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原因不明の病気で24時間ケアが必要な5歳・女の子ママ。日本初の「医療的ケア児専門シッター」に寄せる期待

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2019年7月31日、日本初の医療的ケア児専門のシッター事業立ち上げが発表されました。胃ろうやたんの吸引、人工呼吸器といった医療的ケアやデバイスと共に生きる子ども「医療的ケア児」は国内で約1万8000人。看護師のシッターという新しい試みはどのような役割を担うのか、注目が集まっています。

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製薬会社で働いていた女性が直面。「まさかわが子が」

「わたしひよこクラブすごく読んでいたんです。自分もこういう育児生活を送るんだろうなって。でも、ぜんぜん違いましたけど(笑)」。
名刺交換で明るく答えてくれたのは金澤裕香さん(31歳)。5歳の医療的ケア児を抱えるママです。
娘の菜生ちゃん(5歳)は原因不明の体重が増えない病気で、1時間に2、3回たんなどの吸引が必要、裕香さんは日中はもちろん夜も菜生ちゃんのケアをしています。

「もともとは製薬会社で働いていました。普通に産休をとって育休に入り、1カ月健診はとくに問題なしだったんですが、生後3ヶ月のときに1カ月健診からまったく体重が変わらないことがわかって……。」

生後3ヶ月から入院。裕香さんはいずれ治るかもしれないと、育休をとったものの、様々な検査を経ても原因が特定できず、会社を退社。入院は3歳まで3年間にも及びました。
入院時も退院後の自宅ケアも、そのほとんどを裕香さんが担っています。

菜生ちゃんのように胃ろうやたんの吸引、人工呼吸器といった医療的ケアやデバイスと共に生きる子ども「医療的ケア児」は国内で約1万8000人。医療的ケア児のケアを担当するのはほとんどが母親(96.7%)、24時間つきっきりとなる状況も多く、約7割は就業しておらず、暮らし向きが「大変・やや苦しい」と回答した人が42%にものぼります。※注1

「3時間眠ることができた」喜びから新たな一歩へ


そんな中、2019年7月31日、日本初の医療的ケア児専門のシッター事業立ち上げが発表されました。事業者は認定NPO法人フローレンス。
「障害児保育園へレン」や「障害児訪問保育アニー」を運営し、これまでにのべ100家庭以上の障がい児親子と接してきました。

その発表記者会見に登壇したのが、「障害児訪問保育アニー」を利用している裕香さんでした。
「アニーを利用させてもらって、3時間眠ることができたんです。それだけで天国でした。」
それまでは二人きりで家の中に閉じこもる生活をしていた裕香さんですが、一人きりでの外出が可能になったことで、仕事をする時間を確保することもできるように。現在は、医療的ケア児の情報を発信するNPOを立ち上げて、情報発信を続けているそうです。

ですが、菜生ちゃんは今年6歳、来年は小学校入学年度を迎え、新たな問題に直面することになります。
法律上、保育に関する制度や助成は未就学児が対象となります。そのためいま受けているサービスを継続することはできません。
「せっかく働きはじめたけれど、継続するためにどうしたらよいのかと模索中です。また、娘は私と二人だけのときより、多くの人と関わることでぐんと成長が見られたんです。やっぱり子どもには刺激が必要なんだと実感しました」

養育者のレスパイト(一時休息)確保に向けて

そんな現状に「医療的ケアシッター ナンシー」を立ち上げたフローレンス代表の駒崎弘樹さんが、「一穴開けたい」と会見で強調したのが養育者のレスパイト(一時休息)でした。
「レスパイト時間が1日あたり平均2時間以上確保されている保護者はそうでない保護者と比べて、社会的健康度が高くなっています」(駒崎さん) 

医療的ケア児専門のシッター事業の特徴は?


また、せっかく就労した、あるいは就労したいと願う母親や養育者のニーズにこたえるべく未就学児と就学児の制度の切れ目を埋めるのも目的のひとつと言います。
初年度に必要な資金はざっと2000万。かねてからフローレンスとさまざまなプロジェクトで協働してきた西友、村上財団のほか、個人寄付者の佐俣アンリ氏(ANRI代表パートナー)、松本恭攝氏(ラスクル株式会社代表取締役社長CEO)より寄付を受けてサービスインします。

特徴は大きく4つ

1.医療的ケア・処置が可能な看護師を自宅に派遣
2.訪問看護は通常60分程度だが長時間お預かりできる(最長3時間/日)
3.回数に制限のある訪問看護とは独立して支援できる
4.私費で看護派遣を利用すると約20~40万円/月実費がかかるところ、4600円/月で提供できる(例:年収500万家庭の場合)

既存の訪問看護や複数の医療福祉制度を組み合わせ、一定の自己負担で長時間の医療的ケアシッターサービスの提供を可能にするといいます。

3時間程度看てもらえることで、親や養育者はレスパイトする時間が得られ、また放課後の学童的な役割を担える可能性もあります。医療的ケア児を育てている母親が、あきらめていた就業を視野に入れられるようになり、生活を苦しいと感じる度合いが減るかもしれないと期待されています。

冒頭の裕香さんはいまだに2時間おきに起きて菜生ちゃんのケアをしているそう。夜間は人工呼吸器をつけるため、昼間よりケアの頻度が減るとはいえ、2時間起き。「どうやって起きているんですか?」の質問に「気合です」と明るく答えてくれたのが印象的でした。

会見の登壇については「娘のような子を育てている人のことを少しでも知ってほしかった」と語ってくれました。(文 たまひよONLINE編集部)

会見に登壇した裕香さんと菜生ちゃん

■医療的ケア児の主たる養育者の状況について(回答675名)

9割以上の家庭で、医療的ケア児の母親が介護を主に担当。主たる養育者である母親の約7割は就業しておらず、医療的ケアを独りで担っているケースも10.9%。暮らし向きが「大変・やや苦しい」と回答した人は42.0%にのぼります。

・主たる養育者:母親(96.7%)、父親(3.3%)
・平均年齢:43.6歳(範囲26~59歳)
・就業状況:就業なし(69.6%)、フルタイム勤務(6.9%)、パートタイム勤務(18.3%)、自営業(5.2%)
・主たる養育者の平均睡眠時間:5.4時間(範囲2~8時間)一般女性の平均睡眠より2時間少ない
・主たる養育者の暮らし向き:大変・やや苦しい(42.0%)、普通(42.2%)、やや・大変ゆとりがある(15.8%)
・医療的ケアの実施者が家庭内で他にいない:10.9%

※注1:東京大学家族看護分野 上別府研究室「医療的ケアを要する児童生徒の保護者のレスパイトとQOL(生活の質)に関する調査」

今年9月からサービスイン


「医療的ケアシッター ナンシー」について

「医療的ケアシッター ナンシー」の看護師採用

認定NPO法人フローレンス

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