子どもが幼稚園生、小学生、中学生?住宅ローンはどのタイミングに組むのがいいの?
「ゆくゆくは持ち家が欲しい」と思っていても、実際に購入するタイミングは悩みどころですね。住宅購入のタイミングの一つに、子どもの成長に合わせるというのがあります。ここでは、不動産コンサルタントの秋津智幸さんが、子どもの成長タイミングで住宅を購入する際のメリットと注意点について、モデルケースを用いて解説します。
秋津 智幸(不動産コンサルタント)
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント
不動産サポート.jp
公認不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。自宅購入、不動産投資、賃貸住宅等不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、企業研修や各種セミナー講師、書籍、コラム等の執筆・監修にも取り組む。著書:「賃貸生活A to Z」(アスペクト)、「〔2019~2020年版〕30年後に絶対後悔しない中古マンションの選び方」(監修)(河出書房新社)他。
モデルケースで子どもの成長と合わせた住宅購入をみていきましょう
内閣府公表の「少子化社会対策白書(平成30年版)」では、第1子誕生時の夫婦の全国平均年齢は妻30.7歳、夫32.6歳。第2子誕生は夫婦とも30代前半が最も多くなっています。そこで、ここでは夫35歳、妻33歳、第1子3歳、第2子1歳の家族をモデルケースとして、子どもの進学のタイミングごとに住宅を購入する場合のメリットと注意点をみていきましょう。
出典:内閣府ホームページ 「平成30年版 少子化社会対策白書」
「小学校入学前」に住宅を購入する場合のメリットと注意点
モデルケースの3年後、第1子が小学校入学前(6歳)に住宅を購入する場合、第2子もまだ小さく、子どもの養育費、教育費はまだ低く、住宅取得のための資金を拠出しやすいというメリットがあります。小学校入学前のタイミングであれば、学区によるエリアの制約もなく、住宅を選べるというのも大きなメリットです。
また、住宅ローンは長期にわたるローンであるため、親の年齢が若いうち(モデルケースでは夫38歳)に返済をはじめ、繰り上げ返済をしていくことで、まだ働ける年齢のうちに返済をほぼ終えることができます。さらに、住宅購入によって住宅ローン返済などの住居費がほぼ確定し、長期的な家計の資金計画が立てやすくなることもメリットと言えます。
一方、注意点としては、公立小中学校は学区が限定されるため、購入時に学区を意識する必要があることです。
他にも、子どもの進路(私立or公立など)がはっきりしていないので、その後の養育費や教育費を想定する必要があることや、子どもが小さいうちは妻がフルタイムで働かない家庭も多く、そのため、住宅ローンの返済額はできるだけ無理のないものとしておく必要があります。
上の子どもの「中学校入学のタイミング」で住宅を購入する場合のメリットと注意点
モデルケースの10年後、第1子が中学入学(13歳)のタイミングでの住宅購入のメリットは、子どもの手が離れて妻(43歳)もより働きやすい状況になっていることです。妻の収入が増えれば、資金計画も子どもが小さいうちに購入するよりも楽になる傾向があり、予算的に選べる住宅の幅が広がるというのもこのタイミングのメリットと言えます。
一方、妻が働かない場合は、一番教育費がかかり始める年代なので、ローンの返済を抑えた資金計画にする必要があります。また、下の子ども(11歳)が公立小学校であれば、住宅を選ぶ際に学区は意識しておくべきでしょう。
上の子どもが「高校入学のタイミング」で住宅を購入する場合のメリットと注意点
モデルケースの13年後、第1子が高校入学(16歳)のタイミングでは、下の子は中学生(14歳)、夫も48歳となります。このタイミングでの住宅購入のメリットは、親の収入も増えているケースが多く、予算的にはより住宅の選択肢の幅が広がります。
ただ、このタイミングではメリットより注意点が増えてきます。
1つ目は、これから第1子、第2子とも教育費がより必要な年代になるので、ローンの支払いを一層抑えた資金計画にする必要があること。
2つ目は、学習環境やプライベートを意識して、子ども部屋は2人分確保したくなる家庭が多いこと。したがって、住宅の面積も広くなる傾向があるので、住宅購入の予算面が増える可能性が高くなります。
3つ目には、下の子どもはまだ中学生であるため、中学校の学区を意識すると、選べる住宅のエリアが制限されること。
そして、親の年齢が40代後半となり、住宅ローンの最も良い条件を利用するにはぎりぎりの年代になることです。この年代での住宅ローン返済にあたっては繰り上げ返済を当初から頻繁にすることを念頭に入れておく必要があります。
上の子どもが「大学入学のタイミング」で住宅を購入する場合のメリットと注意点
モデルケースの16年後、第1子が大学入学のタイミングで住宅を購入する最大のメリットは、子どもの養育費、教育費の目途がおおよそ見えてくる時期で、子どもが小さいうちより将来の資金計画が立てやすいことです。
ただし、このタイミングの住宅購入となると、自分たちの老後資金のことが注意点となってきます。モデルケースでは上の子が大学入学時点(第1子19歳)で、夫51歳となっています。完済年齢の関係で、長期の住宅ローンが組みにくくなり、あまり高額なローンを組むと自分たち(親)の老後資金などに大きな影響があるので、住宅購入にあたってはより多めの自己資金(頭金)を準備しておく必要があります。
また、第1子が大学入学とともに一人暮らしを始めるなど家族の状況の変化によって、購入する住宅の間取りや面積も大きく変わってきますから、購入前に子どもたちを交えて家族での話し合いが重要です。
近年、第1子が誕生したときの親の年齢が高くなっている傾向にあります。そのため、住宅ローンを使用して住宅を購入するなら、子どもがまだ小さいうちに購入し、ローンの返済を早く始めたほうが子どもたちの学校(学区)のことや自分たち親の将来を考えると得策と考える家庭が増えてきました。あくまで個々の家庭の事情次第ですが、シミュレーションの参考にしてください。