「夫にもっと家事をしてほしい!」と思った時に、効果的に伝える“会話のテクニック”
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妻に自分の気持ちを上手く話せない。夫に褒め言葉をもらえない――。そんなとき、どうすれば夫婦間の心の距離を縮められるのでしょうか。目白大学メディア学部教授の安斎徹先生に関係改善のポイントを教えていただきました。
ポイント1 無条件で相手を褒める習慣を作る
コミュニケーションのベースとなる他者に対する働きかけを「ストローク」と呼びます。 笑顔を向けたり、トントンと肩をたたいたり、話しかけたりする行為も、すべてストロークのなかの一つ。夫婦間や家族間、ビジネスの場でも日々ストロークが交わされています。ポイントは、次の3つです。
【ストロークの法則】(※1)
1.肯定的なストローク(褒め言葉など)を無条件で受けている人の心は安定している
2.肯定的なストロークを相手に与えると、相手から肯定的なストロークが返ってくる
3.肯定的なストロークが不足してくると、他者から叱られるようなことをする
ストロークは誰でも簡単にできるコミュニケーションですが、使い方によっては人間関係にヒビを入れる原因になってしまいます。例えば夫婦でコミュニケーションをとるときには、「片付けが乱雑でかえって手間がかかったわ」と重箱の隅をつつくような“否定的なストローク”をするより、「手伝ってくれてありがとう」と素直に“相手を肯定するストローク”のほうが効果的。褒められて悪い気はしないので、次はもっと手伝おうという気になります す。
また、相手を肯定して褒める場合は、直ちに具体的に褒めるのがポイントです。「先週の料理は最高だったね」より「今日の料理は彩も豊かでとても美味しかった」の方がインパクトがあります。次のように、特に相手が気づいていないこと、努力しているプロセスなど、本人も自覚や意識をしていなかったことを褒めてあげると効果が倍増します。
【効果的な褒め方】(※1)
◆いつ
1.相手の行為の直後
2.相手が褒めて欲しいと思っているとき
◆何を
1.相手の行動、考え方、気持ち
2.相手の長所
3.相手にとって思い入れが強いこと
4.相手が気づいていないこと
5.当たり前にできていること
6.相手が努力しているプロセス
7.相手が「欠点・短所」であると感じているところ
ポイント2 自分と相手の気持ちを尊重して話す
自分と相手、双方の思いを尊重するコミュニケーションのことを「アサーション」と言います。このアサーションを行う場合に役立つのが、「DESC法」と呼ばれる手法です。
例えば、ある共働きの夫婦が家事を分担し、平日は妻が料理を作り、休日は夫が料理を作っているとします。妻が「夫にもう少し家事を負担してほしい」思ったとき、どのように声をかけるとスムーズに話が進むでしょうか。
【DESC法】(※2)
D=describe:描写する
E=express:表現する
S=specify:特定の提案をする
C=choose:選択肢を示す
という4点に気をつけて話をすると、次のような流れになります。
D(描写)
「ちょっと聞いてくれる?平日は私が料理を作り、休日はあなたが料理を作ってくれているよね」
E(説明)
「いつもありがとう。ただ、平日は私も働いていて疲れているの」
S(提案)
「せめて平日1日だけでも料理を作ってもらえると楽になるんだけどどうかな?」
C(選択肢)
Yes「考えてくれてありがとう、嬉しい」
No「それなら食べた後の片付けだけでも手伝ってくれると嬉しいんだけど」
このように順序立てて話すことで、相手は話を理解しやすくなり、現状を踏まえて結論を出せるようになります。自分の意見や考え、気持ちを正確に伝えたいときは、話す順序を考えてから伝えるのがおすすめです。
ポイント3 短所を長所に言い換えて伝える
同じニュースを見ても人によって見解が異なるように、どうにもならない短所も、見る角度によっては長所になる可能性があります。このように周りの「枠組み」を変えて物事をとらえなおすことを「リフレーミング」と言います。
例えば、「だらしない」という短所を「おおらか」と言い換えたり、「短気」という短所を「判断が早い」と言い換えたり。マイナスの言葉をプラスに置き換えると、会話がはずみやすくなります。こういった言い換えは、「長所 短所 言い換え」などと調べるとたくさんでてきますので、一度見てみるといいですよ。
人生の捉え方も同じです。今は育児中心の目まぐるしい毎日だとしても、いずれ子どもは手を離れてしまいます。そして自分のために時間を使い、ボランティアなどの社会生活を充実させられる時期がきます。「人生100年時代」と考え、夫婦円満で育児期を乗り越えましょう。
この記事は、2019年3月に開催されたイベント「たまひよカレッジ」で行われた安斎徹先生の「妻と夫のワーク・ライフ・バランス実践法」の内容を抜粋したものです。
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■講師/安斎徹先生
目白大学メディア学部 教授
1984年一橋大学法学部卒業。28年間にわたるサラリーマン生活では、営業・企画・事務・海外・秘書・人事・研修など幅広い業務を経験。2週間の育児休暇を取得し「20世紀のイクメン」を自認。働きながら大学院に通い、立教大学で修士、早稲田大学で博士の学位を取得。51歳の時に大学教員に転身、群馬県立女子大学教授などを経て2018年より現職。聖心女子大学非常勤講師。著書『企業人の社会貢献意識はどう変わったのか』(ミネルヴァ書房)、『女性の未来に大学ができること』(樹村房)。
●調査結果
(※1)日本生産性本部・大山雅嗣、2012年『コミュニケーションスキル ワークブック』
日本生産性本部
(※2)平木典子、2009年、『改訂版 アサーション・トレーニング』金子書房