【パパ料理家】離乳食は「本気を出さないのがいい」「トライ&エラーが当たり前」
初めての離乳食は赤ちゃんだけでなく、ママやパパも慣れないことばかりで、失敗はつきものです。
みなさんも一度は、離乳食にまつわる「やっちゃった」「もういや~」と思った経験があるのではないでしょうか。
今回は、自身も離乳食作りをしている1児のパパであり、雑誌やテレビなどでも活躍中の料理家、本田よう一さんに話を聞きました。
赤ちゃんが食べなかったことは「失敗」じゃありません。おおらかな気持ちで!
――料理家である本田さんは、お家でお子さんの離乳食作りも担当されているそうですが、「あ、やっちゃった~」などと思った経験はありますか?
本田さん(以下敬称略) ありますよ〜。ずっと息子の離乳食を作っていますが、ひき肉を卵でとじた“親子煮”を初めて作ったとき、まったく食べてくれなかったんです。
●初めて作ったら食べてくれなかった親子煮
それまで、卵とひき肉それぞれ単品で出していたし、大丈夫だと思ったのですが、ほんと、食べてくれなくて・・・。とろみもつけなかったことも影響しているのかもしれませんが、初めて食べるメニューでびっくりしたんでしょうね。
あのときは「やっちゃった~、作り直しか~」って思いましたが、それがきっかけで「初めて見るものは食べない」っていう息子の性格に気づけました。
――失敗から学べることもあるんですね。
本田 そうですね。だからそれ以降は、「初めて出すものは食べない」と考えながらある意味割りきって食卓に出すようにしています。そのほうがダメージは少ないです。
初めてのメニューは、自分も同じものを食べて見せたり、息子のお皿から最初の一口を食べてみたり…。息子のテンションを上げる工夫をして、それで息子が食べてくれたらラッキーって感じです。
――そういう心がまえで臨めば、変に落ち込まずにすみそうですね。
離乳食では口に入れたものをベーっと出されることが結構あるので、それに悩んでいるママやパパも多いようですが、本田さんもそんな経験はありますか?
本田 ベーっと出されたことはありますが、「そうだよな。今までミルクしか飲んでなかったのに、いきなり濃度のついたものになったら、そりゃびっくりするよな」と納得もしました。
●本田さんと息子さんの離乳食タイム(5カ月ごろ)
――とてもおおらかですね…!
本田 “失敗を失敗と思わないこと”が大切かもしれません。そういうマインドでいることで自分もラクでした。
失敗だと思うと落ち込んじゃうので、「やっちゃたー!次はこうしよう!」でおしまいにするんです。
育児も初めてなら、離乳食を作るのも、食べさせるのも、片づけるのも初めてです。初めてのことを全部成功させるのは至難のワザです。
僕自身「これがダメなら次はこうしよう」って、日々トライアンドエラーを繰り返していますよ。
ほかの人の成功例なども見ながら、いいと思うものは取り入れて、自分たちに合うスタイルを少しずつ見つけていけるといいのではないでしょうか。
離乳食で本気は出さない!?
――「離乳食を作っていてよかったな」と思うのはどんなときですか?
本田 やっぱり、完食してくれると「お〜、よかった」って思いますね。
“いろいろなものを知っている”というのは子どもの経験としても大きいと思うので、食べられるものの幅が広がることがうれしいです。
だからこそ、食べないとわかっている初めてのものも食卓には出し続けます。
――食べられるものも幅が広がるのは、子どもにとってもプラスですよね。
本田 そういう意味では、ベビーフードのレトルトの離乳食を定期的に取り入れるのもいいと思っています。
ときどき、親子料理教室などでママやパパたちと話をしていると、レトルトを使うことうを後ろめたく思ってる方がいらっしゃるんですが、災害時に“レトルトを食べ慣れてないから食べられない”ってなるよりは、“食べたことがあるから食べられる”ほうがいいと思いませんか?
――確かにそうですね…!
本田 “子どもを守るための一つの手段”だと思えば、後ろめたさも無くなりますよね。
――本田さんが離乳食作りで大切にしていることは何ですか?
本田 基本的に、1日3食のリズムを崩さずに食べてくれたらOKだと思っていて、それ以外は目をつぶるようにしています。
そして、離乳食は毎日のことだからこそ“本気を出さない”ということが大切ですね。
――“本気を出さない”とはどういうことでしょうか?
本田 たとえば、おかゆをおいしく作ろうと思うと、“生のお米を土鍋で炊いて、できたてを食べる”ってことなると思うんですが、いきなりこれをやってこのおいしいおかゆしか食べなくなると、作る側の負担が大変ですよね。
だから、まずは炊飯器で炊いたおかゆをフリージングしたものを用意するところからスタートして、それで食べてくれたらいうことはないですし、もし食べなければ次は土鍋で炊いたり、味つけをしたりすればいいと思います。
最初から本気を出してハードルを上げたりせずに、調理方法の選択肢を残しておくんです。
――なるほど! 最初に張りきってしまいがちですが、先は長いですもんね。
本田 もちろん、ママやパパが楽しんで離乳食を作っているなら全力でもいいんですよ。
でも、離乳食をはじめとする育児は毎日続くので、毎日全力だと疲れてしまうこともあると思うんです。
そんなときは、頼れるものや人に頼って、自分をうまく満たしながら、お子さんとニコニコ向き合える方法を探してみてくださいね。
取材・文/大月真衣子、ひよこクラブ編集部
初めての育児で初めての離乳食、失敗しない人はいません。ママやパパの負担になりすぎないよう、ほどほどのパワーで取り組むことが大切です。
そして、「やっちゃった」と思っても、本田さんのように失敗を失敗と思わず、「次はこうしよう」と前向きな気持ちでいることで、離乳食の時間を今よりもっと楽しめるかもしれませんね。
お話・監修/本田よう一さん
(料理家・栄養士)
1983年生まれ福島県泉崎村出身。高校卒業後、栄養士の専門学校に進み、栄養士の免許を取得。卒業後は独学で、料理写真を学び、フリーカメラマンに。2006年からは料理家として仕事を開始。野菜をたっぷり使い、素材の味を活かしたレシピを得意とし、 家族みんなで楽しめる味つけに定評がある。あったかふくしま観光交流大使として活動中。
著書に「パパ離乳食始めます。」(女子栄養大学出版部)がある。