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子どもの成長を妨げる「マルトリートメント(不適切な養育)」とは?

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頭のベビーガール
M-image/gettyimages

“マルトリートメント”(以下 マルトリ)という言葉をご存じですか。マルトリとは、「不適切な養育」と日本語に訳されていますが、虐待はもちろん、子どもへの八つ当たりや暴言、ネグレクトなども含まれます。またマルトリを受け続けた子は、対人関係が苦手になるなど、さまざまな影響が!
マルトリによって脳やココロにダメージを受けた子どもたちの相談や治療に当たる、小児科医・友田明美先生に、ママやパパに知っておいてほしい“マルトリ”について話を聞きました。

関連:【子どものしつけ】いつから始める?たたいちゃダメなの?

マルトリって何!? 虐待との違いは?

虐待と言うと「わが家は関係ない」と思う人が多いと思います。しかしマルトリ(不適切な養育)は、子育てをしているとだれもがしがちな行為です。次の項目に1つでも当てはまったら、子どもとのかかわり方を見直してみてください。

<マルトリ チェックリスト>
□子どもの前で、夫婦げんかをする
□習い事など子どもが嫌がっているのに「あなたのためだから!」と言い聞かせたり、押しつけたりする
□子どもをストレスのはけ口にして、八つ当たりをする
□いつもはしからないのに、気分によってしかることがある
□子どもにスマホやタブレットを与えてほうっておく。またはママ(パパ)がスマホやタブレットを見て、子どもをほうっておく。
□子どもがママやパパとかかわろうとしても、気分や忙しさから相手をしないことがある
□ママやパパの気分によって、子どものお世話をしないことがある

5つのマルトリがもたらす、子どもへの影響

マルトリのいちばんの問題点は、強度や頻度が増すと、子どもの脳やココロが傷つき、健やかな成長が阻害される点です。マルトリには、次の5つのタイプがあり、子どもに与える影響がそれぞれ異なることがわかっています。

1.身体的マルトリ

たたくなど、子どもに暴力をふるうこと。過度に身体的マルトリが続くと、脳の前帯状回(ぜんたいじょうかい)などが萎縮(いしゅく)して、集中力に欠けたり、意思決定が弱くなったりする場合も。また暴力のストレスから自分を守るため脳が防衛反応を起こし、痛みに対して鈍感になりやすくなります。

2.心理的マルトリ

「何をやらせてもダメね」「ママ、〇〇ちゃんのこと大嫌い!」「〇〇ちゃんは、うちの子じゃない!」などののしったり、脅したりすること。こうした言葉の暴力を浴び続けると、子どもは「自分はダメな人間だ…」と思うようになり、脳の聴覚野(ちょうかくや)の一部が肥大し、しだいに人とのコミュニケーションがうまくとれなくなったりします。

3.面前DV

両親間のDV(ドメスティック・バイオレンス)や過度な夫婦げんかを、子どもの前で行うこと。そうした親の姿を見続けて育つと、脳の視覚野(しかくや)が萎縮(いしゅく)し、他人の気持ちを察するのが苦手になり、対人関係につまずきやすい傾向が。

4.ネグレクト

食事をさせない、おふろに入れない、おむつを替えないなど、子育てに必要なことを放棄すること。ネグレクトを長期的に受けると、脳の線条体(せんじょうたい)の働きが弱くなり、無気力になったり、イライラするなど、ちょっとしたことでココロが不安定になる愛着障害につながる場合も。

5.性的マルトリ

性の対象として、子どもを扱うこと。性的マルトリを受けると、子どもは脳の視覚野(しかくや)が萎縮(いしゅく)し、面前DV同様に、人とコミュニケーションをとるのが苦手な傾向が強くなります。

マルトリを防ぐには、どうしたらいいの?

“5つのマルトリがもたらす、子どもへの影響”を読んで「ついイライラして、ひどいことを言ったりしたことがあるけど大丈夫?」と不安になったママやパパもいるのではないでしょうか。脳の成長を考えると、理想は5歳までにはかかわり方を見直してほしいのですが、それ以降でもまずは「ごめんね! ママ(パパ)言い過ぎたね」という気持ちを、素直に子どもに伝えてください。そして今日から、子どもにたっぷり愛情を注いで関係修復に努めましょう。
もしマルトリをしそうになったら、次のことを実践してみて!

<マルトリを防ぐためのポイント>

Point1. 感情的になったら、ガチで向き合わない
子どもに対して、感情的に怒りそうになったらガチで向き合わないこと! 子どもに危険がなければ子どもから少し離れた場所に移動し、深呼吸をしたりして気持ちを切り替えてみて。

Point2. イヤイヤ期は見守って乗りきる
イヤイヤ期だと「毎日、しかってばかり…」と言うママやパパも。しかしイヤイヤ期は、脳が未発達なため、いくらママやパパがしかっても欲求を抑えるのは難しいもの。“今は、そういう時期”と割りきって、温かい目で見守ってください。

Point3. SOSは気軽に出す
育児の悩みは、気軽に相談してOK! ママ友だちやパパ、ばあば・じいじなど身近な人に相談してもいいですし、保育園や幼稚園の先生、地域の保健センターなどで相談してもいいですよ! よき理解者がいてくれると、ママ(パパ)の心の安定につながります。

Point4. “共育て”で第三者と積極的にかかわる
核家族での子育ては、ママやパパにとって大きなストレスになり、時にはマルトリにつながることも。そのため子育て支援センターなどを利用したり、保育園や幼稚園に通っていなくても、一時保育などを利用してママ(パパ)の自由時間を作ったりするなど、第三者を交えて子育てをする“共育て”をしましょう。脳の成長の面からも、ママ・パパだけで育てるより、第三者がかかわったほうが子どもの脳のネットワークがより発達することがわかっています。

Point5. 完璧な子育てをめざさない
メディアに出てくる素敵なママと比べて、子育てのハードルを上げたり、完璧な子育てをめざさしたりしないで! 完璧をめざすと、現実とのギャップに苦しんで、子どもに八つ当たりなどをしてしまう場合も。子どもが1歳なら、親も育児年齢は1歳。「親も子も成長途中!」と考えて、おおらかな気持ちで子どもと向き合いましょう。

関連:【1歳代・2歳代のしつけ】社会のルールを子どもに伝える方法

<マルトリ チェックリスト>を見て、「私も当てはまる!」と思った方は少なくないと思います。それほどマルトリは子育中、だれもがしやすい行為です。大切なのは「わが子にマルトリをしている」という現実に気づくこと。その気づきが、マルトリを脱却する第一歩です。(取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部)

■監修/友田明美先生
(福井大学 子どものこころの発達研究センター 教授)
小児神経科医、医学博士。専門は、小児発達学、小児精神神経学。2009~2011年および2017年~2019年に日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究日本側代表を務める。主な著書に「親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる 」(NHK出版新書)、「実は危ない! その育児が子どもの脳を変形させる」(PHP研究所)などがある。

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