【専門家監修】育成医療(自立支援医療)等、病気や障害をもつお子さんのための補助と必要な手続き
病気と闘う赤ちゃんと両親をサポートするための制度を、国や自治体はいろいろ用意しています。該当する制度は積極的に利用しましょう。サポートしてもらえる分、気持ちに余裕が生まれ、赤ちゃんの育ちをおおらかに見守ることができることでしょう。ここでは、育成医療(自立支援医療)、小児慢性特定疾病の医療費助成、指定難病医療費助成制度について、その内容と手続きを特定社会保険労務士の守屋三枝先生にお伺いしました。
育成医療(自立支援医療)は、いつ、だれが申請できるの?
育成医療(自立支援医療)は、手術などによって障害や病気の改善に見込みがある子どもに対して、治療費の一部を助成する制度です。治療を始める前に申請が必要なので注意しましょう。
育成医療とは?
育成医療は、体に障害や病気を持つ子どもが生活していく力を得るために受ける、治療の医療費が支給される制度です。児童福祉法第4条第2項に規定する障害児(将来、障害を残すと認められる疾患をもつ子どもを含む)が対象となり、治療しなければ将来障害が残る可能性があるけれど、手術などの治療を行えば障害が改善できる見込みがある子どもに対して、医療費の一部が助成されます。
<どれくらい助成してもらえるの?>
原則として、自己負担額は健康保険を使って治療した費用のうちの1割。ただし、世帯の所得に応じて、自己負担の月額上限額が定められています。中には自己負担をなしにする自治体もあります。
*詳細はお住まいの自治体に確認してください。
対象となるケース・年齢
(1)視覚障害:白内障、先天性緑内障
(2)聴覚障害:先天性耳奇形
(3)言語障害:口蓋裂など
唇顎口蓋裂に起因した音声・言語機能障害を伴い、鼻咽腔閉鎖機能不全に対して手術以外に歯科矯正が必要な場合
(4)肢体不自由:先天性股関節脱臼、脊椎側彎症、くる病(骨軟化症)など
(5)内部障害
心臓(先天性疾患、後天性心疾患)、腎臓機能障害、肝臓機能障害、小腸機能障害、免疫(HIVによる免疫機能障害)、そのほかの先天性内臓障害(先天性食道閉鎖症、先天性腸閉鎖症、鎖肛、巨大結腸症、尿道下裂、停留精巣<睾丸>など)
<対象年齢>
18才未満
申請場所と手続きに必要なもの
治療を開始する前に、お住まいの市区町村窓口で申請します。申請が遅れると助成が受けられないことがあるので、早めに手続きを行うことが重要です。
<手続きの流れ>
育成医療(自立支援医療)意見書を主治医に記載してもらう。
市区町村の窓口に意見書を含め、以下の必要書類を提出する。
<必要なもの>
・育成医療(自立支援医療)支給認定申請書
・育成医療(自立支援医療)意見書
・世帯調書
・住民税(非)課税証明書など
・健康保険証のコピー
小児慢性特定疾病の医療費助成の対象と申請方法について
治療期間が長く、治療費の負担が大きくなる特定の病気について、自己負担分を助成してくれる制度です。平成27年に制度の見直しが行われました。
小児慢性特性疾病の医療費助成とは?
子どもの慢性疾病のうち、治療期間が長く、医療費の負担が大きくなる小児がんなどの特定疾病について、医療費の自己負担分を助成する制度です。助成の対象となる疾病は、平成26年までは514疾病(11疾病群)でしたが、平成27日から704疾病(14疾病群)に拡大されました。
<対象となる14疾病群>
(1)悪性新生物(急性骨髄性白血病、骨肉腫など)
(2)慢性腎疾患(フィンラド型先天性ネフローゼ症候群、慢性腎不全など)
(3)慢性呼吸疾患(気道狭窄、気管支ぜんそくなど)
(4)慢性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)
(5)内分泌疾患(バゼドウ病、甲状腺ホルモン不応症など)
(6)膠原病(若年性突発性関節炎、ベーチェット病など)
(7)糖尿病(新生児糖尿病、インスリン受容体異常症など)
(8)先天性代謝異常(フェニルケトン尿症、糖原病Ⅰ型など)
(9)血液疾患(血小板減少症、再生不良性貧血など)
(10)免疫疾患(細網異形成症、白血球接着不全症など)
(11)神経・筋疾患(先天性水頭症、重症筋無力症など)
(12)慢性消化器疾患(乳糖不耐症、クローン病など)
(13)染色体または遺伝子に変化を伴う症候群(コフィン・ローリー症候群、ダウン症候群など)
(14)皮膚疾患(眼皮膚白皮症、表皮水泡症など)
対象となるケース・年齢
