「育児でのパパの役割は?」3児の父、労働・子育てジャーナリストに聞きました
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近年、“イクメン”や“パパの育児参加”“働き方改革”が常識となってきました。世間では、育児休暇を取り、ママと分担して家事・子育てをこなしているパパが増えているイメージがありますが…仕事に追われ家事・育児ができないパパが多い=ワンオペママが多いのが現実です。
赤ちゃんとかかわる時間を持たずにきてしまったパパから、よく「育児で何をすればいいのかわからない」という声が届きます。この記事では、自らも3人の子どもを育てる父であり労働・子育てジャーナリストの吉田大樹さんに、働くパパたちの現状と、すぐに行動に移せるパパの赤ちゃんとのかかわり方をインタビューしてきました。
パパはもちろん、ママもぜひ参考にしてみてください♪
負のスパイラルから抜け出せないパパが多い
――近年、“イクメン”や“パパの育児参加”という言葉をよく耳にしますが、吉田さんもパパたちの育児への思いが変わってきている感覚はありますか?
「僕が今41歳ですけど、僕より下の世代は、”男は働いて、女は家を守る”といった古い考えはなく、性別の分け隔てなく教育されてきた人たちが多いので、現実的にできているかどうかは別にして『おれも育児しなきゃ』っていう気持ちを持っている人が多いとは思います。
ですが、実際は、専業主婦のママもいますし、共働きだとしても、ママが時短で働いている家庭が多く、夫婦としての役割が固定化されやすい。そうすると、『子育てしたいけど、あきらめよう。ママのほうができるし、ママに頼っちゃおう』っていう負のスパイラルに入るパパが多くて、そこにはまっちゃうとなかなか抜け出せないんですよね。
個人的に“パパの育児参加”という言葉が嫌いなんです。子どもがいる家庭であれば、当然“育児”も必要不可欠なものです。けど、育児“参加”って言っちゃうと、家庭という枠の外にいるということを事実上認めわけちゃうわけです。本来、夫婦は“家庭”という同じ枠の中にいるはずなのに、パパだけ追い出されている。パパに参加する選択肢を与えちゃっているわけで、同時に参加しないという選択肢も提示しちゃっているんです。違うでしょ。家庭の枠にいるなら、育児をする担い手の一人なんだという自覚を持たなくてはいけない」
男性の育休取得日数は、ほぼほぼ5日未満です
――その負のスパイラルから抜け出すには、働き方も大事ですよね。“働き方改革”が行われているとは言えど、まだまだ残業や休日出勤で家にいないパパが多い印象です。
「国主導で“働き方改革”を呼びかけたのは評価できますけど、堂々と育児休暇を取得できる会社はまだ少ない。それに、『男性の育休取得率が過去最高の5.14%に上がった!』と一部で喜んでいる向きもありますが、喜んでいる場合じゃないんです。取得日数を見ても、ほぼほぼ5日未満ですから。
大手企業だと1週間もらえるところもありますけど、生後1週間ってママと赤ちゃんはほとんど入院してるじゃないですか(笑)。これでは、日常的に赤ちゃんと2人きりで過ごしているママの本当の大変さはわからないし、パパが赤ちゃんとかかわる時間は短くなる。
せっかく『子育てをしたい!』と思っても、現実はこうですから、あきらめてしまってるパパも多いです。だから、今後は『あきらめちゃいけないんだ』と思えるパパを少しでも増やさないといけないなと思ってます」
パパが180度変わらなければいけないわけではない
――働き方をどうこうという前に、パパの意識を変えていくことが大事なわけですね。
「はい。いくら会社が“働き方改革”と言って制度を導入したとしても、パパに響かなければ意味がないですからね。ただ、意識を変えるのはそんなに難しいことじゃないんです。180度変わらなきゃいけないと思うと気が重いですが、ひとつひとつの日々の積み重ねが重要なんです。
いちばん下の子が2歳2カ月のころから、子ども3人をひとりで育ててますけど、子どもが生まれたばかりのころは、妻に頼らないといけないときもありました。僕が子どもを泣きやませようと1時間頑張ってもダメ。けれど、ママが抱っこした瞬間に泣きやむとか、絶望感にさいなまれていましたよ(笑)。それでも、『前回これでダメだったから、今回はこうしてみよう』と試行錯誤していたら、泣きやんだ日があったんです。そういった成功体験があると、自信につながります。より子どもとの距離が縮まる過程を面白がることが大事だと思うんです」
夫婦の在り方は、夫婦で決めればいい
――『育児をしたい』と思っているパパは、具体的に何をすればいいのでしょうか?
「ママの妊娠中は、体調面を最優先に気遣ってあげてください。買い物に行くとか、家事全般は担うとか。あと、第一子であれば、妊娠中は夫婦の時間があると思うので、その間に産後の役割分担、将来的にどうするかを含めて、お互いの気持ちを確認し合うことが大事です。
誤解してほしくないのは、『家事・育児を50対50で分担しましょう』と提唱しているわけではないんです。その割合は夫婦で決めればいいと言ってるんです。たとえば、普段はママがメインで家事・育児をしているけど、ママの体調が悪いとき、出かける予定があるときは、パパがそこを補えるくらいのレベルでまずはいいのかなって。当然、その逆の関係でもいいんです。
へたくそでもいいから、どのポジションもこなしていけるようにしていってもらいたいです。そこが第一歩となって、ママも「今日、出かけなきゃいけない。でもパパがいるからいっか」って、家を任せるきっかけにもなると思いますし。
まずは30分でもいいので、パパ1人で子どもの面倒を見る機会を作ってみるのはどうでしょうか? ママが近くにいると、どうしても頼ってしまうので(笑)。そうすると赤ちゃんとの触れ合い方も自然とわかってくるはずです。
一方のママも、心配だとは思いますが、パパに赤ちゃんのお世話を任せてみてください。パパの育児スキルが上がるだけでなく、ママ自身の時間を作れるようになります。ママに対して『子育て、大変だな。お疲れさま』って言葉はいくらでもかけられますけど、やっぱり本当の意味で理解するには、パパも育児にどっぷり浸かる機会が絶対に必要だと思います」
パパは少しでもいいので、赤ちゃんと2人きりの時間を過ごしてみましょう。ママも、パパに頼むより自分でやってしまったほうがラク!とは思わず、パパと赤ちゃん2人きりの時間も作ってあげて。
家事・育児の分担において大事なのは、夫婦がお互いに納得し合えるかどうか。この機会に、あらためて家族の在り方について話し合ってみてもいいかもしれませんね。(取材・文/ひよこクラブ編集部)
Profile●吉田大樹さん
労働・子育てジャーナリスト/NPO法人グリーンパパプロジェクト代表理事。15歳の男の子、12歳の女の子、10歳の男の子のパパ。現在、東京都「子供・子育て会議」委員を務めるなど、子育てと働くパパの在り方を専門に取材し続けています。