「HIGH&LOW」脚本家・平沼紀久が語る育児&制作秘話
「HIGH&LOW(ハイアンドロー)」は元EXILEのHIROさんが総合プロデュースを務めているEXILE TRIBEの手掛けている総合エンタテインメントプロジェクト企画。
常識破りな怒涛のストーリー展開や息をのむ本格的なアクション、豪華俳優陣が演じる個性的なキャラクターなどが話題となり、いまや国内だけにとどまらず、アジアにまでファンを拡大し続けています。そんな超人気シリーズの脚本や監督を務める平沼紀久さんは、1才のお子さんのパパ。子育て中の平沼さんに、家庭での育児の様子や、「HIGH&LOW」の現場の裏話を聞きました。
育児も仕事も“みんなで”つくっていきたい
――お子さんが生まれてから、生活や気持ちに変化はありましたか?
平沼紀久さん(以下敬称略) わが家は、主に妻が家のことをやってくれていて、その分僕が仕事を頑張るというスタイル。夫婦2人のときは完全にそうでしたが、子どもが生まれてからは、家事・育児も「みんなでやろうぜ」みたいな意識が芽生えました。一緒に育児をしていくなかで、自分の仕事と同じくらいのことを妻が家でやってくれていると感じているので、自然とそう思うようになりましたね。
「HIGH&LOW」の現場でも、「みんなでつくっていく環境のほうがよくない?」とよく言っています。監督の考えが絶対ではないので、いいものは全部取り入れています。俳優陣も「こういうセリフはどうですか?」と提案してくれる。生きたセリフを言いたい気持ちはよくわかるので、尊重しています。自分の考えに固執しないようにしていますね。
子どもが生まれてから、“家族同士で”集まる機会が増えた
――お子さんが生まれて、スタッフとのかかわり方にも変化があったとか。
平沼 今までは仕事仲間だけで食事に行っていましたが、子どもが生まれてからは家族同士で食事することが多くなりました。HIROさんが、「家族も連れておいでよ」と言うことも多いんです。あと、以前よりも集まる開始時間と終了時間が自然と早くなりました。「HIGH&LOW」の撮影中も、ロケバスの中で子どものいるスタッフと情報交換をしています。「今、何カ月くらいなの?」「うちはあのベビーカーを買ったよ~」とか、話していますね(笑)。
あえて「余白」をつくることで、想像がふくらむ
――育児がご自身の創作活動に影響を与えることはありますか?
平沼 いつか、子どもがもっと大きくなったときに「これ、パパがつくったの⁉」って、喜ぶようなものを作りたいと思うようになりました。今までは、大人のみなさんがどう楽しんでくれるかを考えていましたが、こうしたら、子どもたちも楽しいだろうな、とか。大人っぽく考えすぎていたかな、もっとラフでもいいのかなって思いながら脚本を書き直すこともあります。それは結構大きなことだと感じていますね。
説明しすぎず、あえて想像して考える部分を増やす、“想像させる余白”も大事にしています。子どもって、そういう余白をいっぱい持っているイメージで。大人が何も言わなくても、自分でその先を想像しているんです。
だから、いかに余白をつくるかというのを、子どもの姿を通して再確認するようになりました。
子どもには、これからそういう想像ができるものに、どんどん触れてもらいたいです。外に出ていろんなものに触れさせたり、「この先はどうなってるんだろうね?」と話しかけながら一緒に遊んでいきたいなと思っています。
子育てをして芽生えた意識や、仕事への熱い思いをとても楽しそうに、笑顔で語ってくださった平沼さん。
今の楽しみは、夜お子さんを寝かしつけたあとの夫婦での晩酌タイムなんだそう。「子どもの話や、『こないだこうだったけどさ…』という意見交換をしています。この時間がいいよね、なんて言いながら。子どもが生まれてからのほうが、自然と妻とゆっくり話せる時間が増えた気がしますね」と教えてくれました。
平沼さんは、「子育ても仕事も、一つの考え方にしばられたり、固執したりせず、柔軟な姿勢が大事!」と言います。
日々、目まぐるしいスピードで成長する子どもたち…親として、大人として、“柔軟に”子どもと向き合い続けていくことは、とても大切なことだと感じました。
(写真/野中麻美子 取材・文/後藤ゆい 構成/ひよこクラブ編集部)
■プロフィール
平沼紀久(ひらぬま のりひさ)
1976年生まれ。「HIGH&LOW」全シリーズの脚本を手がける。絵本作家としてキッズデザイン賞、フードアクションニッポンで優秀賞を受賞。シリーズ最新作「HIGH&LOW THE WORST」の脚本を担当。執筆業のほか、俳優としても活躍。