは、7分以内なら長めにつかってもOKです。
★おすすめ3つの冷え対策
1 肩まわり、背中、足首を温める
2 半身浴や足湯で体を温める
3 防寒対策は保温効果のある薄手のインナーがおすすめ。厚着に注意!
(8)適度な運動で母乳の出や体の不調をコントロールする
肩や背中のこわばり、冷え、体の痛みなどの不調を感じたり、母乳の出が気がかりなときは、肩や首を回す・伸ばすなどのストレッチ、手をグーパーする運動も効果的です。無理のない範囲でできるときに行いましょう。
(9)ストレスをためない
ママが強いストレスを受けると、母乳を押し出すホルモンの分泌が止まってしまう場合があります。育児の悩みは1人で抱えず、専門家などに相談しましょう。疲れたら、家族の手を借りて体を休める時間をつくることも大切です。
(10)家族全員で感染症予防をする
ママや赤ちゃんが病気になると、授乳リズムが乱れたり、おっぱいトラブルになりやすいです。家族全員で感染症予防を心がけます。帰宅後は、手洗い・うがいを徹底し、部屋の湿度は50~60%を保てるように加湿器などで調整するといいでしょう。インフルエンザなどの感染症流行期は人混みを避け、外出時はマスクをします。家族が感染した場合は、部屋を別にするなどして感染拡大を防ぎます。
母乳派ママが知っておきたい“母乳育児”の注意点をチェック!
(1)赤ちゃんの成長に伴い、母乳だけでは鉄やビタミンDが不足しがちに。適切に離乳食を進めることが大切。
(2)母乳はミルクに比べて消化がよく、赤ちゃんがおなかをすかせやすい特徴も。生後2ヶ月ごろまでは“泣いたら授乳”を基本に!
(3)赤ちゃんが哺乳瓶を使えないと、家族などに預けることができず、ママ1人で外出しにくくなる。
(4)夜の寝かしつけでおっぱいを吸ったまま寝かせると、夜中に目を覚ましたときにおっぱいを吸わないと寝つけない子になることも。生後6ヶ月ごろからは、ウトウトしたら口から乳首をはずして布団に寝かせる習慣づけを。
(5)飲酒は、アルコール成分が母乳に移行するので控える。
(6)おふろの長湯は、疲れて体力を消耗するのでNG!
(7)厚着は肩凝りの一因に。血行が悪くなって、母乳の出に影響を与えることがあるので避ける。
(8)餅、ケーキなどのスイーツ類、チーズ、揚げ物などの食べすぎは、おっぱいトラブルにつながることもあるので気をつける。
(9)コーヒーなどのカフェイン飲料は母乳に移行。授乳後に、1日1~2杯程度にする。
(10)マラソンなどの激しい運動は、産後6ヶ月以降から体調を見て行う。
(11)カロリー制限するダイエットは、母乳の出に影響を与えることがあるので避ける。
(12)風邪薬などを飲む場合は、医師や薬剤師に相談して服薬する。
母乳から“完ミ”へ! ミルク育児のポイントをチェック♪
ママや赤ちゃんの事情などで、「母乳じゃなくてミルクにしよう!」と決断する家庭もあるでしょう。本当は母乳をあげたかったママにとっては、つらい気持ちを抱えているかもしれませんね。でも、罪悪感を持つことはありません。「この決断が赤ちゃんにとってベスト」と思ったからこその行動なのです。これから完全ミルク育児を進めるママに向け、知っておきたいポイントをお届けします。
ミルク育児をスムーズに進めるコツ
(1)意識的にたくさんスキンシップをする
母乳育児に比べると赤ちゃんとママの触れ合う時間が不足しがちです。意識的にスキンシップの時間をつくって、たくさん語りかけてあげるといいでしょう。
(2)粉ミルクは缶に記載された月齢別の規定量が目安
多少の誤差は気にせず、ミルク缶に記載された月齢別の量を目安に調乳し、作りたてをあげることが原則です。飲み残しは捨てます。作り置きを冷蔵庫などで保存するのも雑菌が入るためNGです。自己判断で薄めると、赤ちゃんが体調不良になることもあるので避けます。
(3)哺乳瓶の乳首は月齢に合ったものを選ぶ
おっぱいほど一生懸命吸わなくても飲めてしまうのが哺乳瓶。一気飲みしやすい分、早飲みになりやすく、満腹感を得にくいことがあります。規定量を飲んでも欲しがる場合は、哺乳びんの乳首のサイズを見直します。
(4)授乳間隔をある程度決めて飲ませる
ミルクは母乳よりも消化に時間がかかるので、授乳間隔が母乳より長めです。新生児は3時間おき、それ以降はだいたい 3~4時間おきに与え、授乳のリズムをつくりましょう。月齢が上がるごとに飲む量が増え、自然に授乳間隔も空いてきます。
(5)離乳食開始後は 離乳食→ミルクの順が基本
離乳食をしっかり食べてもらうために、ミルクは食後がベストです。でも、赤ちゃんはおなかがすきすぎると、離乳食よりもすぐに満腹感が得られるミルクを欲しがります。グズッてどうしても離乳食を食べないときは、食前に少量のミルクを与えてもいいでしょう。
(6)離乳食を1日3食しっかり食べられるまではミルクを飲ませる
育児用ミルクは母乳に代わる完全栄養食品です。1歳ごろまでは、離乳食後に育児用ミルクを飲ませるのがおすすめです。
(7)離乳食が1日3回になり、体重増加が順調ならミルクはやめてもOK
離乳食後には規定量の範囲内で、赤ちゃんが欲しがるだけミルクを飲ませるのが基本です。ただし、離乳食を1日3回しっかりと食べる、体重増加が順調、赤ちゃんが欲しがらない様子であれば、食後のミルクはやめてもOKです。
(8)ミルクは1歳6ヶ月ごろを目安にやめる
哺乳瓶で授乳を続けると、上の前歯がむし歯になりやすくなります。1歳6ヶ月ごろを目安に卒業しましょう。やめる1カ月くらい前から哺乳瓶以外で水分がとれるよう、コップやストローで飲む練習をするのがおすすめです。ミルクの卒業は、慣らし期間を設けながら日中→夜の順で食後のミルクを1回ずつ減らしていくとスムーズにいきます。
母乳育児を貫いてもミルク育児に切り替えても、それが“赤ちゃんにとってベスト”だと考えた選択で、ママが肩の力を抜いて授乳できるのであれば、どちらもいいのではないでしょうか。赤ちゃんとママの長い人生から見れば、授乳期間はほんのひとときです。赤ちゃんとの触れ合いを大事しながら、進めていけるといいのかもしれないですね。(取材・文/茶畑美治子)
初回公開日 2018/12/22
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