幼児期に積極的にカルシウムをとると、15~17歳で骨密度に差がつく【医師解説】
毎日の食事に気をつかっていても「子どもが偏食気味で、栄養バランスが心配!」というママやパパは多いもの。これまで170本以上の論文を読んで分析したエビデンスから子育てを考える、ママ医師・森田麻里子先生に、乳幼児期に絶対必要な栄養素について話を聞きました。
牛乳を飲ませても安心しないで! カルシウムの摂取はビタミンDと一緒に
「カルシウムをとらせたい!」と考えるママやパパは多いのですが、単に乳製品を与えているだけでは、効果的にカルシウムはとれないそう。アメリカのデータでも裏付けがあるようです。
幼児期に積極的にカルシウムをとると、15~17歳で骨密度に差がつくデータも
――ママやパパから食に関する悩みがよく寄せられるのですが、とくに多いのが偏食についてです。みなさん栄養バランスを考えて悩んでいるようです。
森田先生 「食べないからしかたがない」とあきらめてほしくない栄養素の1つにカルシウムがあります。牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品には、骨を丈夫にするカルシウムが豊富に含まれています。骨密度は20代でピークを迎えて、その後、減少していきますが、骨密度のピークを高めるには、乳幼児期からの運動とカルシウム摂取が必要です。
アメリカの研究では、3~5歳の子ども106人を、1987年から1999年の12年間にわたって追跡調査したところ、3~5歳で乳製品を積極的にとっていた子たちは、15~17歳の時点で骨密度が高いことがわかっています。ただしアメリで飲まれる牛乳は、ほとんどがカルシウムの吸収を助けるビタミンDなどを配合した成分調整乳です。日本でよく飲まれる成分無調整の牛乳にはビタミンDが入っていないので、牛乳と合わせてビタミンDをとっていくことが大切です。
外遊び不足だと、ビタミンDが生成されず“くる病”の原因に!
――ビタミンDは、どんな食品からとることができますか。
森田先生 ビタミンDは鮭などの魚やきのこ類からとれますが、外遊びなどをして日光に当たることでも生成されます。
しかし最近は、紫外線の影響を心配したりして、あまり外遊びをさせないママやパパもいます。室内遊びばかりしていると心配なのが、ビタミンD不足が原因で起こる“くる病”です。
――くる病というと、栄養不足の子が多かった昔の病気のイメージがありますが…。
森田先生 今でもくる病になる子はいて、原因は日光浴不足やアレルギー等を心配した極端な食事制限が考えられています。日光に当たるとカルシウムの吸収を助けるビタミンDが生成されるのですが、ビタミンDが不足すると骨がうまく形成されず、足の骨が曲がって極端なO脚になったりします。そのため適度な外遊びは必要です。
離乳食を始めたら、鉄分補給も意識して!
ママやパパが意識して与えないと、不足しがちな栄養素に鉄分があります。鉄分は、全身に酸素を運ぶ、血液中のヘモグロビンの成分となる栄養素で、不足すると運動面や精神面の発達にも影響が出るそう。
6カ月ごろからは、子どもの体内の貯蔵鉄は減っていきます
――ほかに子どもに意識してとらせたほうがいい栄養素はありますか。
森田先生 鉄分ですね。6カ月ごろになると、胎児期からの貯蔵鉄が減っていき、離乳食で鉄分を意識してとらないと貧血気味になる子もいます。
また鉄分は精神面の発達に影響し、健やかな睡眠をとるためには鉄分が必要とも考えられています。
――鉄分を含む食材は、どんなものがありますか?
森田先生 離乳初期でしたら、豆腐やほうれん草、しらす干し。慣れてきたら、ぶりや鮭、かつお、豚肉、牛肉などを意識して与えましょう。鉄分はレバーにも豊富に含まれていますが、毎日食べるにはビタミンAが多すぎるので週1回程度に。調理が難しい場合はベビーフードを活用してください。私も息子の食事作りには、よく活用していましたし、鉄分を含むタンパク質の食材は、早めに食べさせるようにしていました。(取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部)
森田先生によると牛乳などの乳製品を嫌がる子や、食物アレルギーがあって乳製品が食べられない場合は、カルシウム入りのおせんべいなどを与えて、カルシウム補給を促したほうがいいそう。また外遊びが難しい場合は、日光が当たる窓辺で遊ばせたりするだけでもOKですよ。
■監修/森田麻里子先生
(医師・小児睡眠コンサルタント)
2012年東京大学医学部医学科卒業。仙台厚生病院麻酔科などで勤務。2017年、第一子を出産。子どもの夜泣きに悩んだことから、睡眠についての医学研究のリサーチを始め、赤ちゃんの健康をサポートする「Child Health Laboratory」を設立し、代表を務める。2019年より昭和大学病院附属東病院睡眠医療センターにて非常勤勤務。著書に「東大医学部卒ママ医師が伝える 科学的に正しい子育て」(光文社新書)などがある。