【小学生の家庭学習】約4割の子がほぼ毎日やっている「自学ノート」ってなに? そのメリットを教育の専門家が解説
新学年・新学期になって、家庭学習の時間や内容について気になるママも少なくないのでは? 今回は、「子どもの生活と学びに関する親子調査」(東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所の共同研究)の結果をもとに、子どもたちの家庭学習の実情について、小学校の校長を務められていた後藤良秀先生にお話を聞きました。
小学生が家庭学習にかける時間はどれくらい?
2018年「子どもの生活と学びに関する親子調査」の中から「家庭学習にかける時間」についての報告をご紹介します。各学年で家庭学習にどれくらいの時間をかけているのでしょう。
学校での学習時間(「宿題」「学校の宿題以外の勉強」「学習塾」の時間)は、小学生1年生で43.2分、3年生で59分、6年生になると102.3分と学年が上がるほど増加しています。注目すべきは、低学年から宿題以外の自主的に勉強をしていることです。
どういった背景から、家庭でも自学自習に力を入れるようになったのでしょうか。後藤先生に聞きました。
「かつては、家庭学習時間は、学年×10分(程度)と言われていていましたが、データからもわかるように低学年からその時間以上に勉強しています。この結果から、予想以上に学習習慣を身につけるには家庭学習は大事だと思っている家庭が多く、家庭学習に対する保護者の意識の高さがうかがえます。
また、中学受験、高校受験、大学受験などを見据えて、よりよい進路に進むために低学年の早い時期から学習習慣を身につけたほうがいいと思う保護者が多いということではないでしょうか。
ただ、時間や学習内容はお子さんによって違うので、このデータにとらわれる必要はありません。お子さんのタイプや学習目標に合わせて、復習や予習に力を入れたり、自学ノートなどで活用力を鍛えたりするなど、時間の割り振りを考えて計画を立てることが大切です」(後藤良秀先生)
自学自習ノートで自主学習する子どもが急増! その理由とは?
家庭学習の内容について調査した「第5回学習基本調査」(ベネッセ教育総合研究所・2015年)のデータによると、自学ノートなどで自主的に勉強する子どもが増えていることがわかりました。注目されている自学ノートとはどんなものなのでしょう。後藤先生に聞きます。
「インターネットで『自学ノート』を検索すると、たくさんの見本やアイデア、まとめ方が紹介されるほど、家庭学習のひとつとして主流となりました。多くの学校で自学ノートを積極的に取り入れたことから、家庭学習の主流となったのではないでしょうか。
自学ノートは特に高学年で多く取り入れられている自主学習の手法です。なぜ高学年に適しているかというと、「自分で目標やゴールを決めて、自分なりに考えをまとめていく」という学びのスタイルが、中学校の試験勉強に対応する自学自習する力につながるひとつと考えられているからです。そのため、中学への入学準備として高学年から取り入れる学校が多いようです。
内容は、自分の興味・関心があることや、習ったことを発展させた内容、漢字の書き取りまでいろいろあります。ノート1ページから、見開き2ページ程度の量を自分なりにまとめます。中には、歴史や生物などについて、中学生や高校生くらいの高いレベルの内容を調べまとめているお子さんもいるようです。
ただ自学ノートは、あくまでも子どもの意志に任せることが多いので、ほぼ毎日やっているお子さんがいる一方、やっていないお子さんもいるというのが現状です。必ずしも自学ノートで勉強しなければ、自学自習が身につかないというわけはありませんが、興味をもったことを深堀りできるため、楽しんで学習できるというメリットはあると思います。
自学ノートで何をやったらいいかわからない場合は、いきなり高尚なテーマを選ぶのではなく、習っていることを発展させたことをノートにまとめることから始めるとよいでしょう。例えば、理科で蝶について勉強をしたら、他の昆虫についても調べて図鑑のようにまとめたり、歴史で習った大名の名前と特徴をまとめたりといったことです。
学校で学習している内容に直結しているので、授業で発表できる機会につながりますし、先生や友だちに家庭学習の成果を披露することで、子どもの自信ややる気にもつながるのではないでしょうか」(後藤良秀先生)
自学ノートのテーマ選びは、最初は、身近なことからスタートして、少しずつステップアップしていくがポイントのようです。中学校以降の学びのスタイルにもつながる自学ノート、ぜひお子さんの興味のある分野を見つけてトライしてみてはいかがでしょうか。(文・酒井範子)
後藤良秀先生
ベネッセ教育総合研究所顧問・町田市教育委員会委員。東京都公立小学校教諭を16年間、東京都北区教育委員会指導主事、東京都教育庁人事部職員課主任管理主事など教育行政13年間を経て、東京都町田市立鶴川第二小学校長を8年間務め、退職。2019年から現職。