以下の(1)~(4)の要件をすべて満たし、厚生労働大臣が認めた18才未満の子どもが対象となります。
(1)慢性に経過する病気
(2)生命を長期にわたっておびやかす病気
(3)症状や治療が長期にわたり、生活の質を低下させる病気
(4)長期にわたって高額な医療費の負担が続く病気
*18才になった時点でこの制度の対象となっていて、かつ、18才以降も継続して治療が必要と認められた場合は20才未満までは対象となります。
申請場所と手続きに必要なもの
都道府県または指定都市・中核市の窓口で申請手続きを行います。
<手続きの流れ>
(1)小児慢性特定疾病の指定医療機関を受診し、診断書をもらう。
(2)都道府県などの窓口に診断書と必要書類を提出する。
●必要な書類
・小児慢性特定疾病医療費支給認定申請書
・小児慢性特定疾病医療意見書
・住民票
・市区町村民税(非)課税証明書など課税状況を確認できる書類
・健康保険所のコピー
・医療意見書の研究医療についての同意書など
(3)都道府県または指定都市・中核市で審査を実施。
(4)認定された場合は、都道府県などから医療受給者証が保護者に交付されます。
*有効期間は、原則として申請日から1年以内で都道府県などが定める期間。1年ごとの更新申請が必要。
<自己負担はどれくらい?>
所得に応じて、医療費の一部自己負担がありますが、従来の3割から2割に引き下げられました。
指定難病医療費助成制度の申請方法
厚生労働大臣が定める「指定難病」の医療費を助成してくれる制度です。助成を受けるためには申請手続きを行い、審査を受け認定をもらう必要があります。
指定難病医療費助成制度とは?
治療法が確立していていない病気で、長期にわたり療養が必要なる病気を「難病」と呼びます。その中で、とくに厚生労働大臣が定めた「指定難病」の医療費を助成する制度です。現在、306疾病が指定されています。
<対象者>
(1)指定難病にかかり、厚生労働大臣が定める程度の状態であること。
(2)(1)の程度には該当しないが、同一の月に支払った指定難病の治療費の総額が33.330円を超えた月数が、申請を行った日が属する月より前の12月以内に、すでに3カ月以上ある。
<対象年齢>
年齢に関係なく申請できます
申請場所と手続きに必要なもの
難病指定医に「臨床調査個人票(診断書)を記入してもらい、必要書類とともにお住まいの市区町村窓口で申請します。
<手続きの流れ>
(1)かかっている難病の臨床調査個人票(診断書)を難病指定医に作成してもらう。
*都道府県の指定を受けた医師が作成したものでなければ無効になるので、注意しましょう。
(2)必要な書類をお住まいの市区町村窓口に提出する。
●必要な書類
・臨床調査個人票(診断書)
・特定医療費支給認定申請書
・個人番号に係る調書(指定難病用)
・住民票、
・市区町村税(非)課税証明書
・健康保険所のコピー、
・保険者からの情報提供に係る同意書
・小児慢性特定疾病医療受給者証のコピー(申請する難病以外で小児慢性特定疾病の医療費助成を受けている場合)
・人工呼吸器等装着者に係る診断書(必要な場合)
※都道府県による審査を通過した場合に、医療受給者証が交付されます。申請から交付まで約3カ月かかります。
<都道府県が独自に定める難病の医療費助成もあります>
国が定める指定難病以外に、都道府県が独自に難病を指定し、医療費助成を行っている場合があります。詳細はお住まいの都道府県に確認してください。
「未熟児医療費助成以外の医療費助成の受け方について」体験談
早産児や低出生体重児で生まれた子の医療費を助成してくれる「未熟児医療費助成」以外の医療費助成を受けたママ・パパに、どんな医療費助成を受けて、どのように負担が減ったかを聞きました。
●小児慢性特定疾病の医療費助成を
呼吸器慢性疾患との診断。小児慢性特定疾病の医療費助成が受けられると、助産師さんと小児科の先生から説明を受け、パパが申請の手続きに行きました。すぐに受理され、入院費としてかかったのはおむつ代程度に。有効期間が1年のため、今も更新を続けています。(1才6カ月女の子、出生体重:644g、在胎週数23週4日)
赤ちゃんが重い病気にかかっていると、ママやパパは看病だけで精いっぱいで、助成の申請に行く余裕はなかなか持てないかもしれません。でも、療養期間が長引く病気ほど、国や自治体からのサポートは必要です。どのような助成が受けられるかお住まいの自治体に相談し、速やかに手続きを行いましょう。(取材・文/東 裕美、ひよこクラブ編集部)
初回公開日 2019/02/24