幸福学の観点でみる「子どもの早期教育」。大切なのは、「やるかやらないか」ではない理由
撮影/小山志麻
早期教育とは、0~3歳に行う教育のことを指し、この時期は大脳が急速に発達するため、教えるといろんなことをどんどん吸収する時期だとも言われています。
そのため、0~3歳のうちに「わが子の将来のため!」と、英語、音楽、ひらがな、数、スポーツなどを習わせたいと考えるママ・パパもいるのでは!?
しかし、早期教育は本当にわが子の将来に役立つのでしょうか。認知心理学・脳科学、幸福学などを研究する、慶應義塾大学大学院教授・前野隆司先生に話をうかがいました。
身に着くかつかないかなく、もっと大切なもの
「将来、英語を話せる子になって欲しい」と願って、早期教育で英語を習わせたいと考えるママ・パパもいると思います。
前野先生はご自身の子育て経験から、「語学は現地で学ぶのがいちばん」ということを痛感したそうです。
「仕事の関係で、アメリカに住んでいた時期があるのですが、子どもはわずか半年ぐらいでネーティブの発音で英語がペラペラ話せるようになりました。子どもが3歳のころに帰国して、“英語を忘れないように”と思い、英会話スクールに通わせたのですが、あっという間に英語が話せなくなるんですよね。身についていたはずのネーティブの発音も、すぐに聞かれなくなってしまいました」
早期教育は、ほかの子と比べないのが原則!
わが子を幸せにするためには、「早期教育をやるか・やらないか」よりも、大切なことがあると前野先生は言います。
「私の例からもわかるように、早期教育で大切なのは、わが子が幸せになるかどうか。『〇〇ちゃんは、できるのに…。うちの子はまだできない!』『××くんは、〇級が受かったのに、うちの子はまた落ちちゃった…』など、ほかの子と比べるのは、わが子の幸福度を下げる要因になりえます。
たとえ口に出さなくても、ママ・パパががっかりした表情などを見せるだけで、子どもは空気を察します。
ほかの子と比べられてばかりいると、乳幼児期から自己肯定感が育めず、やがて「自分はダメなんだ…」という劣等感を抱くようになります。それでは、せっかく早期教育をしても、逆効果です。
ママ・パパに心がけて欲しいのは、たとえ子どもが失敗したり、できなかったりしても笑顔で明るく『頑張ったね!』『よくやったね!』と、温かく受け入れてあげることです。
そうした繰り返しが、子どもの自信につながり、幸福度を高めていきます」
早期教育をする場合、大切なのはママやパパのかかわり方。アメリカでは子どもが失敗すると、笑顔で「good job」と励ますママ・パパもいるそう。「子どもは失敗するのが仕事。まさに“good job”ですよね」と言う前野先生。そんなふうに前向きに励ませたら、すてきですよね!(文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部)
前野隆司先生
「幸福学」研究の第一人者。著書『「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン/1500円)が話題に。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授、研究科委員長。ロボット、教育、地域社会、ビジネス、幸福な人生など、さまざまなデザイン・マネジメント研究を行う。