脳医学者・瀧先生発信! 0才・1才の脳のためには、スイミングや英語よりも、大切なことがある
親が子どもの能力を最大限に伸ばしたい、と思うのは当然のこと。でも、情報がありすぎて何をすればいいか判断できない!と思う人も多いはず。そこで、数々のヒット本を生み出し、脳医学者として最先端の研究をされている瀧靖之先生に「今、親は何をすべきか」お聞きしました。
親が楽しむことがいちばん
人の能力の獲得は、すべて“模倣”がかかわります。生まれたときからお話ができる赤ちゃんはいなくて、言葉もしぐさも箸の使い方も、すべて模倣で覚えていきますよね。
心理学的には、子どもがマネをするうえでいちばん重要な対象は“親”だといわれています。親が楽しくやれば子どもも楽しくやる。親がストレスを抱いていたり自己肯定感が低かったりすると、子どもも同じような状況になりやすい。逆に親がゆったりといろいろなことを楽しんでいれば、子どもたちのストレスレベルを下げるとも言われているんですね。
近著『最新の脳医学でわかった! こんなカンタンなことで子どもの可能性はグングン伸びる!』でも書きましたが、脳科学の面からは、この模倣は“ミラーニューロン”という神経細胞の働きだと説明ができます。
たとえば習い事だって、「これをやりなさい」と一方的に言ってもやりたいと思うはずがない。親が楽しそうにピアノを弾いたり、スポーツをやったりすれば、自然と子どももやりたがるのです。
「子どもをどう育てたいか」と考えるとき、私たち自身が楽しむことがとても大事なポイントになります。
効率よく学ばせたいなら…
「子どものために」と、早期教育に興味を持たれている親御さんも多いですよね。
「0才からの水泳」「1才からピアノ」…これらがいいか悪いかは断言できません。けれど、脳というのはすべての領域が一緒に発達するのではなく、それぞれにベストな時期があるということはわかっています。
感覚にかかわる領域は生まれてすぐ、非常に早いタイミングで発達のピークが来るし、運動にかかわる「運動野」のピークは3~5才に来ます。そのころから少しずつピアノやバイオリン、サッカーや野球を始めると、非常に効率よく、短時間で習得しやすいんです。ピークが来ていない段階でいろいろなことを習得させようとすると、力は少しずつ伸びるけれども、効率はよくない。ピアノは1才から始めるよりも、30才から始めるよりも、5才から始めたほうが、あるレベルに達するまでの時間が短いと言えるでしょう。
タイミングを逃しても、取り戻せる
じゃぁ、そのベストタイミングをはずしたらどうなるのでしょう?
脳には可塑性といって、変化する力があります。このおかげで、たとえば50才からピアノを始めたとしても、ある程度のレベルまでは伸びます。ただ、5才なら少しの練習ですぐに曲を弾けるようになるけれど、50才になると可塑性のパワーも下がっているので、そこまでいくのに練習時間がかなり必要になる。
でも私がいちばん伝えたいのは、時間がかかって「できない」のではなく、時間をかければ「できる」ということ。「子どもに〇〇をさせていない」とあせることもないし、一方で、「大人になってからピアノやスポーツなんて」とあきらめることもない、ということです。
「模倣」でさまざまなことを学んでいくからこそ、子育ては親が楽しく過ごしていることが大事だと繰り返し話していた瀧先生。次回は親が楽しむには具体的にどんなことをしたらいいのか、手がかりをご紹介します!(撮影/Yoshinori Kurosawa 取材・文/ひよこクラブ編集部)
参考
『最新の脳医学でわかった! こんなカンタンなことで子どもの可能性はグングン伸びる!』
PROFILE
瀧 靖之先生
医師、医学博士。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。主な著書に『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える 「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)、『脳科学者が教える! 子どもを賢く育てるヒント「アウトドア育脳」のすすめ』(山と渓谷社)など。7才になる男の子の父。
『最新の脳医学でわかった! こんなカンタンなことで子どもの可能性はグングン伸びる!』
瀧靖之/著 1400円
(ソレイユ出版)