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「フツーのおばちゃん」が同性パートナーと「かぞく」を作りあげるまで

特集「たまひよ 家族を考える」では、子育てのさまざまな事象を、できるだけわかりやすくお届けし、少しでも育てやすい社会になるようなヒントを探したいと思っています。
今回は、「母ふたり」の家族についてのお話です。

「家族」ってなんだろう

「家族」と聞くと、「婚姻関係にある男女2人と、2人の間に生まれた子ども」という構成を思い浮かべることが多いでしょうか。でも、子どもはいなくてパートナーと2人でも「家族」ですし、シングルで子育てをするママ・パパもいれば、パートナーの連れ子をともに育てるステップファミリーも。養子縁組をした子や里子を育てていても、同性パートナーと子どもを育てていても「家族」です。「婚姻関係」や「血縁関係」が「家族」であるための条件ではなく、どの形が「正解」ということはありません。
『母ふたりで“かぞく”はじめました。』の著者である小野春さんは女性として生まれ、男性パートナーと結婚して、2人のお子さんを出産しました。その後、離婚して女性パートナーの西川麻実さんと共に暮らすことになり、西川さんのお子さんを含めて3人の子どもを「母ふたり」で育てることに。
本書には、小野さんが自身のセクシュアリティに気づくまで、男性パートナーとの結婚・離婚、そして西川さんとの同居という約20年に渡る「かぞく」の物語がつづられています。

結婚・出産後に自分のセクシュアリティを見直すことも

「自分の恋愛対象は異性である」と、疑うことなく恋愛を経て結婚に至った人も多い中、小野春さんもそんな人生を歩んできました。
初恋の相手もその後好きになる相手も男の子で、自分が“異性愛者ではない可能性”があるとは思いつきもしなかったそうです。
ただ、女子高に通っていた頃、ボーイッシュな同級生に恋愛感情を抱きかけたことがありました。しかし、小野さんは敬虔なカトリックの家庭のもとで育ったため、同性を好きになることを〝罪〟だと考えていました。そうした理由もあり、自分から好意を凍結させて「なかったこと」にしてしまったのです。

その後、社会人になってから、仕事を通じて出会った男性と結婚した小野さん。20代半ばで長男を出産しました。長男が仮死状態 で生まれたことから、検査や病院通いも多かったそうです。夫は仕事を理由に家を空けがちになり、逃げ場のない〝孤育て〟がはじまったのです。頼る人もなく、心配で押しつぶされそうな日々。その孤独に追いつめられながら、「私って、そもそもどんな人間だった?」 「胸のなかで、ずっと引っかかっていた女子校時代の同級生への気持ち。もしかして、私は同性愛者だったりする可能性があるのだろうか?」と、小野さんはようやく自分のセクシュアリティを見つめ直すことに。まだ今のようなSNSもなく、自宅にパソコンがあることも珍しい時代。インターネットをつかって、おそるおそるレズビアンの友達を探し始めました。そして参加したバイセクシュアルの女性が集まる飲み会で、現在のパートナーとなる西川さんと出会いました。西川さんの子どものような無邪気さは、はじめて会った時から小野さんの「ツボにハマる」特別なものだったようです。

『母ふたりで“かぞく”はじめました。』の冒頭は、長男が2歳の頃、2週間治らずにいた風邪が小野さんにもうつってしまい、高熱で体が思うように動かないシーンから始まります。
そんな小野さんのもとを西川さんが偶然訪ねてきます。驚いた西川さんは、テキパキとタクシーを呼び、大病院まで2人を連れて行きました。子どもも自分も体調を崩し、頼る人もいないところに、ステキだと思っていた相手が現れて救ってくれる… 小野さんが西川さんに特別な思いを抱く象徴的なエピソードです。

「自分の恋愛対象は異性である」と認識している人の中にも、思春期の頃、同性にときめいた経験を持つ人は珍しくないのではないでしょうか。自分のセクシュアリティとは生まれたときに認識したものから絶対にブレないものではなく、思ったよりも幅があったり、少しずつ変化があったりするものなのかもしれません。

「一緒にいると楽しい」から、母ふたりの家族が誕生

一方、西川さんは若い頃から自分が同性愛者である自覚があったといいます。ですが、そのことを否定するかのように彼女も男性パートナーと結婚。小野さんと長男のピンチを救ったしばらく後、西川さんは妊娠し、出産。小野さんにも次男が生まれました。
しかし、やがて西川さんは「子どもが生まれて夫の面倒までみてられない!」と離婚。その1年後に小野さんも、元夫に好きな人ができたという理由で離婚することに。2人ともセクシュアリティとは関係ない理由でシングルになりました。

離婚後、長男次男と3人で暮らし始めた小野さん。元夫から養育費はもらえず働きに出ます。保育園激戦区だったため、認可保育園にはすぐに入園できず、保育料が高額な認可外保育園に子どもを預けての生活。壊れたエアコンを修理する余裕もなく、石油ストーブをつけようにも石油がなく…。そんな小野さん宅にふらりと現れたのがまたしても救世主・西川さん。テキパキと石油を買いに行き、食事を用意。西川さんの娘も一緒に5人で夕食を囲んでいると、小野さんの長男がこう言ったそうです。

「一緒にいると楽しいね」

この日をきっかけに西川さん親子がたびたび小野さん宅を訪れるようになり、やがて5人での同居生活が始まりました。もちろん、悩みもたくさんあったそうです。思春期を迎えた小野さんの長男が、普段は仲のいい西川さんに向かって「俺にあれこれ言うな! 親でもないくせに!」と心臓が痛くなるような発言をしたことも。
けれどもこれは2人が同性カップルだからではなく、ステップファミリーの多くがぶつかる問題のよう。本で描かれている「家族」の様子は、全員に血のつながりはなくとも、親どうしが異性カップルでなくとも、多くの「家族」と変わりないと感じられます。

同性カップルはありえないもの? 受け入れてもらえないもの?

