少しでもミルクを飲ませたら「母乳育児」じゃないの?
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母乳はママにとっても赤ちゃんにとっても大切で、母乳がいいのは確か。けれども、ママたちを取り巻く環境の中には、母乳を推奨するあまりに偏った意見も生まれ、「母乳は○」「ミルクは×」のような「母乳信仰」が生み出されてしまっている様子があります。
結果、ママたちからは
「ミルクをたしたら負けた気分になる」
「母乳育児のママのほうが優秀なママのような風潮を感じる」
という声も。
実際、ミルクを少しでもたしたら、母乳育児で得られるメリットは減ってしまうのでしょうか? 小児科医の保田典子先生に伺いました。
「私も混合育児でした」
「近年、高年出産のママが増えていることや、働くママが増えていることもあり、授乳を卒業するまで母乳だけで通すのは難しくなっているように感じます。
私も仕事をしながら3人の子どもを育てていますが、ミルクをたす量はそれぞれ違ったものの、3人とも混合育児にしていました。母乳は赤ちゃんにもママにもいいものではありますが、こだわるあまりに赤ちゃんに与える栄養量が少なくなってしまうのは本末転倒。つらい思いをしながら母乳だけの育児にこだわるのも、決していいことではないと思います」(保田先生・以下同)
ミルクが1~2割の混合なら完全母乳とほぼ同じ
「『母乳育児=100%母乳』と考える人は多いですが、母乳とミルクの割合が8:2程度なら、赤ちゃんに与えるメリットとママが受けるメリットも、完全母乳とほぼ同じと思って大丈夫です。母乳を続けていれば、その分だけ母乳の利点も受けられますから、量は少なくても、できるだけ長く母乳を飲ませるほうがいいのです」
「働くから母乳をやめる」はもったいない
「『保育園に預けるので、母乳をやめる』というママの声を聞くことがありますが、それはもったいないと感じます。
平日は出勤前と帰宅後に飲ませて、週末は母乳をメインにして、たりない分をミルクで補うという授乳パターンにすれば、仕事をしていても母乳を続けられると思います。
母乳には赤ちゃんを病気から守る免疫物質が含まれています。ですから、保育園などで集団生活をしていて病原体をもらってきやすい子には、少しでも長く母乳を飲ませてあげたほうがいいですよ」
母乳+ミルクの混合育児、ミルク育児を選んだママには、いろんな理由があることでしょう。保田先生も「どれがいい・悪いということではなく、ママと赤ちゃんがすこやかに過ごせることを優先して選ぶことがもっとも大事」と言います。ただ、ミルクより母乳のほうがいろいろな面から優れていることは事実。パパや家族の手を借り、母乳外来や小児科でアドバイスをもらい、ミルクの力を借りながら、長く母乳を飲ませられるといいですね。ミルク育児の人も、少しでも母乳を飲ませた経験があれば、「母乳育児経験者」と考えていいそうですよ。2019年4月号「混合育児はいいとこ取りって本当なの?」では、混合育児のメリット・デメリットなど、さらに混合育児について深堀り。ぜひチェックしてみて!(取材・文/ひよこクラブ編集部)
■監修:保田典子先生
東京衛生病院小児科勤務。日本小児科学会認定小児科専門医、医学博士。東京女子医科大学で博士号取得、第1子の出産を機に現職に。2男、1女のママでもあります。