はじめての家づくり! 30代なら決断する前に必ずしてほしいこと
夢が膨らむマイホーム。「家は一生で1回の最も大きな買い物」とよく言われますが、それと同時に「家は3回建てないと理想の家にならない」とも言われています。この矛盾はなぜ生まれるのでしょうか。家づくりはとにかくやることが盛り沢山なので、十分な時間と労力が必要です。できるだけ多くの情報収集に努め、正しい知識と知恵をつけて臨むことにヒントがあるのかもしれません。そこで今回は、家づくりをする際に注意しておきたいことを宅地建物取引士の佐伯大輔さんに教えていただきました。
佐伯 大輔
大手ハウスメーカーに15年勤務。営業として150棟以上の戸建て住宅を担当するとともに、分譲店店長として大型分譲地の街づくりを手掛ける。現在は土地活用や賃貸経営のコンサルティング分野に携わる。また、自身も32歳 (長女が4歳、長男が1歳)のときにマイホームを建て、その経験や知識をアウトプットし続けている。
とにもかくにもまずは予算を把握しよう
家づくりにおいて、多くの人が当初の予算をオーバーしてしまいます。その主な要因は、どうせなら良いものを建てたい(買いたい)という欲求と、住宅ローンの金利にあると思っています。
現在の住宅ローンの変動金利はネット銀行を中心に0.5%前後という超低金利で推移しています。それに加えて、金融機関によっては税込年収のおよそ7倍までの融資が可能なケースがあります。例えば、年収600万円の世帯なら4,200万円までの借り入れが可能だということです。
4,200万円のローン(35年返済)で、0.5%の金利だとすると、毎月の返済額は約11万円(A)。
「意外と低いな?」「なんとかやっていけるかな?」と思われたでしょうか? そうであれば、ちょっと待ってください。
仮に夫の収入のみで年収600万円であれば、税金等を差し引いた実際の手取り額は年間485万円(家族が妻と子ども1人の3人家族と仮定)程度と考えられます。つまり、月々の手取りに換算すると約40万円(B)なのです。
対して、3人世帯のローン返済額を除く支出を約30万円(C)と仮定した場合、A+C>Bとなり、支出が収入を超えてしまいます。
※仮定支出の内訳
食費7万円、水道光熱費2万円、日用品2万円、教育費2万円、保険・医療費3万円、税金(固定資産税や自動車税など)2万円、交通・通信費4万円、娯楽費3万円、小遣い・交際費5万円
もちろん将来的に給料が増えることは考えられます。しかし、その逆もあり得ますよね。会社の業績低迷で人員削減の煽りを受けることもあれば、病気やけがのリスク、金利の上昇リスクなどもあります。
低金利の恩恵を受けて、ついつい借入額を増やしてしまいがちですが、決して「借りられる額」は「返していける額」ではないことを忘れてはいけません。返済を続けながらも、年に100万円程度は貯金ができるくらいの返済計画を心掛けましょう。
リアルサイズのモデルハウスを見学しよう
総合展示場にあるような大きなモデルハウスもいいのですが、できれば20代、30代の方が建てる平均的なサイズ(30坪~40坪程度)のモデルハウスを見学しましょう。
各住宅会社が案内現場としても活用している販売物件(建売住宅)を見学できたり、実際にその会社で建てた施主さんの家を現場見学会としてイベント開催したりするケースがありますので、積極的に見に行ってみてください。そういった建物は多くの場合、人気の高い間取りやアイテムを取り入れているものです。イメージが沸くだけでなく、最近のトレンドや各住宅会社のテイストも確認できます。
外観やインテリアの雰囲気が自分の好みかどうか、構造や性能などの標準スペックが満足できるものか、案内してくれる営業マンの実力や相性はどうかなど、リアルサイズのモデルハウスの見学は「その住宅と会社のレベル」を知ることができる絶好の機会なのです。
思わぬ阻害要因があることを知っておこう
家づくりの進行途中で、思わぬ障害が立ちはだかることがあります。それが原因で計画を大きく変更せざるを得なくなったり、時に断念しなくてはいけないことも。例えば、住宅ローンの審査が通らない、役所の申請が下りないなどがあります。
思わぬ障害の中でも、特に多いのが親の反対です。「もっと頭金を貯めてからにしなさい!」「身の丈に合った金額のものにしなさい!」「実家で同居しなさい!」「そんな会社に頼むな。○○会社にしなさい!」など。親の反対意見は多種多様で、時間と労力をかけて進めてきた計画が根底から覆ることも少なくありません。
私なりの結論は、自分たちだけで計画を進めることが、そもそも親の機嫌を損ねる一番の要因だということ。マイホームを計画する際は、必ずご両親に相談するようにしましょう。
住宅購入者の約40%は親からの資金援助を受けていると言われています。ご両親との人間関係を良好に保つことで、金銭的にも応援してもらえるならそれに越したことはないですよね。
参考:住宅購入者の約4割は両親からの援助を受けている!? 購入経験者100人にアンケート
契約や入居の時期は自分のタイミングで決めよう
家づくりはさまざまなタイミングで結論を迫られる場面があります。
「この物件は他にも欲しいというお客様がいるので今週中に結論を!」「今月のご契約が値引きの条件です!」「税制の優遇を受けるには3月までの入居が必要です!」など、時にそれはセールストークであることも少なくありません。その話に乗るなということではなく、そういった場面に遭遇しても冷静に判断するようにしましょう。
客観的には良い条件でも、それが自分たちにとって本当に良い条件なのかは違うことがあります。
結局のところ今も昔も「もっと時間をかけて比較検討すれば良かった」という後悔が一番多いのです。
「家は3回建てないと理想の家にならない」という言葉は、先輩方のリアルな体験談に他なりません。私は家を建てて10年になりますが、2階にトイレをつけなかったことを今だに家族から不満だと言われます。予算を削るところを間違った典型的な失敗例ですね(笑)。
ぜひ納得のいく家づくりを「1回で」成功できるように、準備を大切にしてください。