しかし、同性カップルであるということは、たびたび小野さん・西川さんの前に壁となって立ちはだかります。例えば、次男が血尿を出して検査入院となったとき、病院に付き添った西川さんが入院手続きをしようとすると断られてしまいます。「離婚したお父さんでもいいから、血縁の親を連れてきてください」と言われたのだそうです。互いの子どもたちの学校にも「同性パートナーと子育てをしている」ということは、なかなか伝えられませんでした。

「ケジメ」として結婚式をしようとした際も、困難にぶつかりました。今でこそLGBTカップルの結婚式に対応している式場も増えていますが、小野さん・西川さんが結婚式をしようと考えた頃はまだあまり例がない状況。西川さんの提案で、候補としたいくつかのホテルの婚礼係に手紙を送ったところ、「前例がないから」と断りの返事が届いたホテルも。そんななかいくつかのホテルが「引き受けたい」と申し出てくれました。
さらに、カトリック信者である最愛のお母さんに小野さんがバイセクシュアルであること、西川さんを新たなパートナーとすることを受け入れてもらえなかったことは大きな苦しみだったと言います。
惹かれ合ったパートナーが同性だった。そのことが「自分のまま、人から大切にされる、受け入れてもらう」ということをとても困難なことにしてしまうのです。

セクシュアリティがどうあっても“結婚”を考えられる未来に

『母ふたりで“かぞく”はじめました。』を読んでいると、同性愛者やバイセクシュアルの方々が苦しむことの一因は「世の中にないものとされている」ことなのだと痛感します。「ないものとされている」現れのひとつが、日本では同性カップルの法律上の結婚が認められていないことでしょう。同性カップルにも「婚姻と同じ状態である」と証明する同性パートナーシップ証明制度を施行している地方自治体が増えていますが、これはあくまで「証明」に過ぎず、同性カップルには「婚姻届を出すか、出さないか」を選ぶ自由はありません。

「ないもの」とされているだけに、仲間もなかなか見つかりません。でも、子どもの月齢が近いママ友と集まって子育ての悩みを互いに話すだけでとなんだかほっとするように、同じような環境の相手と悩みについて話したいのはLGBTファミリーも同じ。ネットなどを通じて、子育て中や子どもを持つことを望むLGBTファミリーと出会う機会が増えた小野さんは、LGBTファミリーがゆるくつながれる団体『にじいろかぞく』を立ち上げます。

2001年にオランダで、世界で初めて同性婚が認められ、2019年までに27の国・地域で同性婚が認められるようになりました。そんな中、小野さんと西川さんは『にじいろかぞく』の活動の中で知り合ったある弁護士さんから「同性婚訴訟をやろうと思っている」と声をかけられます。

以前より日本で同性婚が認められないことに疑問を抱いていた小野さん、西川さんは原告に加わることに。そこには、自分たちが同性婚をしたいという想いよりも、若い世代のLGBTの人たちに向けた想いがありました。「セクシュアリティがどうあっても、好きな人ができたときに“結婚かもね?”とあたりまえの未来が想像できるようになってほしい」

2019年2月14日「結婚の自由をすべての人に」の訴状が全国4カ所の地方裁判所に、13組の同性カップルによって提出されました。訴訟の名称が「結婚の自由をすべての人に」とされたのにも深い思いが。手術をせず肉体上の性別移行をしていないトランスジェンダーの人は、例え戸籍上は同性どうしの結婚になるとしても「同性婚」という表現に抵抗があるかもしれません。求めているのは「独立した2人の大人が、結婚する、あるいは結婚しないという選択ができる自由を」ということだと小野さんは語ります。

今の「結婚制度」に疑問や怒りを感じるのはLGBTだけではない

LGBTをカミングアウトしている人が身近にいないと、LGBTの人が自分とはかけ離れた存在のように思えることも。
小野さんがユーモアを交えながらも、事実や思いを丁寧に書き綴った『母ふたりで“かぞく”はじめました。』を読むと、LGBTとは何もかもが“特別”な人を指す言葉ではなく、顔や性格の違いと同じような、人間性とはかかわりのない違いなのだと実感します。それと同時に「自分の意志とは関係なく夫の姓に変えるしかなかった」「親や周囲からの圧力に焦って結婚してしまった」など、今の婚姻制度やそれにまつわる社会の流れに疑問や怒りを持つ人の気持ちに気づくことができます。LGBTファミリーにとって幸せな未来とは、すべての人にとって幸せな未来なのではと思えてきます。
次回は、LGBTファミリーを取り巻くさまざまな状況について、小野さん・西川さんへのインタビューをお届けします。
(文・古川はる香)

●Profile
小野春
LGBT同性パートナーである西川麻実さんとステップファミリーとして暮らし、3人の子どもを育てる。子育てするLGBT とその周辺をゆるやかにつなぐ『にじいろかぞく』の代表。2019 年4 月には「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告のひとりとして、東京地方裁判所で意見陳述も。乳がんサバイバー。

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